ファーストパスアイソレーションの不成功は、肺静脈隔離の耐久性および心房細動アブレーションの成績に関連する

Journal of Arrhythmia. 2021;37:1468–1476.
Absence of first-pass isolation is associated with poor pulmonary vein isolation durability and atrial fibrillation ablation outcomes
ファーストパスアイソレーションの不成功は、肺静脈隔離の耐久性および心房細動アブレーションの成績に関連する
Yuichi Ninomiya MD, PhD,Koichi Inoue MD, PhD背景
肺静脈再伝導は心房細動(AF)再発の主な原因である。本研究では、ファーストパスPVアイソレーション(PVI)が手技中のPV再伝導頻度および心房細動アブレーションの成績に及ぼす影響を検討することを目的とした。

方法
本レトロスペクティブ研究は、2015年1月から2016年10月の間にオープンアイリゲーションコンタクトフォースカテーテルを用いた初回PVIを受けた薬剤抵抗性AF患者446例(男性370例、64±10歳)を対象とした。 ファーストパス PVIがPV再伝導およびATP後の休止期伝導に及ぼす影響を検討した。

結果
ファーストパスPVIは同側PVの69%(617/892)で達成され、そのうち134(22%)のPVで手技中のPV再伝導が観察された。この値はファーストパス PVIが出来なかった場合の値(50%、138/275)より有意に低かった(P < 0.0001)。同側2PVのうち少なくとも1PVにおけるfirst-pass PVIの有無により、first-pass群(n = 383, 86%)との非first-pass群(n = 63, 14%)の2群に分類された。2年心房細動非再発率はファーストパス群が有意に高かった(75%対59%、ログランクP = 0.032)。心房細動のアブレーションを再度実施した78例において、2回目の治療でのPV再接続率は、1回目の治療でファーストパスによる隔離が出来たPVで有意に低かった(34% vs 73%、P < 0.0001 )。

結論
first-pass PVIが出来ない場合、PVの自然再伝導および休止伝導の頻度が高く、アブレーションの成績の悪化と関連していた。First-pass isolationはPVIの耐久性を向上させる有用なマーカーとなりうる。

考察
我々は以前、平均CFが高いとアブレーション時間は短縮されるが、アブレーションの結果は改善しないことを報告した13。CFモニタリングが心房細動アブレーションの臨床結果を改善できないのは、エネルギー供給中のカテーテルの安定性に関する情報がないことや高周波アブレーションの強度が一定でないことが原因であると思われる。そこで、我々はVISITAGによる心房細動誘導アブレーションの有用性を示し6、カテーテルの安定性とアブレーション強度のリアルタイムモニタリングが病変の完全性を向上させる可能性を示した。

現在、FTIに代わるものとして、アブレーションインデックス(AI)を用いたVISITAGが使用されている。AIは、CF、パワー、時間を重み付けした式で、犬の心室における病変の深さを高い精度で予測することができる。興味深いことに,AIを用いたVISITAGによるFPI発生率は90%以上と報告されている14。FPIを達成するためには,FTIの代わりにAIを用いたVISITAGを使用することが望ましい。

2017 HRS/EHRA/ECAS/APHRS/SOLAECE expert consensus statementでは、初回PVI後20分間のPV再伝導のモニタリングが推奨されている15。しかし、以前は初回PVI後60分でも孤立PVの10%でPV再伝導が検出された5。ここではFPI達成PVの再伝導率は低く、PV再伝導率とATP投与におけるDC(dormant conduction)率はそれぞれ14%と9%とされた。PV再伝導率は、AIによるVISITAGの出現でさらに低下した。したがって、first-pass PVIを有するPVでは、最初のPVI後20分の待ち時間は必要ない可能性がある。FPI のない PV では、PVI の質が悪いと考えられ、PV 再接続率が比較的高いため、待ち時間を含めることが適切であ ると考えられる。さらに、FPIのないPVでは、PVIの完全な隔離が達成されたとしても、PVIの耐久性を向上させるためには、残存ギャップ部位の周囲に追加で高周波通電を追加することが望ましい。