22C 第3話
風「確かにこの規定見る限り、今までの俺たちの人生には無関係に思えたのも無理ないな。
利用できるのは18歳からな訳だし。」
国際機構が定めた制度ではあるが推奨まですると自殺示唆となってしまう。
あくまでも人間の個人の自主性に訴えてかける制度である。
日本の高校までの教育現場では興味を持たない事を1番とし、この話題や制度が一切取り上げられる事はない。
ただ、みんななんとなく計画死という制度がある、という事を漠然と知っている程度だった。
碧「茜ちゃん、これ全部自分で調べて1人で考えて選択して、申請したのかな…したんだよね…」
清「でもいくら茜の意志だったとしても、、俺は認めたくない、茜に死んでほしくない」
碧「でもさ、、これも茜ちゃんの権利なんだよね。もちろん18歳になったら誰にでもある権利な訳で。
死んで欲しくないって言うのは僕らの気持ちであって茜ちゃんの権利を尊重してないというか…」
清「碧、正気か?」
今までに見た事がないくらい、清の目つきが鋭い。
風「全く碧はいつにも増して冷静で、こんな時でも人思いなんだね。
茜からこの話聞いてたりしたの?」
碧「そんな…冷静だなんて…
すごく動揺しているよ。表に出さない様に心を押さえ付けてる。
茜ちゃんともこんな話した事ない。
今日も部活では普通にお前たし、さっき校門で凪ちゃんと話しかけてくれたろ?その時も普通だったでしょ?
にわかに信じられないんだよ。たぶんこの3人の中で僕が1番受け入れてないんじゃないかと思うよ。」
清「まあ口ではなんとでも言えるさ」
碧「じゃあさ!」
押さえ付けていた心が暴れる。
碧「こんな事茜ちゃんの気持ちを尊重してないみたいで嫌なんだけどさ、僕はやっぱり計画死を利用したのかしてないのか、すごく気になるよ。
人生で今1番他人に興味がわいてるよ。
好奇心の興味じゃなくて、大切な人がいなくなるのかならないのか。
いなくなったら僕は普通でいられなくなる。
それくらい大切な人だから。
それは君たちも同じ気持ちだと思う。
でもさ、権利は権利なんだよ。
僕の中の正義と自分のエゴが対立している。
茜ちゃんの意志を尊重したい、でも絶対死んでほしくない」
高校生にもなって、友達の前で涙と鼻水なんて垂らしてみっともない。気づいたら出ていた。
物心がついてこんな感情的に、心から直接言葉を発したのは初めてかもしれない。
清も風も完全に引いている。
風「うん、、そうだよな、みんな茜に死んでほしくない」
碧「何当たり前の事言ってるんだよーー」
腹の虫が治らない。
こうなったら乗り掛かった船だ。
虫が治るまで思いの丈をぶちまける。
碧「だいたいさ俺が冷静にならなきゃいけないのも、清と風がいつも口論になるから、俺がどっちかに加担するなんてできないだろう。
どちらかの味方するといじけるタイプじゃんか、2人とも!
2人ほど口喧嘩も強くないし争い事は避けたいタイプだし、ただ清も風も茜ちゃんも自分の好きな事言って、誰になんと言われようと貫いてて本当かっこいいし憧れだよ!
ちょっと言いたい事ちゃんと言ってみた!
そして俺だって茜ちゃんに死んでほしくない!」
清・風(碧が自分の事俺って言った〜〜)
清「碧だって最後当たり前の事言ってるじゃん(笑)」
碧「悪いのかよ!!!」
風「悪くない悪くない。悪い訳ない。
俺たちの方向性が定まった。何よりだ。」
風「茜の死を止めよう」
俺たち3人の意見がまとまった瞬間だった。
清「止めたいけど、、、人の死生感を問うのはタブーってお前が。。どうするんだよ。」
風「まあさ、とりあえずまだ茜がなんのために役所に行ってたのかわからない訳じゃん。
そこをはっきりさせたい。」
清「役所行ってたらしいじゃん!何してたの〜?」
風「…だからデリカシーないって言われるんだぞ」
碧「デリカシーない奴はモテないって…」
清「るせーー!モテっから!!」
碧「進路の話とかさ、今までちゃんとしてこなかった。将来の話とか夢なんか聞いたりして、その反応で探ると言うかさ…」
風「話題としても自然だな」
碧「一旦そう言う話、してみよ?
純粋に興味あるし。」
清「…興味なかった訳じゃないけど、、このままずっと一緒だと思ってたからな、、別に離れた所住もうが年1で集まったりして。
20歳になったらみんなで乾杯してって。
勝手に思い描いてた。
こんなに仲良いと思ってたから、茜は俺らと一緒にいたくないって事なのか。」
風「まあその辺りの真意も確かめたい所である。」
碧「とにかく話してみよう。未来の話だ。」
風「ごめんな、明日模試なのに。」
清「ううん。大切な話だ、話せて良かった。」
風「真っ暗だな、気をつけて帰れよ。」
時刻は19時を回っていた。
あれだけ眩しかった夕日も沈んでしまえば真っ暗になる訳で、あの明るさと温かさはまた地球のどこかを照らしている。
さっきは目も開けられず煩わしいと思うくらいの陽の光だったが、夜の肌寒さも暗さが相まって恋しい気持ちさえ覚える。
人間の身勝手が身に染みる。