映像シナリオ「もうちょっと、あとちょっと」

概要:シナリオ学校の課題にて執筆。条件は短編もの。尺は約9分。2016/02/14作。

〇ログライン
 いつもあと少しで幸せを掴み損ねる男が、身近にある幸せに気づき掴み取ろうと奮闘する話。

〇登場人物
今村圭介(28)サラリーマン
松岡浩子(25)今村の後輩
上司

                                他


○ 今村の家(朝)
   目覚まし時計が鳴り響いている。
   眠そうな今村圭介(28)、手をのばして止めようとするが届かない。

    ×    ×    ×

   電源コードをコンセントに差そうとする今村、ギリギリ届かない。
   何度も差そうと挑戦するが届かない。

    ×    ×    ×

   玄関で急いで靴を履く今村。
   履いてから忘れ物(ゴミ袋)に気づき、靴を脱がずに手をのばすが届
   かない。
   あと少しで指が届きそうになるが、バランスを崩して倒れこむ今村。

○ オフィス
   棚のファイルを背伸びして取ろうとしてる今村。
   もう少しで取れそうな今村、ふくらはぎがつり、しゃがみこむ。
   今村、ふと横を見ると、少し離れた所で踏み台に乗って棚のファイル
   を取ろうとする松岡浩子(25)がいる。
   浩子、ぎゅうぎゅうに入った棚のファイルを無理やり抜き取る。
   その勢いでファイルを数冊ぶちまける。
   慌てて拾う浩子、手伝う今村。
   浩子、今村からファイルを受け取ると、会釈をしてそそくさと去る。
   ぽかんとした表情で見送る今村、手には取ろうとしていたファイル。

○ 廊下
   重い荷物を抱えてエレベーターに向かう今村、ボタンを押そうにも手
   が離せない。
   今村、何とか押そうとしていると、エレベーターの扉が開いて浩子が
   降りてくる。
   浩子を横目にエレベーターに乗る今村、ふと行先ボタンを見ると既に
   押されている。
   浩子が行った先を見る今村、扉が閉まる。

○ 休憩室
   コンビニのパンを片手に缶コーヒーを飲む遠い目の今村。
   今村、食べ終わったパンの袋を丸めて遠くのゴミ箱へ投げる。
   ゴミ箱から大きく外れるゴミ。
   外れたゴミが近くにいた浩子の背中に当たり、ゴミ箱の中へ落ちる。
   気づいていない浩子、そのまま去る。
   呆然と見送る今村。

○ 廊下
   廊下を歩く今村、前に浩子が歩いているのに気づく。
   浩子、颯爽と歩いているが、何もない所で足がぐにゃっとなってこけ
   そうになる。
   思わず「あっ」と言いそうになる今村。
   今村に気づいていない浩子、少し恥ずかしそうにしながらも、何事も
   なかったかのように去っていく。
   思わず吹き出す今村。

○ オフィス
   浩子が気になる今村、仕事に集中できない様子。
   仕事に集中している浩子、今村の視線に気づいていない。

    ×    ×    ×

   退社時間。
   帰ろうとする浩子に、慌てて席を立とうとする今村、机の上の物を落
   としてしまう。
   慌てて拾う今村、机の隙間に入り込んだ物を手をのばして取ろうとす
   るが、届きそうで届かない。
   諦めて浩子を追いかける今村。

○ 廊下
   エレベーターに乗り込む浩子。
   今村、急いで浩子を追いかけるが、目の前で、扉が閉まる。
   悔しそうな今村、下のボタンを押すが、他のエレベーターはなかなか
   来ない。
   今村、急いで階段へ向かう。

○ 出入り口
   エレベーターから降りて出入り口へ向かう浩子。
   階段の方から走ってくる今村、浩子を見つけ、追いかけようとする
   が、落ちていた空き缶につまづいてこける。
   今村、慌てて立ち上がろうとするが、上司に捕まり、残業のため連れ
   戻される。

○ オフィス(夜)
   ひとり残業する今村、何か探しているが、机の隙間に落ちたままだと
   気づく。
   手をのばして取ろうとするが、届きそうで届かない。
   必死に手をのばす今村、諦めかけたところへ、物が落ちる音。
   今村、顔を上げると浩子が机の上のペン立てや書類を落として慌てて
   拾っている。
   手伝う今村に会釈する浩子。
   浩子、片付け終わると、これを取りに来たと言うように忘れ物を見
   せ、そそくさと去る。
   呆然と浩子を見送る今村、手には定規。
   今村、手にした定規を隙間に入れると簡単に物が取れる。
   定規を見つめる今村、定規を持ったまま慌てて浩子を追いかける。

○ 廊下(夜)
   エレベーターを待つ浩子、表示が上の階で止まったままなかなか降り
   てこない。
   浩子、腕時計を見て階段から降りる。
   少し遅れてやって来る今村、浩子が待っていたエレベーターの扉がち
   ょうど開く。
   急いでそれに乗り込む今村。

○ 出入り口(夜)
   出入り口へ向かう浩子、空き缶が落ちていることに気づき、近くの自
   販機のゴミ箱へ捨てる。
   エレベーターから降りてくる今村、自販機の前にいる浩子に気づかず
   通り過ぎる。

○ 外(夜)
   今村、浩子を見失い、引き返そうとしたところで、派手にこける。
   浩子、痛そうにその場に座り込む今村に気づき、鞄からハンカチを取
   った拍子に家の鍵が飛び出て自販機の下へ。
   今村、自販機の下をのぞき込んでいる浩子に気づく。
   浩子、鍵を取ろうとするが届かない。
   今村、手にしていた定規に気づき、浩子の元へ。
   定規を使って鍵を取る今村、鍵を浩子にわたして微笑む。
   鍵を受け取る浩子、持っていたハンカチをわたして微笑み返す。
   見つめ合う今村と浩子。

                              (了)

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