星宙百景 2023 水瓶座 ~冥王星がもたらす出発する勇気、風エレメントの強調が意味する新たな流れとは
占星術業界で今、もっともホットなトピックといえば、山羊座に滞在中の冥王星が太陽と最後のコンジャンクションを形成すること(次に山羊座で同じ配置が起こるのは、なんと230年後の2254年12月22日。まさに冬至のタイミングである)、そしてその直後の水瓶座への冥王星の移動だろう。
占星術に関心のない人たちにしてみれば、どうでもいいことかもしれないけれど、そして、関心があったところで、実際根拠があるわけではないのだが、やはりこうして考えるのは、私にとっては楽しい作業である。
山羊座期・おさらい編でも太陽と冥王星に触れたが、そういったタイミングで何かしら動きがあり、ドラマが起こっているのだとしたら、それをただ「無駄」と切り捨てるのももったいない話。誰も手をつけないのなら、私がやってみるとしよう。
ということで、2024年水瓶座期に冥王星は二度目の水瓶座イングレスを迎える。このタイミングで、どのような天体配置になり、それにはいったいどのような意味になるのか。
せっかくなので、山羊座期・おさらい編のテキストを元に、その風景を読み解いていこう。
サラッと書いてしまったが、太陽と冥王星、山羊座について、もう少し占星術的に説明しよう。
元々、蠍座の支配星である冥王星には、「自分以外のものを頼る」という意味がある。
人は一人では生きていけない。だから他者や組織といったものを頼り、属し、生存率を高めていく。子どもは親を頼り、学生は友人や教師、学校や塾を頼り、社会人になれば会社や配偶者、地域のコミュニティ等を頼る。といった感じだ。頼り合うことで、人と人は「絆」をいうのを覚えていく。人と人がつながることで、より安心を深めていくということだ。
しかし、もともと「絆」というのは、よい意味で使われていたわけではない。昔は馬、犬などの動物をつなぎとめる綱のことを意味していたり、また「ほだし」と同じ意味で使われていて、相手の情にひきつけられて、心や行動の自由がしばられるという意味でもあった。なんとも冥王星的な意味合いで使われていたのだ。
また、自分以外のもの、他者や組織との蜜月の関係は、永遠に続くわけではない。すべての関係性は、いつか終わりを迎える。
終わりの時というのは、様々なバリエーションがある。たとえば、単純に卒業とか転居ゆえの終わりもあるだろう。相手が関係を望まなくなることもあれば、自分がそこにいることに耐えられなくなることもある。消滅や死別もある。ハッピーエンドもあれば泥沼化することもあるだろう。
冥王星的体験を平和的に行うためには、自立的、主体的な力が欠かせない。それは蠍座の副支配星としての火星の力ともいえる。愛着のテーマで言うと、「その関係は、出発を可能にする結びつき」であるかどうか。
「出発を可能にする結びつき」とは、お互いの自立性、主体性を高めあう関係性であり、力を試すことを喜び合い、そしてその関係がなくても健やかに生きていくことができ、その関係があれば、より充実した価値をお互いが享受できるということだ。
ホロスコープの配置でいうと蠍座の次は射手座であるが、射手座はまさに「広い世界へと飛び出していく」意味があり、飛び立つための心の支えとして、関係性を育んでいくのが蠍座から射手座への成長プロセスとなる。飛び出してもいい、また戻って来てもいい。それこそが、「その関係は、出発を可能にする結びつき」なのだ。
これがうまくいかない場合、蠍座=冥王星は非常に不穏な表出の仕方をする。力関係に巻き込まれ、身動きが取れなくなったり、その関係(人や組織)に依存し、個人の力が弱体化することにもなるだろう。
つまらない付き合いに無駄なエネルギーを注ぎ、忖度し、いじめに加担したり、くだらないゲームに巻き込まれることもあるだろう。言いたくもないおべっかを言い、自分を見失っていくこともある。せっせと先輩に気を遣い、仕事や小遣いをもらって、一時的に金回りがよくなったりするかもしれない。
でも、それが一体何だと言うのだ?
自分の意見は持たず、パーティー券販売のノルマを負わされる。そんなサラリーマン議員になるためだけに政治家になったのか? 先輩のために女の子を調達する目的で芸人になったのか? お局に気を遣ってヘトヘトになり、彼氏には気を遣って惨めな気持ちになり、それでもその関係を必要とするのはなぜなのか?
❞ 自分の人生はなんと意味がないのだろう…
自分はなんと惨めなのだろう…
そうやって心が委縮したとき、遠い遠い冥王星に太陽の光が届く。太陽は自分本来の目的であり、ずっと夢見ていた理想の人生だ。こうありたいという全身全霊の願いなのだ。そこからようやく自分自身を思い出し、暗いエネルギーから脱出し、自分を取り戻す旅へと出かける… ❞
これが太陽、冥王星のドラマである。
これは、もちろん自民党派閥の問題等を意識して書いたものではあるが、鑑定では火星・冥王星のテーマとして、また関係性のテーマとして、出発が可能な結びつきなのかそうでないのかという話は頻繁に話題に上がる。
山羊座・冥王星のテーマは、長きに渡り維持されてきたシステムや体制を意味することから、思い切った構造改革をしていかない限り、それらを解体するのはなかなか難しい。ジャニーズを見ると分かるように、よほど大きな事件にならないとメスを入れられないこともあるだろう。
個人レベルでは、たとえば病気になるとか、経済的に困窮するとか、時間的に追われて二進も三進も(にっちもさっちも)行かないとか、物理的な問題が起こって、はじめて重い腰が上がるということもあるかもしれない。
でも、これは「本来に戻る」というプロセスにおいて必要な体験になる。
自分に自立的、主体的な力が多少でも備わっていれば、あるいは十分に持てていたなら、こんな惨めな気持ちにならないですむのに、いつも不安を抱えずにすむのに、もっと他者に対しても堂々と向き合うことができるのに…
そんな思いが頭をよぎったとしたら、今、まさに変容のチャンスのはずだ。
* * *
ここまでの話を踏まえて、2024年の水瓶座期のチャートを見てみよう。
ASCは天秤座、太陽はもちろん水瓶座で月は双子座である。双子座、天秤座、水瓶座は風エレメントのサイン。つまり、2024年水瓶座期は風エレメントのテーマが強調された時期ということだ。これはどういうことだろうか。
私の講座ではおなじみだが、3番目のサイン・双子座、7番目のサイン・天秤座、11番目のサイン・水瓶座というように、風エレメントは素数で形成されている。素数とは、これまでの流れをいったん断ち切って、新しい流れをつくるという意味になる。
「新しい流れ」とは聞こえがよいが、たとえば丁寧に掃き掃除をして集めた落ち葉を突風で吹き飛ばすように、結びついたものをバラバラにするという意味にもなる。そう考えると今回の岸田首相の決断は、自民党にとってかなり大きなインパクトをもたらすことは間違いないだろう。
だが、以下のチャートを見ると、4ハウス(蟹座)、8ハウス(蠍座)と水のエレメントを表す部屋に太陽と月があることから、「次に誰とどう組むか」という思惑が早々に交錯し、新しい組織、団体への動きが足早に起こることが予想できる。
まあ、でもこれはサラリーマン議員にとっては仕方のないことなのかもしれない。一人では選挙に勝つ実力など全くない者たちなのだ。次の選挙を見据えた際、誰とどう関係するかというのは、彼らの生存にとって必須条件なのだろう。
この話は、12月の月イチ勉強会「冬至図を読む」でもお伝えした。誰とどう組むか、自分の未来にとって必要な人間関係とはどのようなものかを考えるのは、これからの時代を生き抜くヒントにもなる。それは、冥王星が水瓶座にイングレスした際に最初に考えるべきテーマとなるだろう。
だからこそのASCは天秤座なのだ。誰かと手を組むなら、どこかの組織に属するなら、どれだけ対等な立場を確立できるか、その振る舞いを身につけること、その権利を主張し獲得することがこの一ヶ月の間に意識していくことの一つとなる。
主張するといっても大きい声を出す必要はない。大事なのは常に太陽を意識しておくことだ。つまり、本来の自分でいられる関係なのか、所属なのか、そこを意識しておけばいい。
またこの二年、様々なところで繰り返し言及しているので今さら言うまでもないのだが、風エレメント・不動サインの水瓶座に冥王星がイングレスすれば、少子高齢化に伴う「人手不足」というテーマは間違いなく本格化する。風エレメントは人、不動サインは価値、水瓶座は「人材の価値」の象徴となり、冥王星は力の「不足」をどう生き抜くかがテーマになることから、水瓶座が冥王星を通過する際の一つに「人材の力不足をどう乗り越えるか」があげられる。
逆に言えば、「人の価値をどう大切に扱うか」が重要となるわけだ。
人の人権を守り、自分と同じように他者にも価値を与えること。それは、他者に気を遣うように自分にも気を遣わなければならないことでもあり、これができないのなら、国も企業も個人も価値が目減りしていくだけだ。
冥王星をやるためには、「自分だけ」の利益・幸福を目指すだけの利己主義ではうまくいかない。また裏利己主義ではないが、自分の欲望を他者に投影し、人をコントロールするのもダメなのだ。
* * *
最後にもう一つ、この一ヶ月のテーマとなる「風エレメントはどういうものか」について、もう少し説明を加えておきたい。
実際、今回の派閥解散は、政治家の劣化に対し、大きな効果は生まないだろうと私自身は考えている。冥王星が山羊座と水瓶座を行ったり来たりしている間に最も望むことは、ガバナンス強化だ。
ガバナンス強化とは、一般には組織を透明化すること、法律などに違反した行動を起こさないように企業内で仕組みや規則を作り、管理体制を整備することと考えられている。
かつて故・安倍首相は四回に亘り「私は立法府の長」だと発言したそうだが、首相を議長とする経済財政諮問会議の内閣府設置や補佐官制度の導入など、首相の制度的な権限が強化されたことで、小泉、安倍など強い首相が誕生し、結果、政権中枢の思いのまま重要政策が次々に成立してしまった。
政治主導が強化したことで、官僚の自立性が失われ、官僚たちは政治家の下請けのような存在になり、その結果、官邸に対し異を唱えた者は更迭され、忖度官僚だけが残っていった。
だからこそ、今こそ風エレメントが必要となる。忖度、癒着、天下り、世襲、族議員、イエスマンで組織を構成するのではなく、科学的なエビデンスをもとに政策が分析、評価が行われる環境を作ること。政治家は世論を気にして後ろ向きになることなく、また官僚たちも既得権益を守ることにしがみつくのではなく、今、もっとも解決すべき問題に全力で取り組むことを努めること。政策のチェック機能を強化し、それぞれの関係者の合意形成を図り、政策過程を全面的に共有することが今の政治には不可欠である。
一方、国民である我々は、国民としての「知る」努力を怠ってはいけない。わたしたちが無関心であることが、もっとも政治家を無能にさせることにつながるからだ。
先の台湾総統選のように、国民総出で自分たちの政治と向き合うことが何よりも望まれる。今日の政治は、明日の私たちの生活である。
関心を寄せ続けること。必要があれば声をあげること。情報をオープンにすること。情報の裏付けを求めること。関係者が対等に意見を交わし合うこと。国/企業/個人は、これから風エレメント的なやるべきことが山ほどある。
さて、水瓶座期にこれらのことがどのくらい進むのだろうか。
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この天空の動きをどのような言葉で語り、どのように利用し、どのように語るのか。 この機会にぜひ占星術の一番すぐれた技術――天空の動きを読むという素晴らしい知恵を手にしていきましょう。