秘密
まだ、明言はしたくない。
今はこの輪郭のない繋がりのままでいたい。
じっくりと煮つめて、急かしたい心を押し込めて、
シャボン玉みたいに割れてしまわないように、大事に大事にあつかう。
あの人の本音が見えないものだから、いつもおそるおそる足を踏み入れる。もしかしたらもっともっと踏み込んでもいいのでは?なんて考えながら。
喉でつっかえる欲しがりな手をなだめすかして、桃色に染まった頬に浸っては鏡を見て慌てて自分に帰った。
私ったらまるで。と。
毎晩「おやすみ」の一言だけでも交わせたなら幸せだね、と笑い合う。そんな関係の本音は隠したまま。いじましく膝を抱えて悩む時間も、過ぎた真似をしないように尽くす努力も、大したことのない会話も、思い出せば口元がゆるむくらいこちらは満たされているというのに。
いつになったら咲く蕾なのかなんて考えない。今のぬるま湯のような2人はとても大切で離したくない。
微笑めば優しく微笑み返される小さな暖かみを、ぎゅっと抱き締めて眠りにつけるだけで、それだけでいいから。
ずっとささやかなふたりでいれますように。