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一抹の不安


早く起きすぎて乾いた目をこすりながら、毛布の下から起き上がる。まだ夜が明けたばかりで、カーテンは薄く青みがかった光に透けていた。いつも朝が遅い私には早すぎる。白湯でも飲もうかとよたよたとベッドから降りてキッチンに向かい、鍋に水を入れて火をかける。白湯ができるまでスマホをさわり、カップに注いだ湯が丁度良い塩梅になった頃には、頭が少し冴えていた。ようやく起きたなあと思い、朝食までのこの暇に本でも読もうと、図書館で借りていた森茉莉の本をとってベッドに戻った。1時間ほど読んでいたらいつもの朝食の時間になったので、オートミールとヨーグルトを適当に食べて、温めた紅茶を啜った。

ふと思う。ゆったりとした時間に幸せを感じながら、こんなことを母に知られたらきっと厭味を言われるだろうなと。私がどんな生活をしてどんなこと大切にしていても、別の人間である母には全く口を出す余地はないはずなのに、そしてここには母は居ないのに、母の生き方の真反対に幸せを感じたとき、瞬間よぎる不安がいつもある。ただの習慣的なものだと陰りを払いながら、でもこれが習慣的なものになっていることに困る。子に関わる全てに目を凝らし、許容外を見つけたら大声で叱りつけていた母にとって、都合の良い子になろうと必死だった子ども時代にびくびくしていた感覚は、刷り込みがきつくてなかなかすぐに消えるものではないらしい。完全な安堵が訪れるのはいつになるのやら。

朝からいやに負の気持ちについて考えてしまった。何をするにも何を食べるにもついてくるこれは、自分で呪いを解いていく他ない。今日という自分の一日は、自分のものである、自分の勝手である。人は何かに怯えずに好きなものを食べて好きなものに触れるべきだ。ついてくる呪縛は自分への配慮をもって時間をかけてゆるやかにしていけばいい。

そう心をまとめ直して、私は私の好きな時間に二度寝をします。


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