看護管理者に求められる、自分事として社会で起こっていることを捉える力~BA.5対応型ワクチン接種後の死亡事例から思うこと~



先日自分で自分を褒めてあげたい事例があった。
本当に前もっての準備をすることで、安全な医療につながると思う事例だったので、残しておくこととした。この記事を読んだ誰かの役に立つことを願って。
 
月日の経つのは早く、2022年11月5日に愛知県愛西市の新型コロナウイルスワクチン集団接種会場で起きた医療事故からもうすぐ2年がたつ。
私はこの医療事故については、色々と考えることがありいくつかの視点で記事も書いた。
 



※この事例では、解剖がされておらず、結果死因がはっきりしていません。
そのため、重度のアナフィラキシーショックという推定がある一方で、アレルギー反応に伴う急性冠症群であるコーニス症候群という病態の可能性も指摘されています。

記事には記載していなかったが、あのあと1病棟の看護師長として私がすべきことは、「同じような事例が発生したときに、スムーズに急変対応ができるようにすること」だった。
病棟でも、薬剤アレルギーによるアナフィラキシーショックが発生する可能性はある。事前の問診聴取するため、リスクは少ないが食物アレルギーによるアナフィラキシーショックも起こるかもしれない。
実際に、抗生剤などの薬剤を投与した結果、薬疹が皮膚に出て、医師に報告→投薬という事例は遭遇したことがある。ただ、私自身、実際に重度のアナフィラキシー症状の場面に遭遇したことはなく、果たして、すぐにアドレナリンを筋肉注射できるだろうか。
 
当院では、造影剤のアナフィラキシー症状に対しては、CT、MRI室内に誰が見ても同じように行動できるフローチャートが大きく掲示されていた。
しかし、病棟では、どこに掲示するかなどのルールはなく、作成されたフローチャートはファイルにしまってあった。
そのため、私はこの事例を受けて、急変時必ず使用する救急カートの一番上にこのフローチャートを置き、誰が見ても目につくようにしていた。また、この事例の共有も行っていた。
 
先日、入院当日に抗生剤初回投与した患者さんが、アナフィラキシーショックを起こした事例があった。このフローチャートにしたがって、そばにいた医師にすぐにアドレナリンの筋肉注射を投与してもらい、結果患者はそれ以上悪化することなく退院することができた。
 
ちなみに、この事例は正直なところ、フローチャートをおいていただけではあまり効果がなかったというのも実感した。実際には私がフローチャートの場所も、院内ではエピペンではなく通常心停止時に使用するアドレナリンを0.5ml分破棄して、筋肉注射することも把握していたため、分単位で対応できた事例だったように思えた。病棟にいた医師も、実際に臨床現場でアナフィラキシーショックに遭遇したことはなかったと話しており、戸惑う様子も見られた。
 
そのため、この事例をインシデント事例として医療安全管理室へ報告した。結果、すべての病棟でこの事例を共有することや、今回の事例を踏まえた新たな病棟用のフローチャートを医療安全管理室が作成し、どの部署も救急カートに置くこととなった。ちなみに、私が実際に事例に遭遇して感じた「0.5ml分捨てる」というのは慌てていると見逃しそうであるため、色を変えて強調して記載してもらった。
 
私は、看護管理者に必要なのは、なにか医療事故があった報道を見た際に、それをいかに自分の部署の事例として想定し、事前に対策をとることだと思う。そして、他部署とも連携する力、今回の事例も医療安全管理室とその後の共有ができたからこそ、院内の取り組みにできたのだと思う。
 
愛知県の新型コロナウイルスのワクチン会場での死亡事例は、とても悲しい事例だった。
今ちょうど、ラストマイルという映画が上映されており、そのシェアード・ユニバースとして不自然死救命研究所のアンナチュラルのドラマも少し描かれている。答えの出ない問いを抱えるご遺族の方のつらさを思うと、予期せぬ死亡に対する私たち医療者の向き合い方も問われていると思う。







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