第4回 人づくりと地域の連携から考える“まちのつくり方”
今回は知の拠点でもある大学と地域の連携、人づくりについて考えます。
場所は犬山駅下の素敵なカフェのようなレンタルスペース・ハチ公園さんです。ゲストは岡田和明さん(名古屋経済大学 地域連携センター長)と、堀美鈴さん(名古屋経済大学 保育教育学科講師)。
岡田和明さんのお話
岡田さんはもともとは犬山市の職員として、建築課長、歴史まちづくり課長、総務部長を歴任し、副市長も務められました。2015年からは名古屋経済大学に移られ、現在は地域連携センター長として地域の課題解決などの社会(地域)貢献に携われています。
名経大に「地域連携センター」なるものがあるのをご存知でしたか?
”「地域で学ぶ」「地域と学ぶ」そして、地域から愛され、頼られる名経大へ”
ということで、社会貢献として、大学のある犬山市と様々な連携をしています。
岡田さんから連携の具体的な内容についていくつか例を教えていただきます。
◎地域との連携会議
・犬山市、犬山商工会議所との包括協定(2007年)
・犬山市議会との協力協定
・犬山市観光協会との覚書
◎知の拠点としての地域に向けた活動
・犬山学研究ネットワーク
・犬山学サロン
・市民総合大学オープンカレッジ
・企業との共同研究
・犬山市民の図書館利用
そして、こうしたイベントやボランティア活動への参加を通して、学生と地域の関わりを深める取組みをしています。
今どきの学生事情は、
・忙しい
・情報は自分から取りに行く(新聞はほとんど読んでいなさそう)
・高校までの間に地域活動やボランティアに関わった経験が意外と多い。(50%くらい?)
・地域に貢献したいという想いがある。
・就職活動は3年生の後期くらいからはじまっている。
こうした学生を社会とつなぎ、地域で学び、地域から学ぶ循環を作っていくことが地域連携センターの役割でもあります。
”大学は、まちをつくる”ヒト””コト”・・・のプラットフォーム!!(?)”
一見敷居が高く感じられる大学ですが、こんなにいろいろなアウトリーチ活動を行っていることがわかり、参加者からも驚きの声がでました。
最後に岡田さんからはこんな言葉が。
「ないものねだりではなく、ありもの探し。犬山にはまだまだ隠れた良さがある。」
たくさんの探し甲斐がありそうです!
堀 美鈴さんのお話
次いで堀さんからのお話です。
堀さんも犬山市の職員として、保育園で保育士として働かれた後、犬山市の子育て支援センター、ファミリー・サポート・センターの立ち上げに関わられ、母子生活支援施設の施設長、こども未来課の初代子育て監を歴任されます。2018年からは名古屋経済大学の保育学科で特任教授を務められ、現在も非常勤講師として教えられています。
1999年(H11年)、犬山市に子育て支援センターが開設されました。子育ては個人でするものなのに、どうして市役所が関わるのかといった声もあがったそうです。堀さんは孤軍奮闘しつつも、市を超えた県の仲間と、愛知県支援センター協議会を全国2番目に創設。前例がないだけに、これはと思ったことは何でもやってみることができるような環境のなか、公用車にござやおもちゃを積んで、行商みたいな形で相談にまわったりも。新しいものを創り上げていくなか、堀さんが心がけたのは、「次の人につなげていく。後に続く人のために、形にすること」だったそうです。
母子生活支援施設では、弁護士、医者、警察など、それまであまり関係のなかったようないろんな属性、職種の人たちとの関わりもあり、視野が大きく広がるような経験をつまれます。
そうした経験を活かし、大学に移ってからは、学生たちに社会に触れながら試行錯誤をするチャンスを与えるような学びの場を作られています。
失敗する前にダメと言われ、やらないことが多い現代っ子たち。保育士の離職の原因は、人間関係や現実と理想とのギャップが大きいという調べがあるようです。社会人として未熟なまま、保育士として、最前線に立たされる保育士の卵たち。そうした学生たちに「失敗する場」を与えるのが大学なのです。
堀さん自身、仕事をしながら子育てをされてきました。そうした立場から、仕事と子育ての両立ができ、女性が生きがいをもって働くことができる社会を作ることに、当事者としても向き合われてきたそうです。
参加者から、子育てと家庭と仕事をどう両立させればいいのかとの問いかけがありました。
「大事なことは人に頼ること。それは自分をさらけだすことでもあって、勇気のいることでもあるけれど、大事なこと」ときっぱりと答えられていました。
今後の課題
今回の話のなかで課題として浮かび上がってきたことがあります。
必要な情報はどうやって手に入れることができるんだろう?
(大学や行政の側からすると、どうやって伝えることができるんだろう?)
岡田さんの話にもありましたが、今どきの大学生は、情報は必要に応じて自分から取りにいくもの。興味がない対象にはアンテナが向かないから情報が入らない。
生涯教育とはまた違った、社会人の新たな学び直しの機会であるリカレント教育を受けたいと思ったときに、大手企業のなかで提供されている以外に、どうやったらそういうものが学べるようになるんだろう。
子育て真っ最中の親たちは情報を探して取りに行く余力がなかったりする。頼りたいと思ったときに、気軽に頼れる相手がいない。制度があるのはわかっても敷居が高く感じられる。
なかなかこれといったショートカットの手段はあるわけではなさそうだけど、人とつながっていくことで、少しづつ情報には近づいて行けそうな気配もあります。
このまちづくり自主学校も、試行錯誤を通じた学びの機会と、情報への道筋を模索する場としてあります。
こんな人の話が聴きたい、こうしたいけどどうやればいいんだろう。
いろんな課題やハテナに継続的に取り組みつつ、みなさんと一緒に考えていければなと思います。
ゲストスピーカーの岡田さん、堀さん、ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。
次回は1月18日。大島もえさんをゲストにお迎えします。
市議会議員ってどういう仕事? 社会課題に向き合ったときに、どうやって政治を動かして解決する方法があるの?
こちらも刺激的な話が聴けそうです。
(ミナタニ)