三者面談でゆめを語る
中3の3者面談、もちろんお母さんが来てくれてビートルズが大好きな担任のK子先生とこの先の生き方を語る会。
「ニコさんはどんな人になりたいですか?」
150センチ位の小柄な感じそしてめちゃシュッとしてて、イギリス愛が感じられる常に襟付きにいいベルトでシャツイン。johnを思わせる丸メガネ。さすが英語の先生! 髪型も女性には珍しくツーブロ七三分け。キリッとした話し方もまた女女してなくてむしろジェントル。今思えばそんな40歳結構尖ってる。むしろ肩パッドも入ってて、今思えばTalkingheadsかも。
「進学はどう考えていますか?」
「大学には行こうかなと。」
「大学を選ぶには何になりたいかを先に考える必要があるよね。行きたい大学が決まれば高校だって自然に選べるようになりますよ」
「将来のゆめはありますか?」
そりゃありますとも! 詩を書いたりして生きていくこと、アイドルとはいわないまでも芸能人みたいな感じで東京に行くこと。この頃はすでにアルフィー の近くに、というより東京への憧れがすごいことに。田舎で生まれた民はみなそうなのか?
「なりたいものがたくさんあります」
K子先生への憧れから英語の教師、水族館でも働いてみたい、あととにかく東京で働いてみたい、本を作る人になりたい、何か書いてもみたい(一般人としての就職ではなくなにか一芸的なものを狙っている節あり)。
「教師になるなら教職課程を取れる大学、水族館は水産大学とかを目指すのかな? 本を作るというのは製本の仕事?」
先生に質問されて初めて、自分の将来のゆめが、ただ漠然といーなーなりたいなー行きたいなー会いたいなーだけだったとこの時気がつく。なんか急に現実的。何になるのでもそのための学びの場があって、そのどこかに行くために日々勉強しているのだとやっと分かった。もちろん全部なりたいのだけど、何か一つに決めてそのための大学へ行く。えー決めるの難しい。ていうか、そう考えるとなんかつまんない!!
「焼鳥屋さんもいいなと思ってるんです」
もう、ゆめの迷子。決められなすぎて思いついたものをどんどん口に出して面談は終わった。高校に進んでさらにどこかの大学に進む、という面談の必要がないことだけが決まった。
帰り道、お母さんがほとんど口をきいてくれなかった。せっかく仕事を早上がりしていつもより綺麗にして、さぞ褒められると思って学校に来たのに、みたいなこと? 褒められたじゃん、成績学年トップだよ。
「焼鳥屋さんってなに?」
え、だってニコ焼鳥好きじゃん。美味しいのも美味しくないのも焼鳥なら好きじゃん、それって本当に好きなものかなと思って。そういうことを仕事にするのがいいのかなとおも、、って、、お母さん無言。なんかいつも聞こえない道路脇の側溝の水が流れる音がやけに大きく聞こえたりして。え?
「焼鳥屋さんにならせるためにニコのことここまで育ててきたわけじゃない!」
お母さんの声はその時なぜかとても低く、キーーッとヒステリックに怒るタイプじゃないお母さんの、本当の怒りなのかも、と思った。絶賛反抗期、中二病のおれだったけれど、え焼鳥屋のなにが悪いの? まさか職業差別? 公務員だけ偉いっと思ってる的な? お母さんってそんな感じじゃないでしょ、いい仕事ってそういうことだけじゃないでしょ!! みたいな言葉を全部飲み込んだ。普段ニコニコ控えめなお母さんの本当の気持ちを見たような気がして何も言い返せなかった。え、う、うん、とだけ。
このお母さんの言葉は、結局ずっと忘れることができない。なんかふざけて面談に臨んだ自分、ばか。自分の生きる道にいろんな人の思いが乗っていることを改めて気付かされる。