援助交際
漆野密子は、ただいま就活中。
あこがれのWEB業界への転職を目指している。
未来は明るい。
3月に仕事を辞め、4月に張り切って、リクルートスーツを購入した。
なんだかんだ、訓練や講座や就職活動まで半年以上放置。
それにやっと腕を通した。
「お茶しながら話しましょう」
とカフェに。
ちょっとがっかりな密子。
だって、せっかくリクルートスーツなのに、オフィスでやらないの?
って思った。
向き合っている男は、年の頃はだいたい60代からいって70代。
密子はなんとなく、あの頃のことを思い出していた。
高校生の頃のことを。
男は、密子の出した履歴書などほとんど見ずに、ひたすら自分の会社の説明をしていた。
そして、男の求めるスキルは密子にはなかった。
だから、たぶん落ちるだろうと密子は思った。
けれど、ずっと密子のひざに男の手があった。
密子は思い出していた。
あの高校生の頃のことを。