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〈月影の恋〉

西行法師(86番) 『千載集』恋・926
嘆けとて 月やはものを 思はする
かこち顔なる わが涙かな

三羽さまの企画、百人百色に参加させていただきます。宜しくお願いいたします。

⚪︎現代語訳
「嘆け」と言って、月が私を物思いにふけらせようとするのだろうか?いや、そうではない。(恋の悩みだというのに)月のせいだとばかりに流れる私の涙なのだよ。

⚪︎作者
西行法師(さいぎょうほうし。1118~1190)
西行はお坊さんでしたが、月と花を好んで歌に詠み、恋歌が多いことで知られます。
旅人の自由な心がそうさせたのか、闊達で大胆な歌が多く、現代でも通じるようなさっぱりとした心が感じられます。
数々の歌を詠み、漂泊の歌人として知られます。京都・嵯峨のあたりに庵をかまえ西行と号しました。出家後は、陸奥(東北地方)や四国・中国などを旅して数々の歌を詠み、漂泊の歌人として知られます。歌集に「山家集」があり、また彼の一生は「西行物語」に詳しく語られています。

⚪︎解説
この歌は「月前の恋」という題を与えられて詠んだ題詠です。
月を見ると、自然に涙が流れてくる。恋の悩みなのに月が嘆けと言っているようだ。そんな月のせいにして、うらめしげに流れる我が涙だなあ、というほどの意味でしょうか。
昔から、月は物思いにふけらせ、悲しみにくれさせてしまう何かがあるようです。日本ではお月見という行事がある一方で、時には青く輝き、怪しい雰囲気をかもし出す月。放浪を続けた西行は、そんな月を愛して月の歌を多く詠みました。鳥羽天皇の北面の武士(天皇を護る近衛兵)というエリート職を捨て、俗世を捨てた自分。それと日の光を見ることなく、いつも暗い夜空に輝いている月に相通じるものを感じたのかもしれません。


創作物語/月影の恋(2,023字)


あなたからの手紙を読みました。

涙が溢れそうになったと言う言葉では
あまりにも軽薄過ぎて
言葉に出来ません。

鋭い眼差しの中に潜んでいる
温かさを感じて
私の中は衝動を抑えるのに必死でした。

現実と夢のバランスが難しく
夢が大きすぎると現実は崩れてしまうし
またその逆もしかり
現実が大きすぎると夢を見失ってしまいます

どこからか聞こえる小鳥のさえずりが
一瞬わたしを癒してくれたように

1通のお手紙が私の心をそっと支えてくれました。
本当はいますぐにでも
窓から抜け出すことが可能ならば
ずっと遠くへ行ってみたい

私にそんな選択肢を与えてもらえるならば
雪のしんしんと降る街に
あなたの側で、白い雪を眺めていたい。

青い空に天の川の星がかかるとき
きっと願いは叶うでしょう。
そう誰かが呟きました。
さっきの小鳥の囀りかな

そっと背中を押してくれた優しさは忘れません。

あなたに会いたい。

私は遠く空に浮かぶ月を眺めながら
こんなにも言葉に出来ない言葉たちを
綴りながら、あなたへ懺悔します。

苦しむなら一緒が良かった。
喜びも悲しみもすべて一緒に受け入れて
旅に出たかった。

本当は街中で見つけたお茶屋さんに
そっと赴くままに入り
架非すすりながら
苦く不味い味を舌で味わいながら
熱いねなんて言ってみたかった

咄嗟にいいと感じたものに
熱く情熱を捧げられるあなたが愛おしい
影ではなく、はっきりと分かる
姿を触ってはどうしようもなくなる

そっと海の底へ沈めました

私は今いる場所から離れられない
離れたらいけない
ここで意義を果たすことが
私の責務です

冷たいねって言い合いながら触れる指先をながめて
あなたにも大切な家族がいるのだと
悟りました。

本当のわたしが分からないと言った私を
あなたはそっと頭を撫でながら
頬に口を寄せました。

あなたはきっと衝動的な欲に抗いながら生きている

夜空を見上げると許された気持ちになるの

まるで私が消えたように
見えなくなることが
月の唯一の存在意義であったように

お日様のような太陽がいまは眩しくて
惚れ惚れとしながら
私は片目をつぶってカーテンをそっとひらき
遠くの空を見つめてた

ほらね、また夜が近づくね。
お星様沢山見えるかな
見えるといいね。

澄んだ山々に流れる川を想いながら
そっと歌を歌わせてください。

言葉ではうまく伝えられない。
伝わらない
音楽がきっとあなたの元へ私の心を届けてくれる、

月が遠くで微笑んだとき
私はそっと涙していました。

これからもそうこの景色を見る度に
あなたのことをそっと愛してしまうのでしょう。





おわり.



最後にもう一度百人一首を覚えましょう?笑

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嘆けとて 月やはものを 思はする
かこち顔なる わが涙かな
57577
歌人・西行法師
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◇百人一首で百人百色、企画者 三羽鳥さま
予約可能です。
人気の句は埋まりつつあるので、
お早めにコメント欄へ予約されるのがおすすめです♡
日本の伝統文化や、平安時代の歌を知るきっかけを学ばせていただきました。
このような貴重な学習の機会をいただき、心より感謝申し上げます。


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