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アメリカで起きた「看護師による水道水の注射事件」からの考察~医療現場での犯罪を防ぐために~
そんなことをする看護師が、いるわけない。
そんなことをする看護師も、いるかもね。
このニュースを見て一般市民の人はどのように思うのだろう。
私の意見は、「そんなことをする看護師がいないとは言い切れない。」だ。
日本で言えば、旧大口病院の点滴に消毒薬を注入した看護師の事件を覚えている人も多いのではないだろうか。
私はこの事件を起こすことができたのは、病棟の中で一番患者に身近で、カーテンの中で一対一になることが多い看護師だからだと思う。
何回か書いているが、看護師の仕事は「最終施行者」もなるからこそ、悪意を持った事件を起こすことも理論上はできてしまう。
もちろんこんな犯罪者、世界でも十年に一例いるかいないかではあるだろう。今回のアメリカの事例も、もしかしたら、その看護師や麻薬に依存していて正常な判断ができない状態だったのかもしれない。大口病院の事例も、事件の背景を記載した新聞などではうつ状態であったとの報道もある。
しかし、その犯罪者にどんなに酌量すべき事情があったとしても、罪もないただ、治療を受けに来ている患者の命を奪うような行為は絶対にあってはならない。
組織としてこのような事件を起こさせないために必要なことはなにか。
一つは、スタッフへの教育・倫理観の育成。
ただ、そもそも正常な判断ができない精神状態の人や、普通の人間がもつ倫理観などない人に、職場でおこなう研修がどこまで役にたつのか、効果はわからない気がする。
もう一つは、起こすことができないような(もしくは起こしづらい)仕組みづくり。
例えば、麻薬などの薬剤は単独では投与しない(鍵付きの金庫に保管は、日本でも義務付けられている)。調剤室に監視カメラをつけるなど。
また、管理職がスタッフの異変にどれだけ気づけるか、普段からしっかりコミュニケーションをとることも大切だろう。危険予知トレーニングの一つに「健康KYT(KYT:危険 予知 トレーニングの略)」がある。勤務開始時のスタッフとの挨拶時の表情、髪型、服装などで身体的や精神的な体調不良に気づくことがある。その早期の介入が、このような犯罪を防ぐ一助にはなれるのではないか。
個人的には、薬剤部の調剤室、病棟の調剤室には監視カメラをつけるのがいいと思っている。
これは、このような事件という意味だけでなく、監視カメラがあることで
より「指差し呼称」と言われる確認の手順、調剤前の手指消毒などの見えない、けど大切な過程をより遵守するようになると思うからだ。外部侵入の可能性もゼロとはいえない病棟では、紛失防止にもつながる。もっと言えば、自分たちが正しいことをしている証拠ともなりうる。
ただ、各病院お金もかかるだろうし、導入をすすめたいなら、例えば急性期一般病院の加算要件とするなどのある程度の国の介入がないと難しいかもしれない。