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競艇場で黄色いhitomiを見た。


いつもの週末を変えたい想い

昨年秋、その週末もいつものように福岡に来ていた。
まるで土曜日が終わるとすべてが終わってしまうような感覚。
日曜日になると現実に引き戻されるようで嫌だった。
少し重たい気持ちで朝から渡辺通のウエストに入る。
さすがに朝からいつも頼むかき揚げぶっかけはきつい。
朝だしおろしぶっかけにしよう。
このまま帰るのもなぁと思いながらケータイをいじる。
なんかもうちょっとこの週末をエンジョイしたい。
ひとりで買い物と言っても大体同じようなパターンになる。
なんかこう普段できない体験ができないものか。
芸能人に会えるとか?福岡に来てるからできることをしたい。
検索をかなり続けていたらいいのがあった。
ボートレース福岡でhitomiのミニライブがあるらしい!
その情報を見つけた瞬間、すごくアガった。
あのhitomiに福岡で会える!!
競艇場なんて初めてだ。でも、絶対行きたい。
高速バスで都市高速から降りた辺り、天神の北側に競艇場があるのは昔から知っていた。知っていたけれどもギャンブルには興味はなかったし一度も行ったことはなかった。
初めての競艇場に行ってみよう。hitomiに会うために。

無印からの初めての競艇場

渡辺通りから天神北側の競艇場へは歩いていくことにした。
地下鉄で行っても結局歩くし途中のキャナルシティにも寄っていこう。
川沿いの道を北へ歩き那珂川を渡る。
キャナルまではそこまで距離がなかったのですぐ着いた。
久々のキャナルシティはだいぶ年季の入った施設になっていた。
僕が大学生の頃はまだキラキラした感じがあったのだけれど。
キャナルの中の無印に立ち寄る。
広々としたキャナルの無印。シティの空気をまとった女性がその中を歩く。
なんとなく一角に置かれている本を手に取り眺めてみる。
別に欲しくもない。買う気もない。
お目当ての二重編みの紺のスウェットだけ買って店を出た。
キャナルから競艇場までは2キロ以上あったが初めての場所に行くので足取りは軽かった。
それでも中州を越えた辺りは少しきつくて河口の先に博多ポートタワーが見えてきてもうひと踏ん張りだとやっと思えた。
工事中の須崎公園の先に福岡県立美術館が。そして、その先にボートレース福岡はあった。
残暑厳しい10月。まだまだ汗ばむ陽気だった。

初めての競艇場の空気

初めての競艇場を前に少し怖い気持ちもあった。
どんな客層なのだろう。ボートレース福岡に入っていく前を歩くおじさんたちは普通のおじさんに見えた。
入り口に今年のボートレースのシリーズ覇者が貼り出されていた。
そんなブスはいないけれどちょっと細い男が多いし競艇選手にゲイ的な引きはないなと思った。ゲイ的には男臭くて太もものぶっとい競輪選手一択だろう。
歳の近い親戚にまぁまぁ有名な競艇選手がいるけれど、稼いでるのはすごいとは思うけど会いたいとは思わないもんなぁ。
その横、イベント案内の看板が。
hitomiがいる!hitomiのライブが見れる!!
福岡競艇70周年ということでかなり気合の入ったゲストって感じなのだろう。
てか、このhitomiのミニライブを目当てに来ている人が僕以外にどれぐらいいるのだろう??
とか思いながらとりあえず入場をする。
入場料は100円らしい。安いな、競艇。
テーマパークに入るガッチャンっていうやつを通り中へ。
中は割とイメージ通りの競艇場の空気。
シティの綺麗な女性が多かった無印からの落差がすごい。
あまり綺麗ではないおじさんとおばさんで溢れていた。うんうん、イメージ通り。
必死で予想してみんな何やら書き込んでいる。
せっかくだから1レースぐらいやってみようかと思ったが、舟券の書き方すらわからなかったので辞めた。一応、壁に貼ってある書き方を丁寧に読んでみたが、素人には全く分からなくて面倒くさそうすぎて無理だった。
へー結構広いんだーとか思いながら、中を歩く。
天井近くに設置された大画面で建物の中でもレースが見れるようだ。
建物の中から外に目をやると開放的なレース場が。
この解放感いいな。芝生にはちょっとした屋台も出ていて子供向けに食べ物とちょっとしたおもちゃも売っているようだった。
こんなところに子供連れてくるなよと思ったが、家族連れも実際ちょこちょこいてこうやって施設側が呼び込んでいるならいいのかなと思った。
陽の光の下だしパチンコに連れまわすよりはよっぽど健康的だろう。
外に出て少し実際のレースを見てみる。
やっぱり生は迫力あるし船、水辺というのはやっぱり人を惹きつけるなと思った。

ドキドキ!hitomiを待つ時間

あぶない、あぶない。今日の目的を忘れていた。
hitomiのライブは室内の大画面の下のステージで行われるとの放送が。
まだ時間はあったが、できるだけ前で見たいし早めに大画面のモニタの下で立って待っていた。
すでに濃いファン?の男性数人が最前列にいた。
僕はその1、2列後ろぐらい。個人的にはちょうどいい位置にいけた。
この位置だって全然近いしいいわ。
しばらく待っているとだんだんと他のお客さんも集まってきた。
こってりしたおじさんはもちろん僕より少し上のお姉さん方も結構いたな。
若い青年とそのお母さんって感じの人や僕と同世代ぐらいの夫婦もいたかな。
しばらく待っているとこのレースの後でhitomiのライブだというタイミングでレースで負けた関西人のおっさんが選手の名前を叫びながらこいつほんまいてまうぞコラ!!!みたいなことを大きな声で言い出した。
人も集まっていたので周りの人ザワザワ&ドン引き。
関西からわざわざ来たのかな。熱心なファンというのは何とも。
周りの空気を感じ取ったのか。ヤカラみたいなおっさんはその後はおとなしかった。
いよいよhitomiのライブ。ずっとテレビで見てきたhitomiが目の前に現れる。そう思うとドキドキがとまらなかった。

想像以上のhitomiのステージ

ステージの時間になるとさすがに人がかなり集まっていた。
司会のお姉さんが出しゃばることなく早々にhitomiを紹介した。
いきなりステージの扉が開きCANDY GIRLのアガるイントロととも
hitomiが颯爽と現れた。
僕の目の前にあのhitomiがいる。もうすでにちょっと感動した。
現れたこの日のhitomiは上下綺麗な黄色でまとめた少しふんわりしたスタイル。アラジンが履いてるようなふわっとしたパンツで上もそんな感じだが、絞っているところは絞っていてhitomiのスタイルの良さもわかる。プラス少し落ち着きも感じる大人の衣装という感じでもう100点だった。
さすがhitomiだと思った。本人がやってんのか周りがやってんのか知らないが、2000年代のおしゃれ番長は伊達じゃない。
思った以上に変わっていないビジュアルにも驚いたが、歌も思った以上に歌えていた。本当に昔を思い出せる歌声というのかな。
生のhitomiのパワーだったのか、劣化という二文字は本当に浮かばなかった。
またTKサウンドのCANDY GIRLが最高すぎて。
hitomiには本当に良曲が提供されていたけど、hitomiの歌詞も最高で。
「私は世界中でたった一人前向きだよ!!」とアグレッシブさを前面に出したかと思えば「もっと楽に生きていきたい」と落ちサビ的に本音が出るところとか改めて最高だと思った。
手拍子を煽ったりもしながら地方の営業をこなすhitomiは予想以上に全力でなんかもっとやる気ない感じかと思ったら全然そんなことなかった。
普段全くこういうイベントでは無表情で棒立ちの僕も笑顔で手拍子をしちゃったもの。
CANDY GIRLの後、少し司会のお姉さんとレースのこととか少しやり取りがあった後、なんと代名詞とも言えるLOVE2000も歌ってくれた。
さすがにかつて紅白でも歌われたこの曲はさらに見ている僕らを心の底からアガらせてくれた。
曲の途中でこの日のレースのこともちょっとセリフ的に織り込みながらこの曲も全力でhitomiはやってくれた。それは本当に見ている側にも伝わっていた。
ステージ前に司会のお姉さんから写真はご遠慮くださいという注意があったのでそういうのはちゃんと守っていた。
でも、本当は写真に残したかった。
ステージの上で輝いているhitomiももちろん残したかったが、それを見ている同世代かチョット下ぐらいの周りのお姉さん方の目が本当に輝いていてそれがすばらしかったから。
憧れというのか正直なプラスのエナジーというのか。とにかくいい空気が流れていてその瞬間は切り取りたいとは思った。
2曲歌ってしっかり盛り上げるとhitomiは颯爽とステージの裏に帰っていった。それはまるで最近のバラエティーで有名歌手が少し出てきて歌うコーナーみたいでちょっと面白かった。
えーもう終わりー?と言っている人がいたが、割と僕は満足できた。
短いといえば短いステージだったが、代表曲2曲をこの短時間に聞けたのだから。

タイパ・コスパ最高?競艇場の営業

この日のステージはレースの合間に3回ぐらいあったようで次の回も見たかったが帰りの高速バスの時間が迫っていたので泣く泣く帰ることにした。
次のステージはSAMURAI DRIVEあたりを歌ったのかなぁ。見たかったなぁ。
それにしても入場料100円でhitomiの代表曲2曲を楽しめるってこれはタイパもコスパも良すぎやしないだろうか。
これは観客側はもちろんタレント側にも言えることかもしれない。
1回10分ちょいぐらいのステージ×3+メインレースの表彰がこの日のhitomiのお仕事だったようだ。
最後の表彰の後にもステージがあったのかもしれない。
それでもずっとだらだら出ずっぱりの営業よりもこっちの方がしっかり合間に休めるしいいだろうと思う。
WIN-WINという言葉はあまり好きではないが、こういうところがタレント側の地方の営業の人気の高さに繋がっているのかもしれない。

小室ファミリーの異端児

正直そこまでhitomiだけを追っかけていたわけではなかった。
小室ファミリーでは朋ちゃんが一番好きだったし。
けれど、気づけばずっと見てきた歌手だった。
作詞を任されていたhitomiはかなり立ち位置が他のファミリーとは違っていた小室ファミリーの異端児。
90年代の小室ファミリーでの活躍が第一期の黄金期とすれば00年代には安室奈美恵よりも早く脱・小室を果たし第二期黄金期を迎えた。
「WE ARE "LONELY GIRL"」では誰よりも早くギャルの孤独を歌っていたhitomi。「君のとなり」では自身のインナーガールを見つめていたhitomi。いろんなhitomiがいたが、派手な見た目の割には割と内省的な歌詞が多い印象でこの人はどういう生い立ちだったのだろうとちょっと考えてしまう感じだった。
そんなhitomiの曲で一番好きだったのは、小室プロデュース最後の作品であった「PRETTY EYES」。
"ヒトミ"にフィーチャーした作品でありセルフタイトル的な曲とも言える。

hitomiの乾いたボーカルが曲の雰囲気によくあっていてミュージックビデオ同様にドライで心地いい。
荒野を一人歩くhitomiがとにかく印象的でミュージックビデオも大好きで何度も見ている。
リリースは1997年10月ということもあってなんとなく10月になると聴きたくなる一曲である。
もう1年も経つという事実に驚くが、あの日のキラキラがまだ胸に強くあるのは僕もあの日見たお姉さん方と同様に僕もhitomiからキラキラしたものを受け取っていたからだろう。
そして、内省的な人間でも堂々と歩いて行けるということに憧れていたからだと思う。荒野を一人歩くhitomiのように。


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