22C 第2話
少子化の影響で街中に遊具付きの公園も減った。
遊ぶ子供がいないのに管理だけが大変になるからだ。
だだっ広い、大きな木と芝生の生えた公園は沢山あるが
ブランコ、滑り台の揃ってる公園は貴重だ。
もう18時を過ぎたから小さな子供も遊んでいない。
幼い頃から遊んでいる、いつもの公園のブランコに腰掛ける。
清「で、なに?茜の何かあった訳?恋のお悩みは俺の専門分野だけど、碧の前で話ていいのか?」
碧「僕の前だと話せない話がある訳?」
風「清、余計な事言うな。それにこれからする話は恋バナではない」
清「余計な事って。。それに恋バナって、おじいちゃんみたいな事言うなあ、風は。」
風「おじいちゃん、、、まあ一旦そんな事どうでもいい。落ち着いて聞いて欲しいんだ。」
風「一昨日の水曜日、予定があって部活休んで1人で帰ってた。」
碧「珍しいね。部活休むなんて」
風「用があれば部活くらい休むだろ」
風は弓道部でインターハイにも出場する程の腕前だった。主将も務めている。
風「、、、役所から出てくる茜をみた」
清・碧「…!!」
電子化、オンラインの手続きが進んだ現代、
役所での手続きは数少ない物しか扱わなくなった。
人間の死生に関わる出生届、死亡届、そして計画の申請である。
清「それは本当か?」
風「なんで今こんな嘘を吐く必要がある?」
清「別に風を、疑っている訳じゃないんだけど…」
碧「一旦冷静に考えよう。出生届?茜ちゃんはずっと学校来てたし、出産はしていない。
死亡届、これも忌引きで休んでないから、そんな身近な方が亡くなった訳じゃないよね、、え、、て事は、、」
風「俺もこの3日間そんな事ばっか考えてたぞ。
それで耐えきれなくなってお前らに…」
清「いやいやいや、でも茜だぞ?あの明るくて可愛い、クラスの人気者」
風「やっぱり、、?そんな訳がないよな、、」
碧「本当に茜ちゃんだったの?でも水曜日は確かに文芸部は休みの日だ。役所に行っててもおかしくないけど…」
清「茜に聞くのか1番じゃね?」
風「何言ってるんだ、こんなセンシティブな事聞くなんて今時タブーじゃないか。一昔前のセクハラオヤジって言われてたオッサン達と変わらないぞ清」
清「そうだけども…まずは真偽を確かめたい。もしかすると茜が死ぬのを黙って見過ごす事になる。」
風「もちろん茜が計画死の申請をしたとは限らない。
役所の人に用が合ったのかも知れない。親戚の兄ちゃんが働いてるとかな」
清「そんな話聞いた事もないけどね」
風「だから仮の話だよ。
茜、先週誕生日で18歳になったんだもんな…
18歳…確かに権利として死を自由に選べる様にはなるけど、まさか…」
碧「風の言っている通り、計画死するの?なんてデリカシーのない事、口が避けても言えない。でももし仮に茜が申請していたとしたら…」
清「そんな、俺はまだ信じてないぞ」
風「信じる、信じないの話じゃない。もし申請が通ってたら、早くて来年の4月には茜はこの世からいなくなってんだぞ。清はそれでいいのか?」
清「良い訳ないだろ!」
碧「みんな動揺しているし、ここに茜がいない限り話は想像の話しかできない。解決はしないし並行線だよ。」
風「俺と清の喧嘩にももう飽きたよな、碧も。たださ、茜だぜ?…死んでほしくないじゃんか…」
碧「わかるよ。茜ちゃんを知っている人みんな思ってるよ。まあ茜ちゃんじゃなくてもだけど。
それが清でも風でも、クラスメイトでも嫌だ。
身近にさ、それを利用した人いないからさやっぱ動揺する…まだ若いし…」
計画死の申請にはいくつかの規定がある。
○成人である事
国によって成人の年齢はバラバラなのでその国の成人年齢に基づく。
日本では18歳の誕生日を迎えたその日から申請ができる。
逆に物事の判別が付かないと言われている未成年は
自由に死ぬ事ができない。そのためいじめ等の理由で自殺する子供の人数は目に見えて減ってはいない。
しかしながら"18歳になったら計画死を利用する"と強い意志を持って生活をしている子供もいるらしい。
計画死はひとつの逃げ道ともなり、自殺のストッパーになっていると言える。
○未成年の子を持つ親は申請ができない
18歳以上が誰でも利用できる訳ではなく、子を持った親の責任として、成人するまでは自ら死を選ぶ事はできない(学生は未成年と同等であり、申請は通りにくい)
なお、子が成人したと見なされると申請ができる様になる。
また申請日と投薬日それぞれの日にメディカルチェックとデータベースチェックが行われる。
メディカルチェックでは女性が妊娠した状態ではないか、男性はデータベースチェックで父親でないかが調べられる。(医療の進歩で女性は妊娠がわかった瞬間、遺伝子検査で国が管理してるデータベースと照らし合わせその父親もわかる様になる。)
もし胎児の存在が明らかとなれば、申請は一旦保留となる。
○命日は半年以上、1年以内の日にちで決める
申請したらすぐ死ねる訳でなく半年以上、1年以内の好きな日を選び、病院で医者から薬を投与してもらい死ぬ事ができる。
突然死ぬ事が出来ないのが自殺との相違のひとつである。衝動的に死ぬのを防ぐ目的もある。
死亡してから周囲に掛ける迷惑を最小限に抑える為に、財産や部屋の整理のための準備期間とも言える。
ただし18歳の高校生が申請したとして、命日は卒業した年の4月以降からの選択になる。
(未成年の同級生へのショックを最小限にするため)
○債務者や罪人は計画死の申請が出来ない
債権者への完済、刑期を全うするまで利用ができない。また申請後に発覚、発生した罪があれば申請は取り消される等の決まりがある。
○キャンセルはいつでもできる
あくまでも殺すための制度ではないので命日をキャンセルする事は投薬日の朝まで可能である。
ただし1度キャルセルすると向こう5年は計画死の利用が禁止される(5年後には解禁される)
また無断キャンセル(投薬してくれる病院へ行かない)は今後一切、計画死の利用が禁止させれる。
○申請費1000円、薬代1000円
2000円で人生に快適な終わりを。