不思議✨骨董招き猫せんきっつぁん物語17「オレの初恋」
オレの名前は千両箱のせん吉
今はせんきっつぁんと呼ばれている
オレはこの前まで旅に行っていた
正確には、無理やり連れて行ってもらっていたんだが
この旅はオレにいろいろな事を思い出させてくれたが
ちょっと胸がズキっとするような記憶も蘇ってきた
それはオレがまだこの世に生まれたばかりの頃の事だ
オレは海の見える小さな部屋で、無骨な手の中でヒゲや口、そして最後に目を描いてもらって誕生した
目を描いてもらって最初に飛び込んできたのが、キラキラと光る青空と海、それとオレを覗きこむクリクリとした目をした可愛い子だった。
その子は出来上がったばかりのオレに、トキゾウという名前をつけて大事にしてくれたんだ
お母さんごっこ遊びの時オレは子供役で、いつもその子のそばに座らされて怒られたり、抱っこされたり、いろんな事をしていた
そんな時間を過ごしているうちに、オレはずーっとその子のそばに居たいと思うような気持ちを持つようになっていたが
オレの思いはあっさり断ち切られた
オレとツレは箱に入れられて運ばれ、気がついたら千両箱の上に乗せられていたからだ
あのキラキラとした青空と海、オレをトキゾウと呼んでいたあの子が懐かしいなあ
なんだか年甲斐もなく胸がズキっとするぜ