心理占星術家nicoが選んだ今月の言葉は...
魚座の言葉
今回は、言葉というより、長いテキストを引用した。このテキストを丁寧に読み込んでいただければ、魚座がもつうんざりするほどの予言的な能力も、魚座が切望するロマンも避けがたい不安も、マクロ的な視点や知性もすべて理解してもらえるだろう。私の解説など不要なくらいだ。
魚座は、ある意味かなりの悲観論者である。未来の出来事に対し、最悪のシナリオまでも含めた悪い結果を予想し、ときに控えめに、ときに大げさに嘆く。
精神科医、心理学者であるアドラーは、自ら築き上げた個人心理学について、「二重の意味で預言的である。何が起こるかを予言するだけではなく、それが起こることのないよう予言もするからである」と説明したが、彼が2012年に残した上記のテキストには、まさに、この二重の予言が書き記されているではないか。
成長にも生産にも希望が見いだせない今、「新しい資本主義」を求め、さまよい続けている世界に向けて、杉本博司は、この時点で「何が起こるかを予言し、それが起こることのないように予言」もした。
魚座は嘆く。そして、嘆くばかりではなく予言もする。そして、最悪から生まれる希望を求め、二重の予言の中で希望のための創造もする。
杉本博司はこうも言う。
こうして、一つ前の柔軟サイン、楽観論者である火エレメントの射手座から歩みを進めた魚座は、最後の水エレメントとして、まずは、ひたすら悲観し続けることになるだろう。魚座的人々の多くは、もしかしたら悲観的なビジョンの中で人生の大半を過ごすことになるかもしれない。「読めない先の」何かよからぬ不安や恐れの中で、最悪のシナリオに圧倒され、身動きが取れなくなってしまうかもしれない。そして、やがてそのうち、もしかしたら、最悪のシナリオの中から、生み出すべき希望を見出したくなる日がくるだろう。
その時、杉本博司の言葉を思い出してほしい。
数万年前の人と同じように水平線を眺め、石の感触を確かめ、自分の血の中にカンブリア紀につながる記憶を感じてみる。元居た場所に、自分の存在の在りかを探しだしてみる。そうしたら、もしかしたら私たちは「読めない先を読む」ことができ、それが起こることのないよう予言し、どんな形であれ、希望ある未来を作り出すことができるのかもしれないのだ。
そのためにも、「眼には見ることのできない精神を物質化するため」にもやはり、まず補完関係にある乙女座・水星的な技術や知識を磨く必要があるだろう。
2022年魚座期、私たちはどんな未来を読むことができるだろうか。その際、どんなに悲観的であったとしても、未来を予感し、今、自分の手にしている技術で、なんとか未来を物質化していかなければならない。私たちには、今こそ、アートという技術が必要なのだ。