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サクラテーブルでの過ち

目の前には木曽川が流れ、店内にはセンスの良いインテリアとドライフラワー。それ以外に言葉がいるだろうか?
そんなセンスと解放感に溢れるが故に、いやその日は雨が降っていたせいだろう。こと店内においても私は一抹の肌寒さを感じた。いや、感じざるを得なかったと言い換えることも可能だろう。まだ5月とはいえ最近の暑さを鑑みれば、白T一枚という判断も些か間違いとは言い難いが、結局の所、我が両腕に鳥肌が立ってしまったという事実を重く受け止めねばならないことは確かだった。私が店内入り口に置いてあったブランケットの存在を思い出すのには皆が想像するほど時間はかからなかった。確か「ご自由にご利用下さい」的な案内もあったはずだ。私は入り口に置いてあったブランケットを小脇に抱え、自分の席に戻ろうとしたその刹那。背後から神妙な面持ちをした店員が信じられない言葉を口にした。「お客様。それはレジャーシートです。」私は店員が何を言っているのか分からなかった。脳内は一種のパニック状態に陥り、タスクマネージャーを立ち上げる以外にこのフリーズを解決する手段はない様にさえ思えた。恥ずかしさのあまり穴があったら入りたいという使い古された表現も大袈裟ではなかったが、流石の解放感の店内には隠れる場所などあるはずもなかった。

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