【ポニョ考察#02】OP曲「海のおかあさん」歌詞をみてみよう-崖の上のポニョ
ポ~ニョポニョポニョさかなのこ🎵のED曲は超有名ですが、今回はOP曲のほうの歌詞に注目してみます。 映画の主題をはっきり表している部分ですね。
「海のおかあさん」の作詞は、宮崎駿監督と覚和歌子さんの連名です。
『千と千尋の神隠し』で「いつも何度でも」の作詞を担当した覚和歌子さんの詩集『海のような大人になる』(理論社)の中の「さかな」という詩に宮崎駿監督が感銘を受けて作詞をした、ということだそうです。
歌詞の一部を引用します。
ずっと昔とは、いつか? お前とは、誰か? というのがポイントです。
歌詞に出てくる海ゆりという言葉が大きなヒントです。
ウミユリとは、海底に生息する棘皮動物です。植物のようにも見えますが、
ウニやヒトデの仲間です。
ウミユリは生きた化石もといわれ、5億年以上前から現在まで、あまり変わらない姿で海に暮らしています。
2億5千万年前ごろの地層から化石が多く見つかるようですが、最古の化石はカンブリア爆発のころだそうです。
つまりウミユリが揺れる海というのは、いまから数億年以上も前である可能性があります。
ずっと昔に海で暮らしていたが、今は暮らしていないお前とは?
人間を含め陸上に暮らす動物は、5億年前にさかのぼれば祖先はみんな海に住むお魚です。
おそらくお前とは、映画を観ている私たちのことです。
映画を観ている人たちに向けて、数億年前にはお前も海の魚だったんだよ、と歌っているわけです。
覚えていますか、といわれても数億年も昔のことを覚えているはずはないんですけど、ここでいう「覚えている」は頭の中で思い出せるような情報のことではなくて、身体に残っている痕跡のことです。DNAの記憶ですね。
「海のおかあさん」というタイトルなので、グランマンマーレが陸で暮らしてゆく娘のポニョに歌いかけている、という解釈もできますが、実は同じことなのです。
ポニョは、人間の身体に残る魚的な性質のメタファーになっているからです。
陸の生活に適応して久しく、器用に言語を使いこなし、あぶくの言葉も海に暮らしていたこともすっかり忘れてしまっているけれど、すべての生き物はかつて共に暮らした兄弟たちであり、私たち人間の身体には今でも魚だったころの痕跡がたくさん残っていることを覚えておいてね、というのがこの歌の内容だと思います。
そして映画『崖の上のポニョ』で宮崎駿監督が子どもたちに伝えたいメッセージでもあると思います。
ポニョと一緒に暮らす、ずっと好きでいる、ということは、人間の中の魚っぽさと折り合いよくやっていこうということですね!