なりきりチャットの思い出話
なりきりチャットというものをご存じだろうか。
ネットで調べてみると「特定のキャラクターになりきり、キャラを演じて会話を楽しむチャットの通称。なりチャと略す場合もある」との事である。
なりきりチャットには大きく分けて2つあり、1つは既存コンテンツのキャラクターを演じるというもの。もう一つはオリジナルキャラクターを自分で作り演じるというものがある。
実のところ、私はもう学生時代から20年近くに渡りとあるサイトでオリジナルキャラクターを作り、自分で演じるなりきりチャットをやっている。キャラクター自体は変えたりしているがそれ位長くやっているのである。
最初に始めたのは中学生か高校生位の時。当時FFオンラインやラグナロクオンライン等MMORPGが流行りだしていたが月額制な事と家族共有だったPCのスペックも低くやれそうな気配がない。でもなんかネットでキャラクター作って冒険したいよ~と思い色んなサイトを巡っていた時に偶然見つけたのがなりきりチャットだった。
辿り着いたサイトはいわゆるファンタジー系のオリジナルサイト。当時としては最大手だったのではないだろうか。連日何百という人が集まりサイトは大盛況だった。
利用者の年齢層もかなり低く、基本はキャラを演じているのでプレイヤーの事は分からないが、リアルの話のみが出来るルームがありそこでお話をした人達は大体が10代半ば~20代前半という感じだった。20歳の子が皆若いねー私だけ年上じゃん^^と言っていたのが十数年経った今も妙に記憶に残っている。今やそのサイトもプレイヤーの高年齢化が進み20歳の若き子なんて恐らく誰もいやしない…。
とにかく、そのオリジナルサイトは大人気だった。
沢山の冒険をして沢山の時間を費やした。
当時はオフ会も盛んに行われており、お姉さんやお兄さん達が沢山集まって盛り上がっていたようだ。私は田舎に住んでいた事と、なりきりチャットの中で
「いくぜっ!奥義覇王星雲剣!!」(フォント7のクソデカ文字)
みたいな事を連日連呼して戦っていたのに、リアルでこんにちは……と他プレイヤーの皆さんと会う事がなんかあまりにも恥ずかし過ぎて結局一回も行かなかった。当時オフ会レポというものが沢山あげられていて良いなーと思ってはいたけれど。
それからもう少し時間が進んで、SNSが発達してTwitterが主流になり、なりきりキャラのままで皆Twitterをこぞって始めて、そこから顔の見えなかった子達のリアルがちらほらと見え始め、そこでまたグループが作られ…と、そこらへんから徐々にサイト自体の人が減っていってしまった気がする。
勿論時が経てば生活の舞台が皆変わっていくからフェードアウトしていったというのもある。
私は基本的にチャットはチャット、リアルはリアルと思っていたので殆どの人とリアル交信はしなかったけれどふとある日、公式Twitter(現X)からフォロワーを辿ると昔一緒に冒険した仲間達のアカウントを覗けてしまった。大体皆引退している子達ばかりだけど、とある剣士だった子は結婚しており、魔法使いだったあの子はお母さんになっていた。
皆こうやってリアル世界で別の新たな冒険をしているんだなーと思うと何だか眩しい。そうしてこれだけ時間が経ったんだもんなあと感慨深くなると共に、殆ど生活スタイルの変化していない自分に自己嫌悪したのだった…。
それはさておき、もうきっと私が行っているサイトもそう長くはないだろうと思う。こればかりは仕方ない、全盛期はルームから人が出ると待ち構えていたように次の人達がわんさかと入っていたものだが、今や数週間前のログがずっと残っているような状態だ。
私自身もまだやっているよ!とはいうものの実のところ数か月に1回程度顔を覗かせる位しかやっていない。仲の良かった子達は殆ど皆いなくなってしまったし、自分自身も年を取ってしまったせいでもう朝の4時までチャットをしてちょっとの仮眠後に活動するなんて事が出来なくなってしまったからだ!…半ば意地でやっているが終わりは見届けたい。
出来る事なら、終わるその時までに一瞬でも良いから全盛期のようなあの熱狂した賑わいを見たいなと思う。
正直なところ、チャットにあれだけ膨大に費やした時間を他に充てればもう少し今マシな人間になっていたのでは…?と思わなくもないが、あの時朝の4時や5時まで皆で集まり、時に作戦会議をしたり意見をぶつけ合ったり、沢山の冒険に出て共に戦い色んな場所を駆け巡り、リアルでは眠い目を擦りながら数時間仮眠を取った後に学校に行ったりバイトに出かけたりしていたあの時間は本当に楽しかった。
世の中のどこかで、今も現実世界で戦っているかつての仲間達へ。
もしも、ふとした瞬間にあの場所を思い出したなら一度は覗いてみてほしい。気晴らしに少しだけまた遊んでくれても良いし、なんて自分は恥ずかしい事をやっていたんだ!と黒歴史として酒の肴に誰かと笑い話にしても良い。
奇跡的にもう一度お話する事が出来たなら、久しぶりだね!とまた遊んでくれるととても嬉しいな。
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