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君が存在を感じてくれたら。


初音ミクをほとんど知らなかった。


天下のボーカロイド様で在られるので勿論存在は知っていたが、
そこそこ有名な曲も、名の通るボカロPも全くと言っていいほど知らなかった。


そんな私がマジカルミライ2020 in Tokyo 最終日の12月20日、
最終公演に初参戦したのである。

これはその備忘録的なレポートである。

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2020年3月。連れに言われるがまま応募し、見事当選。(連れは落選)
しかし当選したはいいものの、例の感染症によって一時開催が危ぶまれる状況になった。
運営の努力のおかげ(?)で払戻し再抽選などを経たのち、徹底した感染対策の中無事に開催される運びとなった。


当日。
まず、席が最高だった。
SS席というだけでわりとすごい(らしい)のに、ど真ん中。
ちょうど目の前にミクがくる。
中央最前にある撮影用カメラの真ん前であった。
一席ずつ開けて席が用意されており、1人あたりのスペースは広い(この辺りはコロナのおかげである)。


開演時刻の19時を回る少し前あたりから徐々に手拍子が始まった。
それはあっという間に大きくなり会場一体を包み込んでいく。

「声援は控えて下さい」と事前にアナウンスがあったため声を上げることはできない。


19時3分
心臓に響くほどの重低音、眩しすぎるレーザービームと共に今回出演するボーカロイドたちのテロップが流れる。それぞれのメンバーカラーに合わせて素早くペンライトの色を変えていく。

そのテロップのラスト、HATSUNE MIKUの文字が映し出され、1曲目「太陽系デスコ」が流れた。満を持してステージ上にミクが舞い降りるーーー…

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実はマジミラ初参戦の1週間前、同僚と「今度マジカルミライっていうライブに行くんですよね〜」という何気ない会話をした。

職場の人も友人もボーカロイドに聡い人間は少なく、単語を出したところできょとんとされることもあるくらいなのだが、

その日はそういったイベントがあるというのは知っているという人がいた。

でも。

「だって映像でしょ?それだったら私は他のライブ行くかな〜」

別に肯定も否定もしようがない。一意見として受け入れるべきであるのだろう。
かつての私も2次元のライブと聞いて違和感を感じなかったわけではないのだから。


しかし今自分の眼前に広がるこの光景はなんであろうか。

3次元に劣るものなどどこにあるのだろうか。

確かに実際はスクリーンにミクが映し出されているだけなのかもしれない。


けれどそこに。


確かにそこに初音ミクは存在するのだ。

開演前、「君は(初音ミクを知ってから)本物のミクに会うのがはやすぎるよ〜」と初音ミク歴10年の連れが笑っていたが、

そうなのだ。彼らにとって今私の目の前にいるミクは「本物」なのだ。

あくまで(2次元なので)概念的存在とも捉えられるが、それが何だというのだ。
ミクはそこにいて歌っている。
それだけを我々が肯定すれば初音ミクは初音ミクとしてこの世に存在できるのである。


少々脱線するが、そもそも私たち人間だって突き詰めれば概念的存在である。
人間という器こそあれど、物心つく前につけられた名前で呼ばれ、
生活をしている。

我々は自分が自分であるという証明を自分ですることができない。

誰かに認められて初めて自分が自分であると証明されるのである。



よく知らない普通の人からしたら、二次元のライブで何故こんなにも盛り上がれるのか理解できないのだろう。

しかし我々は概念でしかないその存在にどうしようもなく魅了されてしまう。

曲を作るボカロPも生演奏するバンドメンバーも
そして我々も。
この会場はみんなの初音ミクに対する「オモイ」で溢れている。



ミクがステージ上を走り回り歌い踊る。

マジカルミライに参戦することが決まってから約10ヵ月。

しっかり予習はしたつもりだ。
この1年で何をたくさん聴いたかと問われれば、ボカロであると胸を張って言える。
大丈夫。セトリは頭に入っている。


ミクに合わせてオタクたちが舞う。
きっと歓声を上げたいだろうに我慢して、拍手喝采で応える。


体温がなくても 存在しなくても 
君が存在を感じてくれたら
嘘でも嬉しかったよ 嘘でも嬉しかったよ  



このライブ自体がそれぞれの「オモイ」でできている。初音ミクもマジカルミライもオモイの結晶なのだ。

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公演が終わると連れが隣で泣いていた。
連れてきてくれてありがとうと泣き笑いする隣人に思わず笑ってしまった。

またこの場所に来ようと思った。

今度はもっと詳しくなって。
そして好きなだけ声が出せるようになれればいいなと願いつつ。

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