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「私への望み。」/ショートショートストーリー

私が今いるところは離島だ。人は50人いるかいないか。景色はとんでもなく美しい。私の心も体も癒してくれる。

「神の望み。」は何だろう。私は心地よい海風に吹かれて考える。

神の望みはわからない。いくら考えても凡庸な私にはわからない。

でもと思う。ここへきて学生時代に大好きだったけど勤め始めてから辞めてしまった絵をまた描き始めた。自分の望みならわかる。今ブラウンの空の下、とても大きな虹がかかっている。これを絵にしたい。虹はすぐに消えてしまうからと私は脳裏に焼き付ける。ここにくるまで虹なんか気にしたことがあったかな。いや、空なんて見ていない。いつもうつむいて歩いてきたな、私は。

今生やり残したことがあるとしても来世にすればよい。神の私へ望みも来世でわかるのかもしれない。焦らなくてもいい。時間はもちろん有限だが、焦る必要はない。私はまた筆をとる。


この離島は余命が分かっている人たちのためのホスピスケアの島。今日も景色が素晴らしい。画題ならいくらでもある。


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