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夢日記①


 チャイムの音と共に教室の窓から差し込む光は、穏やかに机の上を照らしている。私は窓側の席に腰掛け、机から教科書を取り出した。授業に集中しようとするけれど、ふと頭に2人の友人の顔が浮かんだ。A子とB子だ。


 私たち3人は高校に入学してすぐ仲良くなった。毎日笑いあい、時に慰めあい、良い関係を築いていた。芸能人の記者会見ごっこで盛り上がったこともあった。
 しかし、学年が上がるにつれて少しずつ疎遠になっていった。何か大きなきっかけがあったわけではない。気がつくと、A子とB子は2人でいることが増え、私は別の友達と行動を共にするようになっていた。
 3人で過ごした日々が輝かしく感じる時はあれど、今の関係を特別気にすることもなく、「まあこういうものだ」と妙に納得していた。


 その日の放課後、校庭のベンチで風に吹かれながらぼんやりと時間を過ごしていると、ふと遠くから聞こえてくる声が気になった。視線を向けると、校舎の裏手に数人の女子が集まっているのが見える。その中にA子とB子がいた。
 そして、その2人を囲むようにして立っているのは、少し周りよりも大人びている女子グループだった。なぜだか胸の奥がざわついた。何か嫌なことが起きている。そう感じた私は、思わず足を動かしていた。
 近づいていくと、どうやらA子とB子が何かを取り上げられているらしい。私の存在に気づいた女子グループのリーダーは、わざと大袈裟な声で冷たく言い放った。

「ねえ、これってあんたたちが書いた手紙よね?」

彼女が手にしていたのは、A子とB子が書いたと思われる手紙だった。折り目の付いたルーズリーフに細かい文字が並んでいる。彼女たちはそれを面白がるように、2人の顔の前で揺らしていた。

「これ、すごいね。いろんな人の悪口ばっかりじゃん! しかも、ほら、あんたの悪口も書かれてるよ?」

そう言って、女子グループの1人が私に手紙を差し出してきた。彼女の目には悪意と楽しさが入り混じっている。その瞬間、A子とB子の顔が真っ青になったのが視界に入った。

「早く読みなよ」

少し笑いを含んだ声が耳に届いたと同時に、私は手紙を受け取って、何も言わずに、そして何も見ずに手紙を破った。辺りが一瞬静まり返るのを感じた。

「捨てときな」

破れた手紙をA子とB子に渡し、私は静かにそう言った。

 2人はしばらく何も言わなかったが、やがて小さく頷いた。女子グループは面白くなさそうな顔をしていたが、特に何も言わずに立ち去っていった。続いてその場を離れようとする私に、2人は何か言いたそうだった。それに気づかないふりをして、私は1人、夕暮れに染まる空の下を歩いた。

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