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熱中症

東京都教員採用試験、専門教養(養護教諭)の勉強。実際に私が100点をとった勉強法です。


【熱中症とは】

熱中症とは、暑熱環境での身体適応の障害により起こる状態の総称。

【熱中症の発生要因】

熱中症を引き起こす条件には、気温が高い、湿度が高い、日差しが強いなどの環境条件のほか、乳幼児や高齢者、暑さに慣れていないなどの体の条件、長時間の屋外作業などの行動の条件がある。これらの環境条件の下で、体から熱が放出されにくくなることで熱中症が発生しやすくなる。

【発生のメカニズム】

人は運動や仕事などで体を動かすと、体内で熱が作られて体温が上昇する。体温が上がった時は、汗をかくこと(気化熱)や、体の表面から空気中に熱を逃がすこと(熱放散)によって、体温を調節している。
しかし、気温や湿度が高い環境で激しい運動を行うと、体内で作られた熱をうまく外に逃がすことができなくなる。さらに、そのような環境の下でいつも以上に運動や活動を続けると、体がどんどん熱くなり、汗をかいて体の水分や塩分が減っていく。
そうすると、体内の血液の流れが悪くなり、体の表面から空気中に熱を逃がすことができなくなり、汗もかけなくなる。このように体温の調節がうまくできなくなると、体の中に熱がたまって体温が上昇する。


【分類】

熱けいれん
大量の発汗があり、水のみを補給した場合に血液の塩分濃度が低下して起こる もので、筋の興奮性が亢進して、四肢や腹筋のけいれんと筋肉痛が起こる。→生理 食塩水(0.9%食塩水)など濃いめの食塩水の補給や点滴により通常は回復する。
熱失神
炎天下にじっとしていたり、立ち上がったりした時、運動後などに起こる。皮膚 血管の拡張と下肢への血液貯留のために血圧が低下、脳血流が減少して起こるも ので、めまいや失神(一過性の意識障害)などの症状がみられます。→足を高く して寝かせると通常はすぐに回復する。

熱疲労
脱水によるもので、全身倦怠感、脱力感、めまい、吐き気、嘔吐、頭痛などの 症状が起こる。体温の上昇は顕著ではない。→0.2% 食塩水、スポーツドリンク などで水分、塩分を補給することにより通常は回復する。嘔吐などにより水が 飲めない場合には、点滴などの医療処置が必要。

熱射病
体温調節が破綻して起こり、高体温と意識障害が特徴である。意識障害は、周囲 の状況が分からなくなる状態から昏睡まで、程度は様々である。脱水が背景に あることが多く。血液凝固障害、脳、肝、腎、心、肺などの全身の多臓器障害を 合併し、死亡率が高い。→救命できるかどうかは、いかに早く体温を下げられるかにかかっている。救急車を要請し、速やかに冷却処置を開始する。

【予防】

1. 環境条件(WBGTなどの厚さ指数)を把握し、それに応じた運動、水分補給を行うこと
2. 暑さに徐々に慣らしていくこと
3. 個人の条件を考慮すること
4. 服装に気を付けること
5. 具合が悪くなった場合には早めに運動を中止し、必要な処置をすること


【応急処置】

【参考資料】

nettyuusyo_all.pdf (jpnsport.go.jp)

【過去問】

問1
熱中症に関する記述として、「学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き」(環境省・文部科学省 令和3年5月)に照らして適切なものは、次の 1~ 4 のうちのどれか。 

1  学校での熱中症による死亡事故は、近年は増加傾向にあり、ほとんどが体育・スポー ツ活動によるものである。
2  日常生活における熱中症の予防は、体温の上昇と脱水を抑えることが基本である。そのため、暑い環境下に長時間いることを避けることが大切である。
3  熱中症警戒アラートは、人体と外気との熱のやりとりに着目し、熱収支に与える影響 の大きい気温、湿度、日射・輻射など周辺の熱環境、風の要素を取り入れた指標である。
4  暑さ指数は、熱中症の危険性が極めて高い暑熱環境が予測される際に、環境省・気象 庁で新たに暑さへの気づきを呼びかけ、国民の熱中症予防行動を効果的に促すための情報提供のことである。

問2
次の記述は、中学校の養護教諭が、熱中症の予防と発生時の対応に関する校内研修会を 行った際の発言である。下の⑴、⑵の各問に答えよ。

熱中症は、暑くなり始めや、急に暑くなる日等の体がまだ暑さに慣れていない時期、そ れほど高くない気温でも、湿度等の条件により発生しています。そのことを踏まえて、気候の状況により、熱中症などの健康被害が発生する可能性が高いと判断した場合は、屋外での活動を屋内での活動に変更するなどの対応をお願いします。また、熱中症予防のため、学級での朝の健康観察は重要ですので、体温や体調等について、必ず健康観察を行ってください。 全校で熱中症予防に取り組めるように、職員室や玄関、体育館に熱中症の危険指数を測定する機器を設置してあります。この機器で、湿球黒球温度が ( ア  )℃以上で運動は原則中止になります。授業開始時には運動が可能な値であっても、授業開始後に湿球黒球温度が上昇し、運動を中止する値になった場合、その場で速やかに活動を中止し、運動を伴わない活動に変更をお願いします。 熱中症が発生した場合、本校では、「日本救急医学会熱中症分類2015」の指標を用いて 判断を行っております。Ⅰ度では、安静や冷却、水分摂取等で対応しますが、(イ:Ⅱ度では医 療機関での診療が必要になり)、Ⅲ度では入院加療が必要になります。万が一、生徒が体調 不良を訴えた際には、その生徒を涼しいところや日陰に移動させて、速やかに養護教諭ま でご連絡ください。

⑴ 記述中の空欄 ア に当てはまるものとして適切なものは、次の 1 ~ 4 のうちのど れか。
1  21   2  25   3  28   4  31
⑵ (イ)について、このときの症状として最も適切なものは、次の 1 ~ 4 のうちではど れか。
 1  頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感
2  めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗
3  筋肉痛、筋肉の硬直、意識障害を認めない
4  意識障害、痙攣発作、肝・腎機能障害、血液凝固異

問3
次のア~エは、熱中症の症状に関する記述である。ア~エと熱中症の病型との組み合わせとして最も適切なものは、下の1~6のうちではどれか。

ア 9月14日に小学校6年生の児童Aは、朝から校庭で運動会の練習を行っていた。入場行進や準備体操などを20分程行った後、徒競争の練習とリレーを行い席に戻ろうとしたところ、右前脛骨筋に鋭い痛みがはしり、倒れた。児童Aは、「足が痛くて動けない。」と言いながら泣いていた。11日から13日まで雨が降っており、いずれも気温は27℃程度であったが、14日は気温が30℃以上あった、児童Aは、この日あまり睡眠をとっておらず、水道水ばかりを補給して朝食は食べていなかった。
イ 7月28日に中学校3年生の生徒Bは、体育館でバドミントン部の練習を行っていた。コートを10周走り、ストレッチ体操や腕立て伏せ、腹筋、背筋を20回3セットなど、準備運動を行った後に5分間のゲームを30分程度行った。給水のため休憩を取ろうとしたところ、突然目の前が暗くなりしゃがみこんだ。生徒Bの顔色は悪く、脈も弱いが、友人Cと会話はできた。この日は野外の気温が30℃以上あり、体育館内の室温、湿度はかなり高かった。
ウ 8月2日に高校3年生の生徒Dは、サッカー部合宿で試合に出場するため、準備運動を行っていた。顧問は運動前に水分補給をするよう指示したが、生徒Dは水分補給をせずに、ランニング30分間とパス練習を30分程度行った。試合中、生徒Dはシュートの空振りやパスのミス、足がもつれて転ぶなど普段しないようなミスが目立ったため、顧問は生徒Dに交代するよう言ったが指示に従わなかった。顧問がやめさせようと近づいたとき、生徒Dは体をガクガクとひきつけ、意識を失った。
エ 9月17日に中学校1年生の生徒Eは、野外プールで水泳の授業を受けていた。気温は34.5℃、水温は32.2℃、湿度は63.5%であった。生徒Eは準備運動などを行った後、自由泳ぎや平泳ぎを40分程行った。途中から頭痛が始まり、さらに息継ぎに失敗しプールの水を数回飲んでしまった。休憩のため、プールから出ようとしたところめまいが起こり、プールサイドに倒れ、嘔吐をした。生徒Eは教師の問いかけには正しく答えられたが、ぐったりとして「身体に力が入らない」といった。

1 ア:熱けいれん、イ:熱疲労、ウ:熱失神、エ:熱射病
2 ア:熱疲労、イ:熱失神、ウ:熱けいれん、エ:熱射病
3 ア:熱射病、イ:熱疲労、ウ:熱けいれん、エ:熱失神
4 ア:熱射病、イ:熱失神、ウ:熱疲労、エ:熱けいれん
5 ア:熱けいれん、イ:熱失神、ウ:熱射病、エ:熱疲労
6 ア:熱射病、イ:けいれん、ウ:熱失神、エ:熱疲労

問4
「熱中症を予防しようー知って防ごう熱中症ー」(文部科学省スポーツ・青少年局、独立行政法人日本スポーツ振興センター)に照らして、熱疲労の応急処置に関する記述として最も適切なものは、次の1~4のうちではどれか。

1 日陰や風通しの良い場所、冷房の効いた部屋などできる限り低温の環境に移動させ、直ちに冷却処置を行いながら、速やかに医療機関へ搬送する。
2 日陰や風通しの良い場所、冷房の効いた部屋などできる限り低温の環境に移動させ安静にする。回復の見込まれない場合でも、医療機関への搬送は必要ない。
3 日陰や涼しい場所などに移動させ安静にし、衣服をゆるめ0.2%食塩水あるいはスポーツドリンクなどを補給させ、経過を観察する。回復しない場合は医療搬送する。
4 日陰や風通しの良い場所、冷房の効いた部屋などできる限り低温の環境に移動させ、0.9%食塩水を補給させ安静にする。



解答/解説
問1
答えは2。
1:死亡事故は減少傾向。ほとんどが体育・スポー ツ活動によるもの。
3:暑さ指数の説明
4:熱中症警戒アラートの説明。
学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き (mext.go.jp)

問2
答え、(1)は4。(2)は1。
(1)は、上記の予防を参照。
(2)は、上記の分類を参照。

問3
答えは、5。
ア:熱中症で「足が痛くて動けない」と言っているため、疼痛を伴う筋痙攣(こむら返り)を生じており、熱けいれんとなる。
イ:熱中症で、突然目の前が暗くなりしゃがみこんだが、会話は可能とあり、意識はあるため、一過性のめまいや失神が起きたと考えられ、熱失神となる。
ウ:生徒は体をガクガクとひきつけ、意識を失ったとあり、熱射病とわかる。
エ:頭痛と嘔吐があり、問いかけには正しく答えていることから、発汗による脱水と皮膚血管の拡張によるめまい・頭痛・嘔吐など循環不全の症状を認めるため、熱疲労となる。

問4
答えは3。
1:熱射病の対応
2:いかなる場合も回復しない場合は、医療機関を受診する。
3:熱中症診療ガイドラインでは、Ⅱ度の熱疲労は速やかに搬送となっているが、「熱中症を予防しようー知って防ごう熱中症ー」では、問題文のまま記載がある。
4:熱けいれんの対応


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