1人の暮しの発熱ほど心細いものはない。
久しぶりに原因不明の高熱が出た。
朝起きて、喉に違和感を感じた。暖房をつけて寝てたからかなと思いつつ、時間が無いのでバイトへ行く準備をした。私は暖房が苦手で、あまりつけない。身体の節々にも痛みがあったので、一応体温を測った。36.8。平熱が5度台の私にしては少し高かった。
午前中だけ、バイトに入って結局お昼で早退した。バイト先で測ってみると37.4。微熱。強制的に帰らされた。
1日様子を見て、次の日に病院で検査を受けることにした。
ひとり暮らしの発熱はまぁまぁ、かなり、心細い。
帰りにドラッグストアでポカリやら、解熱剤やら、食べやすいものを買って帰った。
一応父に連絡を入れた。明日病院に行きなさいよと心配の電話がかかってきた。家族というのは温かいなと思う。
夜には38.3まで上がり、喉の痛さも増していった。
心臓の音がいつもより速く、大きく聞こえた。どんどん、がんがんと、頭痛が鳴り響いてる。
朦朧とした頭で、以前もこういうことがあったなと思い出す。
あれは、もう1年前。
去年の4月、人生で初めてコロナにかかった。
この時は彼氏から移されたな。
付き合って1週間で2人してコロナ陽性。
今では、厳重でもなくなったが、この時は給付金やら、食料を家まで届けてくれたり、そんな時期だった。
お散歩が大好きな私からすれば、自宅療養は辛く、ベランダからいつも外を眺めていた。
2人とも時間だけはあった。四六時中、通話をしていた。
「ラプンツェルの気分だね」
「外の世界は素敵だね」
そんな会話をした気がする。
こんなにきつくなっても、元彼のことを思い出すなんて。私はバカ。
次の日の朝、元彼に連れていってもらった病院に電話をかける。繋がらなかった。
あの病院じゃない所に行くことに少し寂しさを感じながら、別の病院を探した。
彼が連れていってくれた検査に一人で歩いて行った。
車なんて持ってないし、自転車をこぐ脚力もない気がして、徒歩を選んだ。片道20分。
市販の解熱剤を飲んで少しは楽になった身体だが、すごくしんどい。私の踏み出す1歩は5歳児くらいになっていた。
インフルエンザとコロナの検査をしてもらったが、両方とも陰性。
感覚的には絶対コロナだと思ってたから私は拍子抜け。
陽性だろうが、陰性だろうが、処方してもらったお薬を飲んで休むしかないんだろうけど、病名が特定されないというのは少し怖いものだ。
今日が陰性でも、明日には陽性になることもあるらしい。感覚ではコロナだと思ってるので、きっと明日検査をしたら陽性になるんだろうなと思った。
まだ、高熱は続いている。
さっき測ったら38.8にまで達していた。
去年もこの体温まで上がったな、なんて思い出しながら、1人で解熱剤を飲んだ。
通話をしてくれる相手もいないので、1人でYouTubeを見たり、携帯ゲームをしたりしている。
高熱が出ても、彼のことを思い出すなんて。
早く彼の思い出から抜け出したい。
だけど、忘れていくことに少しだけ、寂しさを感じる。
少しだけね。
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