Part5:展示は作品を魅力的にする舞台装置
Part4:私のブースに来て!告知!では、事前告知の大切さを熱弁させていただきましたが、ちら〜っとPart2ルート❶の❺展示準備で私が記載したグサっとくる言葉を覚えているでしょうか?
「SNSで告知を見たときは魅力的に感じたのに、実物見たら買う気が無くなった…」
作品だけではなく、作品を魅力的に見せる展示をできるかどうかで来場者の感想を左右します。今回は、ブースを作るときに何を考えているのか?を解説していきます。
❺-1:販売方法はどうする?どんな種類がある?
さあ!作品はできたし告知もOK!じゃあどんな風に販売しようかな?と考えると思いますが、ただ在庫を什器に飾って終わりかな〜。なんて時期尚早!!デザフェスでの販売方法はいくつか種類に分けることができます。
・自分の作品に適した販売方法はどうやってわかる?
デザフェス以外のイベントでも販売をしてきた私ですが、とにかく
まず考える→参考を見つける→自分で検証する→反省する(最初に戻る)
を繰り返すしかないと思います。どの有名ブランドも、小さな商店も試行錯誤をして売れるような道筋を見つけた結果を見ている。な気がします。なので、誰でも最初から爆発的に売れていたわけではないと思います。
作品の魅せ方は作家が一番わかる部分なので、作品を客観的に見たときにどういう販売方法をすればいいのかな?と考えつつ作品作りをするといいのかなと思います。
・販売方法の種類とメリットデメリット
作品の販売方法はいくつか種類があります。ざっと書き出すと
在庫を魅せる型
サンプル展示型(にちた屋さんはこれです)
ランダム型(ガチャガチャ)
ワークショップ&カスタム型
受注生産型
1.在庫を魅せる型
机に什器などを置き、作品を並べます。
【メリット】
・お客さんの滞在時間を伸ばすことができる=人気のお店のように見える
・最もポピュラーで参考にできる対象が多い
【デメリット】
・在庫出しをしなければならない
・盗まれやすい、盗まれた時にすぐ気づくことが難しい
このデメリットに記載した『盗まれやすい』というのは、実際にデザフェスで盗まれた作家さんが今まで何人もいます。ちなみに私も盗まれた(サンプルですが…)経験有りです。対策としては防犯カメラを設置する(フェイクでも)と安心できます。盗まれ対策はぜひ行ってください。
2.サンプル展示型
壁面等(もちろん机でも)でサンプルのみを展示し、お会計時に在庫から商品を渡します。
【メリット】
・盗まれる心配はサンプルのみ(B品をサンプルに使う)
・在庫の品出しをしなくて良い
・壁面に展示するなどで目線を高くすることができる
【デメリット】
・1.在庫魅せる型がポピュラーなので、在庫がないのかと勘違いされる
・販売のシステムを自分で作る必要がある(周知も含む)
・完売情報を常に更新して周知させる必要がある
私の作品は特に種類が多く、在庫を品出しするのは効率が悪いので、あえてこの方法にしています。
販売方法のシステムは、注文用紙を用意し、アクリルキーホルダーにナンバリングをした上で、購入した番号に蛍光ペンで線を引いてもらうシステムを導入しています。写真の卓上にあるのが注文用紙ですね。
告知画像のように、私のブースではこのような販売方法をとっていますと事前に周知させつつ、当日はひたすら声掛けアナウンスを行なって補います。
ちなみに、当日はお客様同士で買い方をレクチャーしてくださった(知り合い作家曰く)方が多かったそうで、本当にファンの方に支えられています。ありがとうございます!
3.ランダム型(ガチャガチャ)
これが結構最近増えてきてて、自前のガチャ機械を持ってる人(私も含む)が多いです。
【メリット】
・在庫に偏りを出さなくていい
・ガチャガチャをする体験を楽しんでもらえる
・何が出るかワクワクお楽しみ!で何度も回す人が多い(中毒性がある?)
【デメリット】
・カプセルが嵩張る→カプセル回収方法でもセットするのに時間がかかる
・機械がたまに不調になるので常に見ている必要がある
近年のガチャガチャブームもブーストされて、とてもいい販売方法だなと思ってます。私は専用コインで回すタイプなのですが、BANDAI等の中古の機械(値段設定でき硬貨を入れるタイプ)の人もちらほらいらっしゃいますよ!
ちなみに私のガチャガチャ機械はこちらです。見た目に惚れて買いました。ポップ系作家さんにはうってつけ!
4.ワークショップ&カスタム型
その場で選んで組み立てるタイプの販売方法です。
【メリット】
・常に人が鎮座する状態を作れる
・体験する楽しさを提供できる
・ゆっくりお客様と喋ることができる
【デメリット】
・時間がかかるものは回転率が落ち、効率が悪い
・常に説明しなければいけない
・ワークショップ・カスタムを来場者がそもそも求めてない?
作家側としては、ワークショップ・カスタム型はその人の好きや、自分の好きを交えてお喋りできるのでとても有意義な時間にすることができるのですが、1日8時間のイベントやるには赤字覚悟で挑む必要があるかなと思います。第一に人に教えるのが好き!というタイプは向いてます。
5.受注生産型
その場で在庫を持っていかず、注文&支払いをその場でしておき、後日郵送で届けます。
【メリット】
・極端な話、在庫なし・サンプルのみでOK
・会場に入れる荷物が少なくなる
【デメリット】
・イベントというライブ感がなく、来場者の購買意欲が下がる
・受注生産のシステムをしっかりしないと、トラブルの元になる
私の主力作品(100TYPOGRAPHY)はある程度在庫を作るのですが、在庫がなくなった場合の対策として受注生産を併用して行いました。結果的に通販で対応した方が安全・効率がいいので、イベントでの受注生産型は現在使っていません。
ちなみに、にちた屋さんの
イベント時の使用頻度は
②サンプル展示型>①在庫を魅せる型・③ランダム型>④ワークショップ・カスタム型
通販での使用頻度は
⑤受注生産型>①在庫を魅せる型>④ワークショップ・カスタム型
です。売る場所・イベントで変えていく必要があるのですが、やり方さえ身に付けられれば、イベント毎に臨機応変できてやり甲斐があります!
❺-2:ブースのイメージを書き出そう
販売方法と一緒に考えて欲しいのが、ブースの展示イメージです。どこに何を配置する?寸法は?と色々考えることが多いですが、ここをどれだけ詰められるかで準備の手間・当日の展示スピードが上がり、次に活かす改善点を持つことができます。ブース配置発表前のラフスケッチをお見せします。
私がラフスケッチを描くときに意識していることは
ブース内に備品・荷物が収まるか
ブース内の来場者の動線
ブース内に入ってもらった時にストレスを感じないか
会計スタッフが楽するためには
になります。私の展示方法はとにかくお客様をブース内に入れることが前提の作りになっているので、動きの混乱を招かないために動線を作ります。ライフスケッチなので今後の公式からのブース配置アナウンスで変えること前提である程度決めておきます。
❺-3:ブース配置から予測と展示計画を作る
ブースが公式で発表されてから、本格的にブース内の配置・展示を決めていきます。今回の配置はラフスケッチから変更することはなかったので、上記のラフスケッチを元に展示計画を作ります。
・周りの状況を見て、ブース配置から流れを予測する
デザフェス59では、経験したことのないフードエリア前になってしまい大変予測が難しかったです。事前に予測したことは
フードエリア前だから空間が開けてる
→遠くから目立つようにすると人が来てくれる
→フードエリアにいる人もターゲットにできる
→位置の宣伝がしやすいから、なおさら目立つようなブースにしたい南館1Fからの流れも恐らくいいはず
→南館1Fから来る予定の人にはフードエリアを中心に伝達しよう角スペースゆえ、通路とブースを区切らないと通り道にされる
→デザフェスvol.58で実際に通路にされて悲しかった
→ここはお金をかけて、ラフスケッチ通りL字の壁面を借りよう
→壁面で区切るので、左→右に流れるお客様より、左←右の流れを意識しよう。展示待機列どこに作ろうかな
→テーブル前の通路は広いはずだから、そこに展示閲覧列を作ろう
→会計は2列でなるべく短くしよう
を考えていました。特に私はM×4スペースにし横幅を作ることで動線を長く作り、見てくれる人を物理的に多くするようにしています。
とにかく、どんなスペースの大きさでも、作品→会計の流れを意識するだけですごく見やすい展示になるはず。
・人対作品を意識して展示計画を立てる
ここで突然の日本人の平均身長を記載するのですが、
男性:171.5cm
女性:157cm~158cm(まさるは156cm)
になります。私のお客様は8割〜9割女性です。なので、女性の平均身長の目線の高さを意識して展示計画を立てます。自分がこれほど平均身長に近い身長でよかったと思ったことはありません。自分の目線の高さを参考にすれば良いのですから…
デザフェス備品で借りれる壁の高さが210cmになります。なのでよく見せたい部分は地面から90cm~160cmぐらいに収めるのがちょうど良いです。
え!90cm以下のスペースが勿体無いじゃないか!と思ったあなた。
そう思っていた時、私もありました。初めて出展したときは地面ギリギリまで飾っていました。しかしそうすると見たい人はどうするか?
しゃがみ込みます
しゃがみ込むとどうなるか
人間の体積が多くなり、空間を圧迫+後ろが通れない
という事態に陥り、私のブースは大パニックを起こしました。これは小池百合子氏もびっくりの密!密!密!状態で、当時はご不便をおかけいたしました。という反省点から、ギリギリ人がしゃがみ込まなくてもいい高さに展示をします。
特に私の作品はじっくり見たいタイプのお客様が多いので、お客様が一番楽な体制で長時間見てもらえるように工夫しています。
卓上(机)の展示もそうです。できれば目線の高さが高い方が、楽な姿勢で多くの人が同時に閲覧できます。しかし、デザフェスでは机の足の高さ底上げすることは禁止しているので、卓上部分で高さを上げる必要があります。
上記の写真のときは、約一ヶ月ほどの展示でしたが特に問題もなく会期を乗り切りました。お祭りのお面の出店みたいで可愛くないですか?
また、底上げできそうな道具も見つけたのでリンクを…
山善さんは私の激推し生活雑貨店なのですが、特にインスタを見てると、この道具もしかして什器に使えるかも?ってアイディアが湧いてくるのでぜひお勧めです。
❺-4:自前or専用備品の使用する際の注意点
展示計画が決まったら、備品の注文をしておきます。特に遠征民は机・壁面などの備品を借りること前提で❺-2のラフスケッチを書いておくと後々に楽になります。以下の画像は❺-2のラフスケッチ・❺-3の展示計画を元に備品を注文しました。
↑現在vol.60のレンタルが始まっています
・備品を借りる前・使う前に、ブースの使い方の基本とトラブル
まずは、Part❶-2でお伝えしたブースの使い方。について。とにかく自分の購入したブース内で全てを完結させること。それを前提に備品を借りたりします。
特に注意するのが、出入りするためのスペースを確保し忘れて、隣の人のスペースを使ってしまう。これが一番X(旧Twitter)でも問題視され、注意突起ポストが見られます。自前で机を用意する方は特に気をつけてください!
また、これはルール違反だろ…と思ったら遠慮なく運営に知らせて運営から注意してもらうようにしてください。当人間で解決できるのには限界がありますし、後日SNS上だけで嫌だった〜!!と後出しするのも、なんか違うな…と個人的には思うので、注意された側は注意されたらすぐ改善してください。
・壁面の強度と反りへの対策
壁面を借りたい!という人向けに、壁面がどういう素材でできてて…注意点はこれで…というのがわかっていれば安心して展示できるだろう!と思い、ずっと壁面を使い続けてきた知識をここで授けましょう…!
壁面はベニア板で、基本的に画鋲・ネジなど展示するための道具を使ってOKですし、壁面にイラストを書いてもOKです。
が
正直、画鋲を素手で留めるのは、手がとても疲れます。ので大量に飾る場合には本当にお勧めしません。本当にお勧めしません。住宅の壁面をイメージして刺したら跳ね返されます。
私は基本的に電動ドリル(コードレス)を持っていき、ネジでガンガン止めていきます。その方が強度が上がるし、スイスイ展示できます。
また、展示している作品の重さでどんどん内側に反ってきます。これは、運営に当日相談したら反りの補強などをしてくれるそうです。(又聞き状態の情報ですが)特に運営から補強できるとかそういうアナウンスはありませんので、当日気になったら相談してみる方がいいそうです…
❺-4:ワクワクする展示をするためには?
冒頭でお伝えした
「SNSで告知を見たときは魅力的に感じたのに、実物見たら買う気が無くなった…」
はなぜ起きるのか?
私は、SNSの写真では「ワクワクする」「実物を見てみたい!」という気持ちにさせるように考えていることを、実物の展示でも同じようなそれ以上の効果をさせるようなものできているか。が原因で起きるのではないかと思います。
展示はその作品の世界観を増幅させる舞台装置です。
どうしたら、ワクワクしてもらえるか?
よりよく魅せることができるか?
自分の一方通行の気持ちじゃなくて、
見た人と自分の作った作品を共有できるか?
をじっくり考えていけば、より多くのお客様が手に取ってくれると思います。って言っても、私も在庫を魅せる型の展示は苦手意識が高くて、毎回試行錯誤しています。回を重ねることで、どこかで「これがしっくりくる」を見つけることができるんだと思います。そこも含めて対面イベントの準備を楽しんでほしいと思います!
次はいよいよPart6:遠征民必見!作品搬入出方法になります。今回は私だけの搬入出のやり方だけの記載になりそうですが、後日他の作家さんに取材したりして、追記するようにします!
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