マガジンのカバー画像

夏目ジウ 掌編・短編小説集

51
これまでnoteに掲載した小説をまとめてみました。
運営しているクリエイター

2025年1月の記事一覧

頭の中には夢がある【掌編小説】

頭の中には夢がある【掌編小説】

 話している言葉は物語になる。生きていること、即ち物語の上を歩いていること。食べたり、寝たり、人を好きになったり・・・息をしたりもそう。全てが私になる。
 例えば、空想をする。こうなりたい、ああなりたい、これをしたい。全ては真(まこと)で今の自分の生の姿。
 特筆すべきは、好きだったあの人と一緒になれなかったこと。こい願わくば、一つになりたかった。叶わなかった夢。君は若かった。いや、只一人私が幼か

もっとみる
ミス4.9の喉【エンタメ小説】

ミス4.9の喉【エンタメ小説】

※本文17,941字。
※3年前のコロナ禍当時に書いた作品です。
※第六回大藪春彦新人賞応募作品(落選)。

 新型ウルトラウイルス感染症(UOVID--4.9)一日あたりの都内新規感染者数が初めての一万人超。
 ネットニュースを見た大西正恭(おおにしまさやす)の口から放たれる溜息数は日々最高数値を更新している。マスクを通して新しい価値観が作られていく。今どこにいる?何している?マスクを着けている

もっとみる
あけました【短編小説】

あけました【短編小説】

※本文は1,772字。

 自宅近くの寺社に一人で参拝していたら、大学時代の友人であるアキラと偶然に会った。会ったと言うか、遭遇だから遭ったと言うほうが正しいか。
 アキラは4人の子供を引き連れていた。2人は自分の実子で、残り2人は嫁さんの連れ子なのだという。独り者の俺とは大違いだ。
 「明けましておめでとうございます!」
 両親と妹夫婦子がごった返す実家は久しぶりに賑やかだった。父は孫の顔を眺め

もっとみる