映像シナリオ「メモのホクロ」
概要:シナリオ学校の課題にて執筆。条件は短編もの。後に映像化していただく機会があり、YouTubeで公開(下記の映像)。製作上の都合で内容変更あり。元の尺は約9分。2015/03/06作。
○登場人物
村本明菜(17)高校二年生
佐藤智美(17)高校二年生、明菜の友人
中島拓也(17)高校二年生、明菜の幼馴染
藤田健介(18)高校三年生、明菜の憧れの人
村本涼子(40)明菜の母親
村本誠司(42)明菜の父親
家族連れ三人
道行く人々
○ 学校・廊下
廊下を歩く村本明菜(17)、外を歩く藤田健介(18)に気づく。
明菜「あ、先輩!」
嬉しそうな明菜、スマホのカメラで健介を盗撮しようとする。
シャッターの瞬間、中島拓也(17)が横切る。
拓也、明菜に気づき、ピースサイン。
明菜、しっしっと手を振る。
拓也、意地悪そうな笑顔でわからないふり。
イライラした様子の明菜。
○ 村本家・明菜の部屋(夜)
嬉しそうにスマホを見る明菜。
拓也が横切った健介の写真(健介のところを拡大)。
明菜、時計を見て面倒くさそうに立ち上がり、手の甲を見ながら鞄の
教科書を出し入れ。
明菜「智美に借りた漫画と……(手の甲の文字を消しながら)ああ、明日テ
ストあるんや。めんどくさ」
明菜、手の甲に書いた『日本史テスト』の文字を消そうとするが、そ
の下に『ホクロ』の文字を見つける。
明菜「なんじゃこりゃ」
首を傾げる明菜。
○ 学校・廊下(回想)
窓の外に向かって、しっしっと手を振っている明菜。
駆け寄ってくる佐藤智美(17)。
智美「明菜、聞いた? 明日、日本史抜き打ちテストだって」
明菜「抜き打ちぃ? なんで智美知ってんの?」
智美「日本史の原先生が言ってた」
明菜「(手の甲にメモしながら)は? 抜き打ちになってないやん、それ」
智美「ハラセンもあかんよね。ポロッと言っちゃうなんて」
智美、笑いながら明菜に手を出す。
明菜「何?」
智美「貸してた漫画」
明菜「あっ! ごめん! 明日絶対持ってくるから」
手の甲にメモをする明菜。
○ 村本家・明菜の部屋(夜)
明菜、机に向かい日本史の勉強中。
明菜、手の甲の『ホクロ』が気になり、険しい表情。
明菜「ホクロって何?」
明菜、ノートに『ホクロ』と書き続けたり、教科書の写真の顔にホク
ロを書き込んだり集中できない様子。
○ 同・居間(朝)
寝不足で顔色の悪い明菜、席に座る。
涼子「おはよう、明菜ちゃん」
明菜の前に朝食を置く村本涼子(40)。
村本誠司(42)、新聞を小脇に抱えながら入ってくる。
誠司「母さん、トイレットぺーパー、もうないで」
涼子「あらやだ、買いに行かな」
涼子、手の甲にメモする。
涼子「ねえ、お父さん。今日は何の日か覚えてる?」
自分の手の甲を見てから首を傾げる誠司。
涼子「もう、結婚記念日やん」
誠司「ああ」
涼子「(笑いながら)また忘れて。今日は早く帰ってきてや」
誠司、手の甲の『早く帰る』とメモする。
誠司「(笑いながら)まあ、メモしても忘れる時は忘れるけどな」
誠司、上着と鞄を持って出て行く。
明菜、うっとうしそうに誠司を見る。
明菜「お母さん。よくあんなのと結婚したね。他にもっといいのおらんかっ
たん?」
涼子「あれくらいが楽やねん」
明菜「え~?! 私は絶対イヤ」
嫌そうな明菜、手の甲の『ホクロ』を見て、さらに嫌そうな表情。
○ 道(朝)
だるそうに歩く明菜、道行く人々の顔のホクロを目で追ってしまう。
明菜「(ブツブツと)ホクロ、ホクロ……」
○ 学校・教室(朝)
疲れた様子で席に座る明菜に駆け寄ってくる智美。
智美「おはよう、明菜。昨日のさ――」
明菜、智美の顔のホクロに目がいって何も聞こえない。
智美「明菜? 明菜?」
ハッとなる明菜。
智美「明菜? 聞いてる?」
明菜「ああ、ごめんごめん」
○ 同・中庭
ベンチに座りスマホで『ホクロ』を検索する明菜。
明菜「ホクロ……メラニン色素を含む細胞が集まったもの……え~、遺伝する
ん?!」
鏡を見て顔のホクロを気にする明菜。
○ 公園(夕)
顔のホクロを触りながら歩く明菜、足もとにボールが転がってくる。
明菜、それを拾い、走ってきた子供にわたす。
子供「ありがとう」
顔を上げた子供の顔に大きなホクロ。
子供、母親と父親の所へ走っていく。
明菜に会釈する母親と父親の顔にも大きなホクロ。
明菜、去っていく家族を見つめる。
明菜「やっぱホクロって遺伝するんや」
○ 村本家・明菜の部屋(夜)
生物の教科書を広げ勉強する明菜。
教科書は遺伝についてのページ。
ノックをして入ってくる涼子。
涼子「毎晩勉強大変ね。ほら、これでも食べて」
涼子、おにぎりの皿を机に置く。
明菜、涼子の手が目に入る。
涼子の手の甲に『ホクロ』の文字。
驚いて顔を上げる明菜。
涼子「じゃ、頑張ってね」
明菜「え、あ、ちょっと……」
さっさと部屋を出て行く涼子。
明菜、自分の手の甲の『ホクロ』を見つめる。
○ 同・居間(朝)
思いつめた表情で席に座る明菜。
涼子「おはよう、明菜ちゃん」
明菜の前に朝食を置く涼子。
涼子の手の甲に『ホクロ』の文字。
明菜「お母さん……それ何?」
涼子「(手の甲を見て)さあ? 何やろ、これ」
○ 道(朝)
明菜、自分の手の甲を見てため息。
前を歩く健介に気づく明菜、ふと健介の手の甲を見ると『ホクロ』の
文字。
驚く明菜、健介に声をかけようとするが、曲がり角で走ってきた拓也
とぶつかり尻餅をつく。
拓也「ああ、ごめん」
差し伸べた拓也の手を取り立ち上がる明菜。
拓也の手の甲に『マユゲ』の文字。
明菜「あんた、なんで『マユゲ』って書いてんの?」
拓也「えっ? (手の甲を見て)わからん」
拓也、明菜の手の甲の『ホクロ』を見つける。
拓也「おまえも……『ホクロ』って何?」
握手をしたまま見つめ合う明菜と拓也。
○ 村本家・居間(朝)
新聞を読んでいる誠司。
涼子、誠司の手の甲を見る。
涼子「お父さん、何か書いてるで」
誠司の手の甲に『マユゲ』の文字。
誠司「なんじゃこりゃ」
見つめ合って首を傾げる誠司と涼子。
(了)