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001.いちまんごせんえん

※母親が亡くなったことについての日記です。そういう話が苦手な方は読まないようお願いいたします。

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7月XX日

とても暑い日。夜の7時過ぎに病院から電話。
「看取りの準備をしてきてください」とのことで、近くに住む姉に行ってもらう。

なんというまぬけなことか、このタイミングでわたしはコロナにかかっているのだった。幸いにも症状は2日程度でおさまり、このとき体調はなんともなかったのだけど。昨年末に母親の膵臓癌が見つかってから、東京の家を引き払って実家に戻り、治療に付き添ってきた。今日までの7ヶ月、いろんな出来事があった。で、まさかの、そのクライマックスが、この結果。

でもまあ、こればっかりはどうしようもないので、すぐに葬儀屋に連絡ができるようにスマホとMacの前に座って姉からの連絡を待つ。
こういうときって何をしているのが正解なのかわからない。ニコルさまはひざの上で「いまさらじたばたするなよ」と言っている。

夜の8時過ぎ、姉から「お母さんが死んだよ」と電話がある。少し泣いていた。病院に着いたときにはすでに息を引き取っていたとのこと。おつかれさま、とだけ姉に伝えてすぐに葬儀屋に連絡、病院に迎えに行ってもらう手配をする。

父が死んだのは、台風みたいな大雨の日だった。
病院から電話がきてタクシーで急いで向かったけど、その時も結局間に合わなかった。死ぬときは本当に、びっくりするぐらいあっさりあっけなく、ひとり勝手にいってしまう。
本当に、こっちの都合や気持ちなんかおかまいなしに、ほんとうにひとり、勝手に、あっさりといってしまう。
父の病室で、母と一緒に葬儀屋に連絡したことを思い出す。あの日からまだ2年たっていないんだ。

数時間後、病院に母を迎えに行ってくれた葬儀屋さんから、無事に葬儀場に着いたと報告の電話。
お礼を言うと、「お母様が安らかに眠れるように、15000円の枕花はいかがしますか」と聞かれる。母親が死んで2時間たたず15000円の花を買うかどうかの選択を迫られる。葬儀を取り仕切るって、感傷と現実のジェットコースター、こういうことの連続だ。
15000円払ったら本当に安らかに眠れるのかよ、と思いながら、いちいちそういうこと考える自分の心の狭さが嫌だな、と思いながら注文をする。

明日からの段取りをひとつひとつ考えていたら、ものすごく久しぶりに、ごきぶりが出る。殺虫剤を持ってみたものの、「もしかして…」と考えたらなんとなく殺せないまま朝になった。


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