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間違いだらけの日々に


都会では冬の匂いも正しくもない
らしい。

ラジオから流れるクリスマスソング。
西新宿の街灯が染まる。

塗り替えされぬものを
上書きするために飲み下した錠剤。

あんなビルから飛び降りるなんて有り得ない。
あんな街で死にたくない。

世界が彼女に与えた全てを
世界は彼女から奪っていった。

せめてあのアパートに差し込むあの光が、
彼女にとって永遠に近いものであったなら。
僕にとってあの窓に吹き込む春の風が幸せの意味であったように。

父とはもう会えない。
母とはもう会わない。
兄は消えて、
姉とももう会わない。
晴れて天涯孤独。

春の玉川上水。
雨に2人歩いた。
作家のようには死ねず、
2人恥じて笑った。

人間に失格した後でも
人は人を辞められないようです。

雪に染まってく道を、
歩くよ。
1人でも2人でも。
構うもんか。
サリマのように強く。

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