初めてのお客様
初めて口座開設して下さった有難いお客様は、喫茶店を共同経営されていらっしゃるお二人の女性でした。
お客様の株式買付注文約定後、保護預り料の経費を頂戴する保護預かりか、経費の掛からない株式現物出券か、の御選択は後者でしたから、新規口座開設からの株式買付注文は頂けますものの、残念ながら私の預かり資産にはなりませんでした。
限定軒数エリアでの飛込訪問先で、休憩中の営業マンも複数居る場所でもあり、出来れば避けたい気持ちが湧いてくるのを抑えつつ行き難いところこそ抜いてはいけない、と漠然と念じつつ通っていたお客様でした。
お二人から言われた言葉は「どこでも良かったんだけど、一生懸命通って来るから。」
それと一緒に、「うちに来る人の中にも株屋さんは居て、機会があれば取引して、と言われるし自分の大切なお客様でもあるけど、仕事をサボっている人とは取引したくない。」
自分も少し前は別の喫茶店でサボっていましたし、喫茶店が飛込訪問先にあることに抵抗がありましたので、複雑な感情でした。
そうそう、この嬉しい話を支店に持ち帰った時の新人指導員の反応は「いい話だけど今は断れ。 ネタとして取っておけ。 お前の初商いがそんなもので良いのか。」
そして、副支店長の言葉は「茶ー飲みながらサボっとって見つけたんやろ。」でした。
指導員が新人の私を大きく育てよう、と考えてくれる気持ちは有り難くも、私の返事は「折角通って出て来た見込みですし、お客様のお考えの株価から上がったら注文が無くなります。 お取引は有り難く頂きたいです。」と。
あいも変わらずいきつけの喫茶店に日参して嘘の日報を書き続けながら、既に新規のお客様を開拓している同期社員への意識もあり、未だ何者でもない自分ながら、もしかするとこの支店の全営業職員の中で最も新規先への訪問数と面談数は最多かもしれない、との思いも沸々と湧いてきていた様です。
振り返りますと、活動量に裏打ちされる言動の発露の契機でもあった様に思います。
そのお二人のお客様が私の証券営業のデビューをさせて下さいました。
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