忘れ難いお客様②
飛込訪問にて新規開拓させて頂きました、一見して資産家であり富裕層と分かる豪邸にお住まいの何代も続く企業のオーナー様です。
そして、そのお客様は同業他社に於ける、株式信用取引の大手顧客でした。
何度か訪問させて頂く過程で株式信用取引との確認時点で、入社1年目の私が担当させて頂くレベルの対象のお客様ではありませんでしたが、お客様も私も他の担当者へとの考えは持ちませんでした。
そして、株式の銘柄、売買の別、指値成行などの内容は全てお客様のご判断です。
取引内容から、特に手が掛かりませんため、私はそれまで通りに朝から出掛けて夕方に戻る新規開拓活動の日々です。
あれやれ、これやれ、と兎角、誰かを叱責する上司や新人指導員からは手数料が上がるお客様の導入を喜び褒められますが、私は出会い頭の事故みたいな根気も努力も伴わない成果でしたので、嬉嬉として接客する上司を冷めた心持ちで眺めていました。
株式取引の損益は2分の1ですから、その日は直ぐにやって来ました。
信用取引の証拠金で大きなご入金を頂きましたが、即座に目一杯の建玉で証拠金不足、所謂追証が必要となり、淡々とそのご連絡をさせて頂きましたところ、「入金を数日待て」。
その旨を上司に伝えたところ、当然の如く「ふざけるな。そんなこと認められる訳ないだろ。」と怒鳴られました。
改めましてお客様宅へお訪ねしてルール通りの入金をお伝えしたところ、「俺が電話したら若い連中が大勢来る。あんたみたいな株屋の1人や2人ぐらい・・・・。入金しないと言っている訳じゃないんだから待て。」
支店に戻り上司への報告〜お客様宅への同行訪問も架電も拒否されました。
新人の私にどう対応しろと。
私が架電して上司に代わり一言「分かりました社長。それではいつご入金頂けますでしょうか。」と追証の入金遅延が認められました。
上司はお客様の脅しの言葉にビビっていたのでしょうね。
容易に上がる成果には帳尻が合う代償が伴います。
そのお客様とは出来る限りソフトランディングに努めつつ取引縮小を心掛けました。
今でもご立派な企業として存続されている様です。
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