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第6章 いじめの渦に自ら飛び込むということ。

窓際のポポ子のお喋りが止まらない。マリーがまた小説を書くと聞いて、嬉しくてたまらないのだ。

「どんなおはなし? おもしろいおはなし? あたしは、おうじさまがでてくるおはなしがいいなぁ」

ポポ子はお水に浸かりながら、うっとりした声で話している。

マリーは、ポポ子の小瓶を、ちょっと傾けたり、ユラユラ揺らしたりしながら、ため息をついた。

「なぜ、ためいきをつくの? やっと小説が書けるのに!」

ポポ子は、不思議そうな声で言った。

「たっくさん、嫌な思いしそうだから」

マリーは、机に肘ついて考えていた。梅田麗子が話していたことを。

『この場合、どっちに転ぶかよねぇ...。高卒だからって、学歴差別されるか...、大卒だからと妬まれるか...。なにしろ、古い体質だからねぇ』

梅田麗子はそう言った。

マリーは、自分が高卒であることを卑下したことは、いままであまりなかった。派遣のアルバイトは、募集に、大卒以上という規定は、ほとんどなかったし、マリーの憧れの小説家の先生だって、高卒だと言っていた。

だから、逆に、どこかの大学の文学部で勉強してきた人より、素で勝負してる、才能で勝負してる感があって、マリーにはかっこよく見えていた。

けれど、梅田麗子の『学歴差別』という言葉を聞くと、妙に劣等感に苛まれた。

「大卒しか、人間扱いされない世界があるのかもしれない。そういう世界には、必ず、いじめがある。絶対にある。わたしは、そういう世界に、むざむざ飛び込んでいくのか...」

マリーは、先行き暗闇の世界な予感に、にじゅっぺんもため息をついた。

「しあわせがにげてっちゃうよぉ」

ポポ子がまた笑った。



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