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ギャンブラー&ジェントルマン

「愛と青春の旅立ち」という、当時大ヒットした映画があります。原題は「 An Officer and a Gentleman」。士官と紳士─こっちのほうがストーリーに合ってるし、あの頃にスルーしないで観てたのにナ、と思います。
これ、「Conduct unbecoming an officer and a gentleman(士官や紳士に相応しくない行為)」という文章の一部だそうです。

というわけで。この文章のタイトルですが、「A Gambler and a Gentleman」。
バクチ場や酒場でのふるまい、その他いろいろ。─わたしたちは、日常の些細な所作を、先輩や両親、あるいは小説やスクリーンのスターから学んできたような気がします。
高倉健は食事の芝居を、フランスの名優ジャン・ギャバンを観て学んだそうです。ぐい呑みの持ち方、蕎麦の食べ方、タバコの吸い方─。
余談ですが、鮨は「つまむ」、蕎麦は「たぐる」と言うそうで。「ちょっと蕎麦でもたぐってかねぇか」なんて、噺家に似合いそうですよね。
まぁ、こんな歳になっても、あの人の酒の飲み方はいいな、と思う人が身のまわりにいたりします。なかなかいませんが。

1998年の天皇賞・秋。先輩の知人にテレビ局関係者がおり、サイレンススズカをちょっといい席で応援できるということになり、喜び勇んで東京競馬場ヘ出掛けました。そして眼の前であの事故が起き、骨折、後に安楽死。
そのとき、学生らしき一団が勢いよく払い戻しに駆けて行くのを見かけました。「やった、やった」と騒ぎながら。もちろん気持ちはわかりますが、「良かったね」という気分にはなれない。それが、あの年の天皇賞の、いちばん印象に残った出来事です。

これは最近のことですが。居酒屋で見かけた5、6人の若いグループ。何やらそれぞれが料理と飲み物をオーダーし、それぞれが自分のオーダーした料理だけを食べている様子。これもイマドキ気質かなぁと思いましたが、なぜみんなで少しずつ、いろんな料理を楽しまないのか謎でした。気が楽なのかな。
これは、あの透明板で仕切られた何年間が関係してるんでしょうか。心理学者に教えて欲しい。

写真は、国立のご隠居こと山口瞳の「草競馬流浪記」。この本や、阿佐田哲也の「新麻雀放浪記 申年生まれのフレンズ」など、時間のあるお正月にどうでしょう。
ギャンブラーの矜持、哲学や行儀作法の教科書ではないかと思っているオススメ本の紹介でした。

今年もよろしくお願いします。

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