見出し画像

奥さんはイタリア人じゃないの。

奥さんはスリランカ出身だ。
東京の中野で出会ってから結婚して4年目、綺麗でユーモアのセンスもある。とても良い”間”で私のしょうもないボケに突っ込んでくれる。奥さんもボケたがりで面白いところが好きだ。

私の教えたがりな面倒臭いところも突き合ってくれる。(同棲し始めたばかりの頃、映画の中でヤクザが出てきたので、日本のヤクザの成り立ちについてホワイトボードを使って説明した時も私の一方的なおしゃべりに付き合ってくれた。)
いつもごめんね。

2024年8月現在、スリランカの実家に4年ぶりに帰省している。奥さんはスリランカ人から英語で話しかけられたり、「スリランカ人だと思わなかった」と言われるぐらいスリランカ人の中では肌の色が白い方のようだ。

先週もコロンボの映画館(Majestic cineplex)に奥さんと行った時にエレベーターアンクル(エレベーターおじさん)に奥さんが"Fourth floor, please. "と伝えたら”Quattro?(イタリア語)”と聞き返された。

(・・おお、イタリア人だと思われてるのか)

もし妻がイタリア人だったら異国で母国語を使ってくれるその細やかな優しさにチップで答えるべきなのだろうか。

"Yes, please"

エレベーターアンクルはいろんな言語で
数字を言えるのだろう

奥さんと一緒にスリランカにいると改めて奥さんが日本人の私と同じように外国人だと思われていることに驚く。

そんなことがよくある。

四年前にスリランカに婚約のため来た時はちょうどコロナでcurfew(外出禁止令)の真っ只中だった。

奥さんの実家の周りの近所の人からは「イタリア人と中国人がいる」と警察に通報があってわざわざ警察が見に来たのだ。(来た警察官もめんどくさそうだった。)

2020年の3月当時はヨーロッパの中でもイタリアで感染が拡大していたのもあるのかもしれない(ちなみに私はスリランカで中国人だと思われることが多いので当時子供から「コロナ!」と言われたこともあった。)

通報した近所の人が本気でイタリア人だと思っているとは思えない。
奥さんの実家はここで子供の時から知っているのになぜそんなことをするのだろうか。

裕福であるということに対して僻みややっかみでそういうことをしてくるのではないか。

通報があった日以降も、仕方なさそうに警察が家の門の外から私たちが外出をしていないか観にくるというイベントが定期的にあった。

奥さんの実家は近所と比べると比較的裕福な暮らしをしているのは事実だ。でも決して嫌味なお金持ちではない。

人間性も素晴らしいし、自分達の社会における責任を行動で示すことができる、私が知る限りとても温厚で優しい人たちだ。

特に立場の弱い人や裕福ではない人たちに迷わず手を差し伸べるところが私はとても好きだ。


私のスリランカの家族の優しいエピソードを紹介したい。

2004年の時にインドネシア共和国スマトラ島で大きな地震があった。その津波はスリランカにも甚大な被害を与えた。
3万人余りの死者が確認され、4,200余名が行方不明者とされている。約8万世帯が家を失い、20万世帯が被害を受けた。

そんな中、スリランカのお父さんとお母さんは津波の被害のあと友達の家族20人以上を家に招いて、衣食住を提供し生活を共にし生活を立て直すまで支えた。

家を流されてしまったり命からがら逃げてきた人たちをほっては置けない。

優しさとは当事者の遠くから何かすることではなく、一歩踏み込んで自分も当事者と近い立場でサポートすることだと思う。覚悟がいることなのだ。

そんなNoblesse obligeな行いができる素敵な家族だ。

だからそんな素敵な奥さんの家族を愛しているし、だからこそ家族に対して失礼な言動をしてくる人に対して私はこれからも腹が立つのだろう。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?