心因反応
きみが去った後のぼくは
ひとであることをがんばれなくなった
ずっと強烈な頭痛を抱えて
それを薬でごまかして
仕事をすることでこの世界と繋がっていたけど
ある夜 きみの面影を思い出し
夢の中で君に会えた気がして
起きたらもう身体は動かなくなっていた
食事もできず 立ち上がることもできず
ただ目から涙が流れ続けていた
紹介された病院で
たった四文字の病名が付いた
紙切れ一枚で仕事も休んで
ぼくはひとりただ広い絶望の波間を
ぷかぷかと浮かんでは沈みを繰り返した
それから程なくしてうたうのをやめた
ただ社会の中で動く小さな歯車になった
今を積み重ねるだけの換えがきく歯車だ
理由を失ったぼくは
言葉とともに全ての意味も色も失くした
きみがいなくなったこの世界で
ぼくの存在する意味はもうなかった
ぼくの身体は抜け殻になったまま
ただきみが遺した「生きて」という言葉だけが
この生命をうっすらと引き延ばす
(2023.10.8.10:50)