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万引き家族を見て
普段私は、映画を見終わったあと
だれかの感想文や批評、考察を読みに行くことが多い。
なぜなら、映画などをみて、何か深いものをみたと思っても、その何かを自分では上手に言語化できないから。
言語化が得意な人の感想を読み、自分の中の感覚に近い人の文章をあつめて、やっと自分の感想を言語化する……みたいなことをよくやってた。借り物の言語化的な。
けど今回の万引き家族をみて
この映画は、人によってどう受け取るかが大きく違う気がして
安易に検索して安易な感想を読むのは危険というか、勿体無いような気がして。
とりあえず自分で文章を書くことに。
テーマとして、貧困、家族。
最初は彼らの暮らしを見て嫌悪感を感じて、私の人生のステージ的に、今必要な作品じゃなかったかもなと思ったりもして。
けれど、彼らの共にいる姿をみると、自然と嫌悪感はなくなって。
花火の見えない花火大会のシーンには何かわからない涙までながれて。
海のシーンは本当に幸せで。
見終わった頃には、必要な作品じゃなかったかもなんていう失礼な感覚も全くなくなって。
うまく言語化できていなくても、凄い映画であったことは感じたのでこうして書いているわけだ。
家族ってなんだろう。貧困による歪み、ねじれは最後まであって切なくて。
けど「楽しかった」って言葉がすんと心に入るくらいに、彼らはいい家族だった、と思う。
是枝監督は、この映画以外でも家族をテーマに描いているらしい。興味が湧く。
樹木希林さんのすごさ
私は樹木希林さんという役者が本当に好きで、この人に凄み、ものすごい価値を感じている。
この映画を見る前からそう。
樹木希林さんが出ているから、見ようって思うことが結構あった。
にしてはこの映画見るのが遅くなったのだけれど。
その樹木希林さんが今回、是枝監督に対して、「珍しくあなたが肉体を撮ろうとしているから、私は入れ歯を外して髪を伸ばして参加をするわ」とおっしゃったらしい。
それを読んで、あ、私がこの映画に感じた凄さって
「限りなくリアルな肉体、人間が描かれていること」なのかも、と思って。
貧困の中で、人がどう生きているか、
本当の貧困を私は知らないから想像できていなかったけれど、こういう方々は、日本に本当に少なからず存在するのではないか?
少なくとも、私の住むタイには近い生活はありそうだし、これは遠い知らない世界の話ではない気がして。
家族という全体のバランスと、それぞれの関係性もリアルだ。
夫婦のようなふたり、親子のようなふたり、おばあちゃんと孫のようなふたり、兄弟のようなふたり。
どの関係にも、美しくて愛しい時間が確かに存在し、そして暗くて後ろめたい歪な関係もまた存在する。人間だな。
あえて登場するであろう血のつながった家族で描かれるのは、
妹の名前を源氏名として使う皮肉、「産みたくて産んだわけじゃない」という言葉や虐待。
途中で出てくる一般的な裕福な家庭のほうこそ歪みのように感じて奇妙だった。
血のつながり、心のつながり、身体のつながり、お金のつながり、そして犯罪のつながり。
「何でつながってるの?」
という問いはこの作品の大きなテーマな気がするな。
心で繋がれるのが一番美しく、うしろめたさも、歪さもなく、きっと理想。
けれど血が繋がっていても、心で繋がれるとは限らない。
様々な家族の形がある、というのは
言い換えれば
様々なつながり方がある、ということなんだろうな。
どんな環境であっても、貧困でも富豪でも、心でつながれる人の存在が人生を豊かにすることはきっと同じで。
映画の外の世界でも様々なつながり方があるのは事実なので、
心でつながれるひとを大事に、そんな人たちとの時間を大事にしたいね。
ということで、初めて感想文みたいなことを書いてみたのでした。おしまい。