またプロポーズしちゃったよ!
雅哉くんは、わたしに近付いてくると、急にこう耳打ちした。
「ちゃんとやらないと、結婚してやんねぇーぞ!」
ドッキン!! ってなった。その後は、口がアワアワするほど、ドキドキドキドキドキドキ...。そして、「いやだ! 結婚して!!」と、わたしは言ったんだけど、その声が思ったほど小さくなくて?!
体育館がざわついた。「え? 結婚?!」「なに? いま、なんつった?」「結婚してって言わなかった?」
「しーずーかーにっ!!」島田先生がマイクで一喝すると、体育館が一気に静まった。そして、島田先生は、わたしを見ると、「斉藤さ〜ん、呼びかけと関係ないことを、大きな声で言わないでくださ〜い」と言った。
わたしは、雅哉くんに腕を掴まれて、舞台にあげられた。そして、雅哉くんに、「この大根役者っ!! ドンガメおたんこなすっ!! しっかりやれぇ!」と言われた。島田先生が、「雅哉、言い過ぎ言い過ぎ!!」と慌てたけど、雅哉くんは、わたしを見て、いたずらっぽく笑って見せた。だから、わたしも笑った。
「さあ、練習するぞー!」雅哉くんが、わたしにマイクを向けた。わたしは、「ぼ、ぼくらは、こんな、こんなに、おおき、、く?」と言いながら、雅哉くんの顔色を伺った。雅哉くんは無表情で首を横に振っている。
「そもそもがさ、なんで、雅哉のセリフだけ、そんなに自信なさげに言ってるんだよ! 自分のセリフは、ちゃんと言えてんのにさぁ」佐伯くんが言った。「それは...」
「だって、それは、うちのお兄ちゃんが、雅哉くんは卒業式に出たかったのに、出られないのだから、雅哉くんのセリフをわたしが言うのなら、雅哉くんの存在を生かすために、雅哉くんのモノマネしろって言ったから...」わたしは、そう言い終わると、恥ずかしくなって肩をすくめた。
チラッと雅哉くんを見ると、目をキラキラさせて、嬉しそうに笑っている。
「それは、いい考えだね!」島田先生が言った。早苗先生も頷いている。体育館のみんなも、「うん! グッドアイデア!!」「さすが! 海斗先輩!」「海斗先輩が言うんじゃ、やるしかないな!」と言い出した。
「えええーっっっ?! そんなぁぁぁっ!!」わたしは、悲痛な声をあげた。
「いいか? 斉藤雪さん。僕のモノマネは、こうやるんだよ!」雅哉くんは真剣だった。「僕らはこんなに大きくなって、今日、この桜ヶ丘小学校を卒業します!! はいっ! 斉藤雪さん、どうぞ!!」「ど、どうぞったって...。ぼ、ぼくらは、こんなに、、、こんなにおおき、、、く、、、」わたしはまたうつむいた。
「がんばれ!! 斉藤雪さん!! 僕は、斉藤雪さんに、僕のモノマネをして欲しいんだ!!」雅哉くんが力を込めて、そう言った。あまりに真剣な表情に、わたしは思わず「はいっ!」と答えた。
それからは、まさに、真剣!! スパルタ練習が始まった。もしかすると、兄より厳しかったかもしれない。雅哉くん。
「僕らは〜 こんなに大きくなってぇ〜 きょう〜 この桜ヶ丘小学校を〜 卒業〜 しまぁ〜す」「ちっがーうっ! 誰だよっ! それ!!」
「あ、僕らはぁあ、あ、こんなに大きくなってぇえ!!」「それ、やめろ!」
「僕らはさぁ、こんなに大きくなってさぁ、今日さぁ、、」「もしかして、福山雅治のモノマネしてる?」「うん!」
体育館中がゲラゲラ笑っていた。こんな時には、真っ先に怒り出す島田先生も、お腹を抱えて笑っていた。
雅哉くんも。。。
続く