マガジンのカバー画像

夏目ジウ 掌編・短編小説集

51
これまでnoteに掲載した小説をまとめてみました。
運営しているクリエイター

2024年12月の記事一覧

夕焼けの拳【掌編小説】

夕焼けの拳【掌編小説】

※本文は3,044字数です。

 地方の小さなボクシングジムには、煌々とした夕陽がよく似合う。そこは、男達の酸い汗の匂いと熱い吐息で充溢している。大田拳士はプロボクサーを目指すイケメンの19歳だ。
 「おい拳士、パンチ打ってみろ」
 「はいっ!」
 ジムの会長である山本は、そうやって拳士のパンチを全力で受け止める。空気を切り裂くような美しい左ジャブは渇いた音を立てると、ボクシングミットに吸い込まれ

もっとみる
ラストダンス【エンタメ小説】

ラストダンス【エンタメ小説】

 ※本文は1,840字数です。

 生まれてはじめてのアダルトレビュー⭐︎は最悪だった。結局、世の中の誰も求めてやしない代物なのだから。煮ても焼いても炙っても、アダルトレビュー⭐︎はアダルトレビュー⭐︎にしかならない。
 冒頭から「シンジ君!シンジ君!」と逆突っ張り棒をひたすら掲げながら一晩中踊り続けた。俺は明らかに赤面して、まるで自分自身があのハギワラシンジになったつもりでいた。
 兎にも角にも

もっとみる