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あめんぼ/ameusa
2020年10月10日 21:25
短編小説です。フィクションです。すっかり鼻を抜ける匂いが単純になり、目に入る光量が少なくなる。目の前を通る風の色も透き通ってきた頃のことだった。平坦になったその景色の間に、傲慢にも割り込んでくる香りが鼻をついた。甘ったるいその香りは、どうしてか人を惹きつける。その香りの根源に居座ったまま、その場から動けなくなっていた。日が沈みかけているのを横目に、目の前のベンチに腰掛けた。昼間なら