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マンホール聖戦を全国で広める勤続27年のベテランが目指す未来【Interview.02】

日本鋳鉄管で働く社員を紹介するインタビュー企画の第二弾。今回はユニークな肩書を持つHさんを紹介します。三島市のマンホール聖戦を成功に導いた立役者であるHさんは、Fracta社の技術(以下:フラクタ)を事業体に提案する仕事もしています。
 
多様な部署を経験したキャリアを持つHさんにマンホール聖戦とフラクタの仕事について聞きました。

会社と共に歩んできた27年間


– Hさんは新卒で入社したのでしょうか –
 
中途入社です。平成7年に入社したので、今年で27年になります。最初は工場に配属となり、品質保証部からキャリアをスタートしました。その後、通信・電力や下水の蓋の営業を15年ほど担当しました。更に、関連会社である日鋳商事(株)に出向していた際には、鋳鉄管以外の水道用資器材について学ぶことができました。
 
日鋳商事(株)で何年か働いたあと、鋳鉄管の営業職を経て、2021年の10月に「社長付」というポジションに就きました。経歴はざっとこんな感じです。
 
– 27年、大ベテランですね –
 
そうですね。しかし、長く働いている私でも、最近は、顔と名前が一致しない社員の方が多くなってしまいました。三百人の従業員が支えている小規模な会社なんですけど、たまに工場に足を運ぶと若手の知らない顔ぶれに会うことが増えました。
 
社長付、あまり聞き慣れない役職です –
 
何をする役職なのか、自分でも最初はよく分かりませんでした。イメージとしては「特命係長」のようなポジションです(笑)。つまり、社長の補佐をする役割ですね。名刺交換の時、私の肩書を見た方はだいたいツッコんでくれるので、打ち解ける雑談のネタとして使わせていただいてます。実は、社長付は私だけでなく社内にあと二人いるんですよ。
 
– 具体的にどのような仕事をしているのでしょう –
 
主な仕事は二つありまして、一つはマンホール聖戦の運営です。Whole Earth Foundation(以下:WEF)と共働で、市町村で開催するマンホール聖戦のイベントの立案から開催まで行っています。
 
もう一つは、AIと環境ビックデータを活用した水道管の劣化診断技術を水道事業を管轄する事業体に提案しています。ちなみに、Fracta社は日本人がアメリカで起業した会社で、フラクタの劣化診断技術は日本よりもアメリカでの実用が先なんです。

マンホールの蓋から見えてきたもの


– マンホール聖戦にはいつ頃から関わっているのでしょうか –
 
初期の頃から関わっています。加賀市での開催までは、WEFをサポートすることが主な役目でした。三島市のイベントからは私ともう一名の社長付の社員が中心に加わって、事業体向けのマンホール聖戦を広げる活動を行っています。
 
現在は次の開催に向けて調整を進めているところです。夏頃にできるか、秋になるのか、いずれにせよ、イベントのチラシ作成や対象とする蓋の絞り込みなど三ヶ月ほど準備期間が必要なので、なかなかタイトなスケジュールです。
 
– マンホール聖戦の開催は自治体にとってどのようなメリットがあるのでしょう –
 
加賀市は下水道課の人手が足りず、街中のマンホールの状態を把握できていませんでした。ですから、情報を収集してマンホールの管理に役立てたいという要望があった、ということです。蓋を開けてみたら、市内にある8千基の下水道マンホールの写真がわずか1. 5日で集まったので、加賀市にとってメリットがあるイベントになったと思います。
 
一方の三島市は、蓋の状況を把握できたことに加え、市民への下水道PRと市内外へ三島市の魅力を発信できたことが主なメリットです。

三島市は、市内のあちこちから富士山の恩恵を受けた水が湧き出る名水の土地です。蛇口を捻ればミネラルウォーターのような美味しい水が飲める。その水を支えているのは、自然の恵みだけではありません。実は、三島市は下水道の普及率が静岡県でトップクラスなんです。下水道網が整備されているおかげで汚い水が清流に流れ込まない、だからいつでも美味しい水が飲めるということですね。普段、下水道が注目されることは滅多にありません。このイベントを通して、市民の皆さまに下水道の大切さを知ってほしいという三島市の願いをお伝えできたのではないでしょうか。
 
それと、上位の方には表彰させていただいたのですが、表彰者10人全員が三島市民だったのには驚きました。また、小学生が二人、表彰者の中にいたことも印象的でした。

三島市の事例は、PRの観点からも注目です。三島市には地元のメディアへの働きかけや、市長自らが先頭にたち、宣伝にご尽力いただきました。そのおかげで、宣伝広告費はほとんど掛からなかったと聞いています。この事例は、今後の自治体PRのヒントになるではないでしょうか。
 
– マンホール聖戦の今後の展望を教えてください –
 
これからも様々な地域でマンホール聖戦を開催していきます。「鉄とコンクリートの守り人」がプレイできるのはブラウザ版のみでしたが、今年の4月にアプリ版へ移行しました。ブラウザ版には無かった新機能も追加されましたので、さらに多くの方にゲームを楽しんでいただきたいですね。
 
それと、今までは下水道の鉄蓋の収集がゲームの主なミッションでしたが、今後は地表にある蓋、例えば水道や電気・ガスの蓋もゲームのミッションに追加していきたいです。できるだけ早く、全ての蓋を収集するマンホール聖戦を実現させたいと考えています。

マンホール聖戦を持続可能な取り組みにしていくためには、マネタイズの仕組みを確立することが欠かせません。社会貢献とマネタイズをどう両立させていくのか。そこが今後の課題です。

狙うは関東!フラクタの営業をして感じたこと

– Hさんの業務のもう一つの柱、フラクタとの取り組みについてお聞きします。フラクタは日本でも広まっていますか? –
 
はい、日本でも30を超える事業体でご採用いただいております。当初は人口が少ない市町村の事業体で採用されていましたが、最近では中核市の事業体も取り扱ってくれるようになりました。
※中核市:政令指定都市を除く人口20万人以上の都市
 
地域別に見ると、兵庫県や愛知県などの西日本を中心に広まっている実績があります。一方、関東は実績が少ないので、関東でもフラクタを広めることが私のミッションです。
 
– 現状の課題を教えてください –
 
弊社が扱う製品の営業はほとんど経験してきましたが、関東のフラクタの営業に、やりにくさを感じています。技術力の高さに比べて知名度がまだまだ高いとは言えないこともあり、なかなか受け入れてもらえない現状があります。飛び込み営業をしながら、日々もがいています。
 
少し前になりますが、関東のとある自治体でフラクタの話をしたとき、担当の方がこんなことを言っていたんです。「良い技術なのは分かった。だけどうちの県で最初に採用するのは抵抗がある」。と言うことは逆に、導入事例があれば関東でも加速度的に受け入れてもらえるかもしれない、そう思った出来事でした。
 
– 今後チャレンジしてみたいことはありますか –

デジタル技術を活用した新しいサービスを独自に開発したり、世にまだ知られていないデジタル技術を発信したりしていくことです。これらの取組により、当社が業界のDX推進リーディングカンパニーとなり、“ものづくり“以外で事業体とのパイプを太くしていきたいです

いずれにしても、トライアンドエラーを繰り返しながら泥臭く前進していくしかないと思っています。
 
 
※BS朝日「つながる絵本〜for SDGs〜」で、林さんがマンホール聖戦について語りました!

 

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