見出し画像

「片麻痺って治るの?」⑧ 〜「離床」ってDOする?〜

「潜水艦の冒険とリハビリの奇跡」

Mさんは、昔潜水艦に乗っていた
過去を持っている。
部屋には、
その時の写真が飾ってあるが、
Mさんはもう長い間
その写真を見ることができない。
年齢は80を超え、
糖尿病と高血圧が原因で
何度も脳梗塞を起こし、
今は寝たきりになってしまった。
団地の1階に娘さんと2人暮らしで、
娘さんは内臓疾患を
抱えながらも介護をしている。
オムツ交換もままならなくなり、
週2回の訪問リハビリと
看護、ヘルパー、
訪問診療が必要になった。

3モーターベッドに
(頭、足、高さが調整できるタイプ)
ベッドから落ちないようにと
左右全てに柵がある。
これは本人の安全のためだが、
同時に自由を
奪っているようでもある。
Mさんは、
この柵の中で毎日同じ景色を
見て過ごすことになった。

そんなMさんの唯一の楽しみは、
夢だった。
夢の中では、
若かりし頃の自分に戻り、
潜水艦で様々な冒険を
繰り広げることができた。
深海の神秘的な生き物や
危険な敵や仲間との絆など、
Mさんは夢でしか味わえない感動を
味わっていた。
しかし、夢はあくまでも夢であり、
目覚めると現実に戻される。
Mさんは夢から覚めるたびに、
自分の身体や生活に
絶望することもあった。
自分はもう何もできないんだ、と
思うこともあった。

寝たきりのMさんと、部屋に飾ってある「潜水艦」の写真


そんなある日、
リハビリの担当者が訪問した。
担当者は明るく
「こんにちは!
私は理学療法士のNです。
これからよろしくお願いします」
と笑顔で挨拶した。
NさんはMさんの状態や暮らしを
丁寧に確認していき、
「Mさんは潜水艦に乗っていたんですね。
すごいですね!
どんな感じだったんですか?」
と興味津々で聞いてきた。
Mさんは驚いた。
自分の過去に
興味を持ってくれる人なんて
久しぶりだったからだ。
Mさんは少し話せるようになっていたが、
普段は話すことが少なかった。
しかしNさんの質問に答えてみると、
自分でも驚くほど
話したくなってきた。
潜水艦での思い出や感想を
Nさんに話してみると、
Nさんは目を輝かせて聞いてくれた。
「Mさんは本当に
素晴らしい経験をされているんですね。
私も潜水艦に乗ってみたいです」
とNさんは言った。
Mさんは嬉しくなった。
自分の話を聞いてくれるだけでなく、
共感してくれる人がいるということが
嬉しかった。

Nさんはリハビリの内容も
工夫してくれた。
Mさんの好きな
潜水艦に関する話題や画像を使って、
Mさんの頭や体を動かすように促した。
例えば、
潜水艦の写真を見せて、
「この潜水艦の名前は何でしょうか?」
「この潜水艦はどこで活躍したでしょうか?」
などと問いかけたり、
潜水艦の模型を使って、
「この潜水艦を手に取ってみてください」
「この潜水艦を左右に動かしてみてください」
などと動作を促したりした。
Mさんは
Nさんのリハビリに夢中になった。
潜水艦に関する知識や
記憶を思い出すことで、
頭が冴えてきた。
潜水艦に触れることで、
体が動かしたくなった。
Nさんのリハビリは、
Mさんにとって楽しくて
刺激的な時間だった。

Nさんのリハビリのおかげで、
Mさんは
少しずつ変化していった。
頭を起こすことができるようになり、
ベッドから離れることが
できるようになり、
車椅子に移ることが
できるようになった。

そして、
部屋に飾ってある
潜水艦の写真を見ることが
できるようになった。
Mさんは感動した。
自分が乗っていた潜水艦の姿を
久しぶりに見ることができたからだ。
その写真を見て、
Mさんは涙が出そうになった。
自分はまだ生きているんだ、
と思った。
Nさんは
Mさんの感動に笑顔で応えた。
「Mさん、おめでとうございます!
あの写真を見ることができましたね!
これは本当に素晴らしいことですよ!」
と言って、
Mさんの手を握った。
MさんはNさんに感謝した。
「Nさん、ありがとう。
あなたのおかげで、
私はこんなに元気になれました。
あなたは私の宝物です」と言った。
Nさんは照れくさそうに言った。
「Mさんの力を引き出せて良かったです。
Mさんは自分で頑張ってここまで来られました。
私もMさんから
沢山のことを学ばせていただきました。」
二人は笑顔で見つめ合った。
それからもNさんは定期的に訪問して、
Mさんのリハビリを続けた。
Mさんは日々進歩していき、
やがてトイレや食事も
自分でできるようになった。
娘さんも
驚くほど回復したMさんを見て、
「こんなに元気になるなんて
思ってもいませんでした。
本当にありがとうございます」
とNさんに感謝した。
Mさんは夢も変わった。
夢の中ではもう潜水艦ではなく、
現実の自分が登場するようになった。
娘さんと一緒
に散歩したりするようになった。
Mさんは夢の中でも現実でも、
幸せを感じていた。
MさんはNさんに言った。
「Nさん、私はあなたに感謝しています。
あなたが私の人生を変えてくれました。
あなたは私の夢を叶えてくれました」
NさんはMさんに言った。
「Mさん、私もあなたに感謝しています。
あなたが私の仕事のやりがいを教えてくれました。」

いかがでしたか?
リハビリテーションは、
身体だけでなく心も
癒すことができるんですね。
私もMさんやNさんのように、
人生を楽しく生きたいです。

健康な人は、
起きてる時間は
「離床」して過ごしています。
「離床」できないと、
いろんな困り事が出てきます。
・過ごす場所が同じ。
・天井を見る時間が多い。
・動く機会が少ない。
・床ずれが出来やすい。
・体が硬くなりやすい。
・考える機会が減る。
・食欲が減る。
・筋力が減る。
・内臓が弱る。
・肺に痰が溜まりやすい。
・飲み込みの力が弱くなる。
など挙げてみたのは、
出てくる症状のほんの一部です。
また「移乗」が出来ないことは、
すなわちベッドから
離れない暮らしのことです。

離床できない暮らしで
心配な例を挙げると
①肺に分泌物が溜まりやすくなる。
②体力が落ち抵抗力が弱くなる。
③飲み込みの力が弱くなる。
④誤嚥しやすくなる。
⑤肺炎になりやすくなる。
⑥命の危険にさられる。

このような
負のスパイラルは
なんとか変えたいですよね。

「離床」と「移乗」はワンセット。
ベッド上で暮らしてる人は
日中だけも
車椅子に移って暮らすと、
いいことが沢山あります。
負のスパイラルからも脱却できます。
・頭が起きるので心臓がしっかり働く。
・意識がはっきりしてくる。
・肺に痰が溜まりにくくなる。
・飲み込みの力が上がる。
・足底が床に着き、
体の位置センサーが働く様になる。
・床ずれが出来にくくなる。
・食欲が増す。

つまり
生きるために
必要な生命の歯車が
上手く動き始めるのです。

頭を起こすこと。
ベッドから離れる機会を作ること。
これだけで
本人らしい生活を
得られるチャンスが増えるのです。
どうか
皆さんの暮らしが豊かになりますように!


最後までお読みいただき、
ありがとうございます。
次の項では
「移乗」について解説いたします。
脳卒中になった方や
その家族の方々へ、
このnoteではリハビリテーションの
方法や効果を分かりやすく紹介しています。

脳卒中リハビリのご相談は↓まで。
https://www.hohmonrehabilicenter.com/

「潜水艦」の写真を見るMさん

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?