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ポスト=マイルステータスおじさんに関する果てのない考察

こんばんは、シンガポールで働く日本人、ニコールです。

私は海外旅行に行くのが好きです。旅行というか、スーツケースを持ってわくわくしながら空港に行き、チェックインをしてイミグレを通って、買わないけど免税店をちらっと見て、搭乗時刻の30分前にゲートに行く、、という一連のプロセスが結構気に入っています。

7月から日本とシンガポールも増便になり、だんだん海外に出られる日が近づいている感覚はあるものの、前と同じようなあのプロセスには戻らないのかもなぁと思ったとき、ふと「マイルステータスおじさん」のことを思い出したのです。

たとえば福岡空港。17時発、羽田行きのJALのゲート前。ダイヤモンドクラスの表示の前にずらりと並ぶおじさんたち(その横のエコノミークラスには誰も並んでいない)。その列は大蛇のごとく後方のお土産屋さんあたりまで伸びている。

たとえば羽田空港、シンガポール行きのゲートの前の椅子に座り、「ダイヤモンドクラス、JALグローバルクラブエメラルド会員の皆様、、、」というあのお決まりの優先搭乗アナウンスがかかると一斉に立ち上がるおじさんたち。

あの誇らしげでステータスに対してあまりにも愚直に向き合っていたおじさんたちは今どうしているのだろう、と。

通常ステータスを求める人たちというのは、何か埋められない枯渇感を抱えている。承認欲求、自己顕示欲求、自己肯定感の補填、とか。精神分析的に言えば、誰かに認めてもらいたくて、誰もがひれ伏す、誰もが価値を認めるものを保持したがる。ランボルギーニとか、港区の高級マンションとか、パテックフィリップとか。

だがしかし、かつての職場でもいたのだけれど、マイルステータスおじさんたちは決して職場で認められていない存在なのではない。むしろ「マイルをためるため、今年度ステータスをキープするために出張を作る」ことができるくらいの裁量権を持つなかなかの偉い人だったりもする。

それなのに、なぜ彼らは何かに満たされていないかのようにマイルを必死にかき集め、行きたくもない出張に行き(行きたいのかもしれないが)、あの小さな席に体を押し込んで空を駆け回るのだろう。何か「マイルステータスにしか満たせない深い闇」でも抱えているのかもしれない。

一説によれば、アルコール依存症になる人は脳が変質しており、アルコール自体ではなく「アルコールを飲む行為自体」から快楽を得るようになってしまうという。つまり、ビールを開けてグラスに注ぐそのプロセス自体が快感に置き換わるわけで、この話とマイルステータスおじさんの空港プロセスへの愛はどことなく相似性がある。マイルステータスおじさんはもはや丘マイラーのようにチクチクとクレジットカードの決済額に応じたマイル積算では満足できず、体を張って稼いだマイルが織りなすダイヤモンド色のおもてなしでなければ快楽を得られない。

嗚呼、なんと哀しいことだろう。

つまりおじさんたちはすでに「マイルステータス依存症」で、空港での一連のおもてなし(アナウンスなど)を受けることがないと禁断症状になるのではないか。

そして、その唯一の発露を絶たれた今、あの愛すべきマイルステータスおじさんたちはどうやって日々を生きているのだろうか、とも思う。空港に行けば何者かでありえたおじさんたちは、今、翼をもがれたペガサスかのごとく、地上で活路を見出せず、欝々としているのだろうか。



でもそこまで考えてなんだか眠くなってきたので、寝るとします。おやすみなさーい。

ではでは。



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