スッキリ
美智子は、鏡の前に立ち、自分の長い髪に目をやる。
その艶やかな黒髪は彼女の自慢であり、周囲からも称賛されていた。
しかし、美智子の心の奥底には、長い髪をバッサリと切ってスッキリとした気分を味わいたい、という切実な願望が隠されていた。
「髪を切れば、もっとスッキリするのに。」美智子は、毎日その思いを抱きながらも、長い髪を切る勇気が持てずにいた。
髪を切ることで自分の女性としての魅力が失われるのではないか、という不安が彼女の心を占めていたのだ。
ある日、美智子はその願望を実現する方法を見つけた。
娘たちの長い髪を、バッサリと切らせることを思いつく。
二人の娘、優子と美咲は、母親と同じ長い髪を大切にしていて、アイドルになることを夢見ていたが、美智子はその夢をあえて踏みにじるように、彼女たちの髪をバッサリと切る計画を立てた。
美智子はまず、優子と美咲に可愛らしいワンピースを着せ、「特別な日」と称して、二人を美容院に連れて行った。
娘たちは普段と違う服装にわくわくしていたが、母親の本当の意図を知る由もなかった。
美容院に到着すると、美智子は自分の髪に代わって、娘たちの長い髪を切るため椅子に座らせた。
「優子の髪を短く刈り上げたボウルカットにしてください。」と、美智子は、こっそりと美容師に頼んだ。
さらに、「美咲の髪は刈り上げない代わりに、全体を数センチにまで切り込んで、ベリーショートにしてほしい」と注文した。
美容師はその注文に驚きながらも、美智子の意志を尊重し、二人の髪を切り始めた。
優子と美咲は最初は楽しげにしていたが、髪がどんどん短くなっていく様子を見て、次第に不安と恐怖に変わっていった。
「やめて!」「嫌だ、ママ!」と、優子と美咲は声を上げ、涙を流しながら訴えた。
すると、美智子は冷たく言い放った。
「静かにしなさい!」
彼女の声には厳しさが込められていて、優子と美咲は、声を出すことなく泣き続けた。
美智子は、優子と美咲が泣いた罰として、更に短くさせることにした。
優子の髪は、既に短くなっていたボウルカットをさらに短くするよう、美容師に頼んだ。
結果、優子の髪はボウルカットの全体がさらに2センチほど短くされ、どんぐりのカサのような浅いカットになった。
美咲の髪もまた、全体をさらに短く切り込まれ、ほぼ坊主に近いほどの極端なベリーショートにされた。
カットが終わると、優子と美咲は短くなった髪を鏡で見て愕然とした。
優子はその恥ずかしいボウルカットに涙を流し、美咲はほぼ坊主の髪に呆然とした。
美智子はその姿を見て、自分が望んでいたスッキリとした感覚を味わいながらも、思ったほどでないことに気づいた。
日々、心の中に再びジワジワと不満が募っていた。
「スッキリしたい・・・」
そこで、少し我慢すれば、やがて自分が求める感覚を得られるかもしれないと考え、娘たちに髪を少し伸ばさせることに決めた。
「もう少し我慢すれば、もっとスッキリするかもしれない。」
美智子は自分に言い聞かせながら、娘たちの髪が少しずつ伸びるのを見守った。
優子と美咲もまた、髪の長さが戻ることを期待していたが、同時に心の中には不安が広がっていった。
1か月が過ぎた頃、髪が少し伸びた娘たちの姿を見て、美智子の我慢の限界が近づいていた。
美智子は我慢できなくなり、娘たちを再び美容院に連れて行く決意を固めた。
「もう一度だけ、やってみよう。」
美智子は、娘たちに再び美容院に連れて行く準備を整えた。
優子と美咲は、その日の朝にまた美容院に行くことを知らされ、再び不安と恐怖が募っていた。
美容院に到着すると、美智子は美容師にあり得ない注文を出した。
「優子の髪を、さらに短く刈り上げてください。ボウルカットの全体を、もっと浅くしてください。」
そして、美咲を担当する美容師には「襟足から耳回りを刈り上げて、ほぼ坊主に近い状態にしてください」と頼んだ。
美容師は再び驚きながらも、美智子の指示に従い、優子と美咲の髪をさらに短く切り始めた。
優子の髪は、どんぐりのカサのような浅いボウルカットから、さらに短くされ、ほぼ丸刈りに近い状態にされた頭にカッパの皿が乗ったような髪型になった。
美咲の髪も、極限まで短く切り込まれ、板前のような刈り込んだ坊主に近い状態に仕上げられた。
髪のカットが終わると、優子と美咲は再び鏡の前でその変わり果てた姿に愕然とし、涙を流した。
美智子は、その姿を冷静に見守りながら、自分が求めていたスッキリ感が未だに得られないことに、心の奥底で一抹の不安を感じていた。
家に帰ると、美智子は再び鏡の前に立ち、自分の内面の変化を確認しようとした。
しかし、娘たちの髪をさらに短くしたことで得られるはずの感覚が、期待していたほどの爽快感をもたらさなかったことに気づく。
美智子は、もう一度、娘たちを美容院に連れて行くことを決意する。
美容院に到着すると、優子と美咲は、深い不安を抱えながらも、母親の指示に従うしかなかった。
美智子は美容師に向かって冷静に、しかし決然とした口調で言った。
「優子と美咲の髪を、どちらも丸刈りにしてください。」
その言葉に、美容師は驚きを隠せなかったが、美智子の強い意志を理解し、指示に従う準備を整えた。
「本当にいいんですか?」美容師は心配そうに尋ねたが、美智子は答える代わりに、ただ静かに頷いた。
彼女は、自分の心が求めるスッキリ感を得るためには、これしかないと感じていた。
美容師がバリカンを準備し、優子と美咲の髪に触れると、二人は恐怖に震えながらもその場に座っていた。
美容院の中に、バリカンの音が響き渡り、優子と美咲の髪が更にに短くなっていく様子が目の前で繰り広げられていた。
優子の髪は、バリカンで短く刈られていき、やがて全体がきれいに丸刈りにされていった。
その過程で、優子の顔には涙が流れ、何度も髪を切られることを拒否しようとしたが、母親の冷たい視線と美容師の手によって、最終的に丸刈りにされてしまった。
美咲も同様に、バリカンで髪が刈られていき、やがて全体がすっかり丸刈りになった。
美咲の目には深い悲しみが宿り、長い髪を持っていたころの記憶が痛みと共に蘇っていた。
カットが終わると、美智子は鏡の前に立ち、娘たちの丸刈りになった姿をじっくりと見つめた。
彼女の心には、これでスッキリとした感覚が得られるはずだという期待があったが、実際には何か物足りなさが残っていた。
「これで、すっきりするはずだったのに。」美智子は心の中で呟きながら、娘たちの姿を見つめた。
彼女は、髪を丸刈りにすることで自分が求めていた感覚を得られると信じていたが、その感覚が思ったほどの満足感をもたらさないことに気づき始めた。
美智子は、娘たちの髪を丸刈りにしても、自分の髪を切った時のようなスッキリとした気分になれないことに苛立ち始めた。
どうしたら、あのスッキリ感を味わえるのか・・・。
イライラとした気持ちを持ちながら、美智子は、ソファでウトウトし始め、そのまま眠りについた。
ぐっすり眠っている美智子の前髪に伸びてきた手は、手にした工作用のハサミで根元から美智子の前髪を切り落とした。
その手の主は、美咲だった。
続いて、美智子のつむじのあたりの髪を一房、手にすると、同じく根元からキッチンバサミで切り落とした。
これは、優子の手。
娘たちは、自分たちが丸刈りにまでされたのに、母親だけが、長い髪でいることが許せず、いつか、仕返しをしようと企んでいた。
優子と美咲は、美智子の髪を少しずつ掴んでは根元から切り、床に捨てた。
横を向いて寝ていた美智子の、頭半分が散切り頭にされたころ、ジャキジャキというハサミの音と、髪を切り離される感覚に美智子が目を覚ました。
ゆっくりと目を開け、頭に手をやった美智子は大きな叫び声を上げた。
床に落ちた、かつては自分のものだった長い髪を拾いあげては、声も出ない様子だ。
優子と美咲は、ソファの影に隠れて笑いをこらえるのに必死だったが、すぐに美智子につかまり、終わることのない説教が続いた。
しかし、優子も美咲もすでに丸刈りにされているため、これ以上の罰はないと高を括っており、余裕の表情だった。
一晩泣き続けた美智子は、諦めて床屋に行くことにした。
娘たちを丸刈りにさせておいて、その仕返しを受けて自分も丸刈りにせざるを得ない状況で、恥ずかしくて美容院にいくことはできなかった。
美智子は、一人で行こうとしたが、優子と美咲が面白がってついてきた。
一度も入ったことのない床屋の扉を開けると、重い足取りで中に入る。
椅子に座り、渋々、帽子を取ると、半分は腰までのロングヘア、半分は残切り頭という情けない姿になり、美智子は蚊の鳴くような声で「全体を揃えてほしい」と言った。
店主は、なんの遠慮もなく「これは、五厘刈りにするしかないねぇ」と言って、手早くカットクロスをかけると、美智子のおでこからバリカンを入れた。
ジリジリと刃を鳴らすバリカンが近づいてくると、美智子は条件反射で体をのけ反らせたが、後ろから頭を押さえられ、容赦なく入り込んだバリカンに一気に髪を奪われた。
刈られた跡は、青白く、剃られたかのような跡が広がった。
長い髪もバサバサと床に落ち、後ろで見ていた優子と美咲は、自分たちの丸刈りよりも更に短くされた母の頭を唖然と見ていた。
ものの数分で、美智子の頭は、剃ったかのような丸刈りになった。
カットクロスを外され、恐る恐る頭に手をやると、ザラッとした感じが若干あるものの、ヌラっとしていて、ぺたぺたと触ると、手の温かさを頭が直に感じる不思議な感覚だった。
美智子は、椅子から降りると、刈り落され床に落ちた自分の髪を踏みつけ、そのまま優子と美咲の手を引いて連れてくると、「この子たちも、五厘の丸刈りにしてください」といって、椅子に座らせた。
優子も美咲も、すでに丸刈りにされていたため油断していたが、上には上の丸刈りがあるのだ。
二人とも、必死に美智子に謝り、なんとか五厘刈りを逃れようとするが、美智子は一歩も引かない。
「二人とももう坊主なんだし、五厘刈りにしても大して変わらないんだから。それより、このスッキリ感を味わわない方がもったいないわよ!」
美智子は、やっと、望んでいたスッキリ感を満喫できたようだ。
優子も美咲も、あっという間に五厘刈りにされてしまった。
刈られるまでは、泣いて逃げようとしていた二人も、刈られた頭を触っては、その不思議な感覚に手を外せなくなっていた。
美智子は、あれほど大切にケアしていた長い髪を、極限まで短く刈り込み、人生最大のスッキリ感を味わっていた。
娘たちも、長い髪をどんどん短く切られ、丸刈りにまでされ泣きじゃくっていたが、髪がない五厘の丸刈りにしたことで、スッキリとした爽快感を得ていた。
床屋からの帰り道、美智子は「当分、二人とも、床屋さんで五厘刈りにするからね。ママも一緒に」というと、娘たちは「えー」と声を上げたものの、その顔はまんざらでもなく、毎週、3人連れだって床屋通いを続けるのだった。
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