呼吸回数を測定している?~”疑問を持つスタッフ”を”思考できるスタッフ”に後押しするために~
看護学生の頃は、バイタルサインといえば体温・脈拍・呼吸・血圧の測定だったが、看護師になって呼吸回数を図るのは重症患者や呼吸器疾患、手術直後となっている。
転職する前の病院も同様だったからあまり違和感はなかったが、医療安全管理室で呼吸回数が急変前の兆候(特に敗血症)として重要だということを知っていたので、病棟では春頃実際の事例をもとにミニ勉強会を行った。
先日、管理者向けのミーテイングで「すべての患者の呼吸回数を測定するように」という話が出た。
敗血症の兆候に気づくためにも必要であるし、そもそも呼吸を含めてバイタルサイン測定であろうということであった。
この話を聞いた病棟のスタッフに、「呼吸数は、敗血症とかの急変前の兆候をみるのに大事って勉強会で話がありましたが、全ての患者さんをはかるんですか?」と質問された。
医療看護の分野以外もそうだろうが、日々業務の流れややり方が変わることがある。
そして負担が一見増えることに、否定的な反応になるのは致し方ない。
師長になって思うのだが、自分で考えて「なぜ必要なのか?本当に?」と考えられるスタッフは大切にしたい。こういうスタッフの質問にきちんと根拠をもって答えることは、みんなで考えるチャンスになるからだ。
今回の事例については、こんな風に病棟内で共有した。
①まず、呼吸回数を測定する意義について資料を用いて私が伝達
→呼吸回数の測定を行っていない急性期病院も多いが、呼吸サポートチームなどが介入し呼吸回数を測定するようになってきている現状がある
②看護記録には異常値だけでなく正常値も記録する必要があり、記録がないと実施していないとみなされる裁判の事例も提示
→ここから正常と思われるときから測定し、記録する意義を伝える
ただし、全患者 3回/日測定する必要はなく、状態が安定している患者は1回/日でOKとする。状態が安定している定義をある程度カンファレンスで共有。
③慢性呼吸器疾患認定看護師から「呼吸回数測定の意義」について勉強会をしてもらう
→これは、院内で慢性呼吸器疾患認定看護師がいる病棟だけが呼吸回数を測定していた事実をスタッフに伝え、きちんと根拠に基づいた知識を身につけられる機会を与えるため
たしかに、他の急性期病院でも呼吸回数を測定していない事例は多いらしい。
これは私の想像だが経皮的酸素飽和度のモニター機器が安価に流通し、スタッフが患者さんの酸素化を「見えやすくなっている」ことで、呼吸の役割である換気の客観的指標をSpO2で代替してきたからだと思う。最近は看護学生も実習の際に、SpO2モニターを持参するケースもありそれだけ普及しているのだろう。
余談であるが、今コロナ禍で患者さんと接するときにはマスクをつけてもらっている。
となると、バイタルサインの測定時に「唇のチアノーゼ」とか、「唇の乾燥」とかから得ていた情報が得られなくなっているということだ。今後のフィジカルアセスメントでも影響は出てくるのだろうか?
話を戻すが、日々増える業務。ただ、漫然と従うのではなく自分たちで考えて納得できることが大事。伝える側の技量をあげて、前向きに看護の質をあげていきたい。
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