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山梨ワインは最高の巻

「あのね、それでね、おったまげたことにさ! ニコちゃんの結婚相手がジュンだったんだよ!!」

わたしは、彼の部屋のソファにもたれかかりながら、日本茶を入れる彼に話しかけていた。

「へぇー! 玲奈ちゃんが最初に飼った犬と次に飼った犬が結ばれるなんて、まるでメルヘン童話みたいだねぇ」

彼はそう言いながら、ソファの前にあるテーブルに、お茶を置いた。

「ありがとう」

お茶碗の絵柄は、たんぽぽ。

「うふふ、かわいいお茶碗」


「大事なことを忘れとったで!」「うわー?!」またいつのまにか、月浜可憐がやって来ていた。

「いらっしゃいっ! 可憐おばあさん!」

わたしの彼、雲坂雅哉は、ニコニコしながら、わたしの祖母で、横浜中華街の母 月浜可憐に挨拶した。

「だから、月浜可憐と!! ...。も、もういいやっ! めんどくさっ!」「なに? ばあちゃん」わたしは、彼の部屋のソファに寝転がりながら、煎餅を食べていた。

「玲奈っ! そんな煎餅なんぞ食ってる場合じゃないぞよ! ほらっ!」月浜可憐は、持ってきた風呂敷包みから、一冊の本を取り出した。

「ええ? なあに? やまなし? ワイン?」わたしは、煎餅を咥えながら、月浜可憐が渡してきた本を見た。

「そうやって横着してないで、ホレッ! 起き上がらんか!!」月浜可憐は、わたしをソファの端っこに追いやって、自分もソファに座った。

「まだ勉強しなきゃいけないのぉ?」「そうじゃよ! 何より大事な勉強じゃ!」月浜可憐は目をキラキラさせている。

「ワインはお好き?」月浜可憐は、彼に聞いた。「ええ、好きですよ」彼は月浜可憐にお茶を出しながら言った。

月浜可憐が持ってきた、追加の教科書。『山梨のワイナリーへ行こう!』

「まあ、楽しそうだけどさぁ、関係あるの? シャーマン修行とワイン」「なに言ってんだい?! 昔から呪術と酒は切っても切れない関係にあると書いてあっただろうが!! あ、おまえ、勉強してないな?」月浜可憐は興奮ぎみに話していた。

「山梨ワインと言えば、勝沼の『あじろん』は、スイーツに合う甘口ワイン」彼が、テーブルにワインを持ってきた。

「おうおう、いい子じゃ、雅哉は、なんと良い子!!」月浜可憐の目がさらに輝いた。「ただの呑兵衛じゃないかよ!」わたしは、彼がグラスについでくれたあじろんワインを一口飲んだ。

「ふぅ〜♡」

「そう言えば、ばあちゃんとお酒飲むの、初めてだね。ばあちゃん、わたしが子どもの時に死んじゃったから」「おお、そうじゃったのぉ」「ええ? なにそれ?!」

三人ともベロベロになるまで、山梨ワインを堪能。

たまには、こんな日もいいよね♡


つづく

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