本阿弥光悦の大宇宙

 上野の国立博物館の本阿弥光悦の大宇宙展行ってきました。前日から大雪になると予報が出ていたので、無理かな?と思っていたけど当日は晴れていい天気でした。花粉も気にならずお出かけ日和です。

 会場は平成館でした。本館が好きなので少しがっかりしつつ、入館。思っていたよりお客は少なめでした。一時期、すごく混雑することがあってゆっくり見られなかったので今くらいのお客さまの人数が丁度いいです。

 本阿弥光悦を初めて知ったのは、吉川英治の「宮本武蔵」です。決闘を終えた武蔵が出会った上品な老婦人と息子、それが光悦親子でした。光悦が書や美術を武蔵に触れさせ、武蔵が武道の殺伐とした世界から、広い視野をもつきっかけになった人物と記憶しています。吉川氏の創作らしいですが、光悦を通して楽しむこと、美しい物を愛でることの大切さが伝わりました。

 柏樹文鐸 銘 埋忠明寿 
刀剣の持ち手?に挿す輪みたいな部品?間違えていたらごめんなさい。真鍮の上に漆黒の赤銅で模様が付けられ、形が微妙に歪んでいます。これ、お洒落なんです。他のものをあまり見ないけど、普通かっちりと作られると思います。見た目は軽くないけど重くもない。今、作られたと言われたら信じそう。

 花唐草文螺細経箱
唐草の螺鈿細工が細かく優美に施されています。葉の一枚一枚が薄く柔らかく、蔓草はゆるい曲線を描いて伸びています。様式化された文様を真似ず、自然そのままの形を生かした光悦独自の表現になっています。

 石田少左衛門友雪旧蔵謡本
川のほとりに停められた小舟、空の様子、草木が描かれ、奥行きが感じられます。趣が深い作品。

忍蒔絵硯箱
 蓋の上部、側面、蓋の裏に細かい蓬?の葉の模様が施されています。筆の軸もお揃の漆塗りです。葉の細い先まで丁寧に描かれていますが、簡単にできる方法があったのかしら。手描きなら気が遠くなりそう。お気に入りの道具を見せ合う会があったら、目を引いたことでしょう。

百人一首・三十六歌仙和歌
 この展覧会での一番のお気に入り。薄い藍ずりの和紙に薄く紅葉が描かれた上に角倉素庵が和歌を書いています。文字の緩急、行間の間やちらし具合、墨の濃淡が絶妙です。文字を書く紙に和歌を引き立てる絵のセンスの良いこと。見入っていたら、他の方に「素敵な文字ね。」と話しかけられたので頷きました。手元に置いて楽しみたいです。

黒楽茶碗 銘 時雨
 釉薬の加減が雲に見える茶碗。手の中にすっぽりと収まりそうです。使い心地もよさそう。形が定まっていないから、どこで手を止めるかは作者次第。茶碗には詳しくなく茶道を嗜んでないので、その良さはイマイチ分からないのが残念です。なのでこうした物を見ると、今からでも茶道を習いたくなります。

鶴下絵三十六歌仙和歌巻
 伸びやかな絵だなあと、と見ていたら描いたのは俵屋宗達。銀泥で鶴の特徴を簡潔に捉えたシルエットが何羽も繰り返され、描かれた鶴の群像が重なり、離れ、散らして描かれています。鶴が群れる水面や池、飛んでいる空の雲が画面の上や下の描かれた金泥で表現。鶴が画面の外へ羽ばたいていくようです。宗達の絵と光悦の文字が引き立て合い、さらに広がりを増しています。
 俵屋宗達の才能を認め、引き立てたのは光悦だと初めて知りました。琳派の祖だったのですね。

 権力者のご機嫌次第で、命を取られる時代を生き抜いた光悦。琳派の斬新さは今も古びません。光悦と琳派についてもっと知りたくなりました。

 宗達は風神雷神しか知らなかったので、鶴下絵の鶴の特徴を捉えた影絵のような描き方に驚きました。何メートルも続く鶴の群れの配置の緩急の具合が絶妙。宗達の目で見て、描いてみたいです。

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