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〈紅一点の魔物〉

※フィクション小説になります。

あるところに1人の少女がいました。
まだまだ幼くあどけなさのある少女

しかし見た目とは裏腹に彼女の育った家庭は複雑でした。
少女は毎朝鏡で顔を見ては
その鏡台にうつる女(ひと)の顔をみつめ不思議な感覚になりました。

ある日、部活動に勤しんでいた少女は
汗が気になり出しました。
スポーツなどで汗をかくと
顔が皮脂で溢れ、タオルやハンカチで擦ってみましたが、顔のベタつきが気になります。
母親がひとつのあぶらとりがみを渡しました。
『顔の皮脂が気になる時はそれを使いなさい。』

少女はそれを大事に受け取り、
日課としてお化粧はしないけれど日焼け止め乳液を塗ることと
あぶらとり紙を鞄にそっと忍ばせること
だけは欠かさないよう母から教わりました。

あぶらとり紙に書かれたのは『よーじや』の文字
ふっと汗を書くと
まあるい鏡に女の顔が描かれた紙を取り出し
そっと頬に乗せる.

その顔は笑顔でも悲しみに満ちた顔でもない
そっとなにかを見つめるような表情.

あぶらとりがみの女性は汗をかいた少女の皮脂を毎日毎日とりつづけて
くれました.

顔に乗せると、乾ききった和紙がほんのり透明に透けて、色が黄ばむの。
わたしの汗のせいで、少しだけ紙が透ける。
眺めていると不思議な気持ちになる。
まるでなにか吸い取られたような気持ち。
同時にあぶらで透けた箇所が多いと、自分から出た皮脂の多さに恥ずかしくなる。

ただ、透けたあぶらとり紙に変わってさっぱりとさらさらさを取り戻す顔に
これがとても快感に感じた少女は、
部活動がある日は必ず通学バッグのポケットにあぶらとり紙をしのばせました。
'これがないと不安で仕方ないんだよね。'

少女は毎日通学バッグにあぶらとり紙を欠かさずしのばせました。

ある日、部活動に明け暮れた日
少女にある男子部員が寄ってきて口を効きました。
'なにか持ってない?''なにかってなに'
'スポドリとかさ、冷やしたタオルとかさ'
'どうして私に聞くの?'
'いや◯◯さんだったらなんか持ってそうだなって'

少女はスポーツドリンクはすでに飲み干しており
タオルハンカチは自分の汗で濡れていたため
唯一差し出せたのが、いつも鞄に入れていたあぶらとりがみでした。

男子部員は、'なにこれ'
少女は言う'あぶらとり紙だよ'
'よく分かんないけど、サンキュ'と言いながら乱雑に受け取りました。

そっと学生バッグのポケットに忍ばせたあぶらとり紙の顔は心なしか
赤く染まっていました。


部活動に明け暮れる日、
また男子部員が数人寄ってきました。
ラグビー部の彼たちは身体の堅いもよく、
少し威圧感があり、少女はなにか言い負かされそうな
予感がして、とっさに'なに?'と強めの口調で言いました。

【なんだか言い負かされて
不利な状況になりそうなことを面倒に感じました。】

'この間のあれちょうだいよ'と少年は言う
'どうして?今日は顔に汗かいてなさそうだよ'
少女は少年たちに伝えました。
'あの紙の香り、なんだかいい匂いだったから''くれよ'
少女は戸惑いながら
バッグの中からあぶらとり紙を出し、
また1枚とまた1枚とその紙を破って渡すことにしました。

男子部員たちは受け取るとすぐに
立ち去っていきました。
少女はぽつんと残された気持ちになり
寂しくなりました。
'受け取ったらすぐにどっかにいくじゃん'

ただ、'あぶらとり紙'の女の顔を見つめると
また少し艶っぽく、濡れた表情へと変化していました。
'◯◯ちゃーん、一緒に帰ろ'
少女はそう言って帰路につきました。


部活動で励む学生の鞄の中は
男女に差はあまりありなく、お弁当水筒筆記用具、タオルに教科書くらい。

また少女の鞄もお弁当に水筒、筆記用具に大きめのタオルハンカチ、
そして携帯電話に電子辞書のみ。
香水やネイルオイルを持ち運ぶ
20代や30代の女性たちの鞄の中と比べると
それはあまりにも色がなく無秩序なものでした。

そう、雑多な鞄の中にそっと微笑んだ鏡に映る女の顔は
まさに鞄の中の紅一点そのものでした。

よーじやのあぶらとり紙の女性

女性の身だしなみに欠かせない象徴の手鏡に、美しい京女性が映り込む印象的な顔の女性は、
また誰かの女性の脂を吸って、
そっと微笑みます。お仕事お仕事、わたしのお仕事よ。

そして今日も、少女はその鏡にうつる女性の表情を不思議に思いながら
母が毎月欠かさずくれる「よーじや」のあぶらとり紙を大事に使い続けました。
とさ。



おわり.

※フィクションです。



山根あきらさんの#青ブラ文学部『紅一点の魔物』のお題に沿って書きました。
参加希望です。
あきらさん、お世話になります。
よろしくお願いいたします。


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#山根あきらさん
#🩵🖤
#少女の鞄の中身
#フィクション
#短編小説


よーじやのあぶらとり紙は箔打機で何度も繰り返したた繊維で極限まで繊維密度を上げることがで紙製法によって作られた紙です。和紙はこの製法により、一瞬で皮脂のみを吸い取ることのできる優れた吸収力に仕上がりました。
滑らか紙の質感は、敏感な女性の肌にも優しくとても薄く繊細につくられています。
肌あたりもなめらかになります。

よーじや公式HPより




〈AIの解釈〉

  1. 手鏡の持つ美しいロゴマークが魅力的な女性の印象を与える

  2. 京女性の美しさが手鏡に映り込む

  3. 誰かの女性の脂を吸う女性の微笑み

  4. 手鏡の女性が彼女のお仕事の象徴となる

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