無題

喉の奥が火傷をしていて、胸の奥が焼け焦げているような、呼吸をすると熱が鼻を通っていき、頬の上で涙が乾いてオブラートみたいになって、染みて少し痛い眼を見開いて、バラバラになった四肢を集めて体全部を縮こませて、一生に一度の慟哭をしたあとのような。

久しぶりにこんな感覚だと思ったけれど、全てをかけて人生をしていた頃は、たびたびこのようになっていたな、と思い出した。

それはとても恵まれたことであり、可哀想なことであり、未熟なことであり、成長痛のようなことであり、孤独なことであり、今となっては愛すべき思い出だと、振り返る。

誰にも奪われない悲しみや後悔や懐古や辛酸や憎しみを涙にして、流し続けてきたのだから、この感覚で思い出されること全てが愛すべきことだ。

全身で泣ける人間はなにも失っていない。
むしろ全てを持っていて、幸せな人間だ。

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