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新時代の自衛隊:防衛省大改編

 8月30日、防衛省は令和7年度概算要求を発表した。この概算要求は過去最大の8兆5389億円となった。
数字だけ見ると無駄使いなどと批判する人が必ず現れると思う。
しかし、概算要求の概要を見てみると装備品の調達や研究開発以外にも自衛官の処遇改善や女性自衛官に配慮した基盤整備も概要に含まれている。
 そこで、今回は個人的に令和7年度概算要求の概要で注目すべきところを紹介してみたいと思う。

予備装備品の維持

これは、退役した74式戦車を約30両と90式戦車数両、
多連装ロケット自走発射機(MLRS)を保管する計画になっている。
ロシアとウクライナの戦争では消耗戦になり、両軍ともに多くの戦車を損失しているがロシア軍は保管していた旧式の戦車などを引き出すことができたおかげで戦争を続行できた面もある。そしてアメリカやドイツ、イギリス、イスラエルなど様々な国でも予備装備品の保管を行っている。
このように予備装備品の維持をすることで継戦能力の保有につながる。
またこれは、個人的な見解になるが74式戦車などで保管のノウハウを蓄積することで今後退役することになるであろう10式戦車をより多く保管でき、大きな抑止力になると思う。

74式戦車

スタンド・オフ防衛能力

この計画では国産だと12式地対艦誘導弾能力向上型の艦発型と地発型
潜水艦発射型誘導弾の取得、島嶼防衛用高速滑空弾の取得と極超音速誘導弾の製造態勢の拡充等となっている。外国製ではF-35Aに搭載するJSM、F-15能力向上機に搭載するJASSMそしてトマホーク発射機能の艦艇付加も計画されている。
また目標情報収集等に関する取組で衛星コンステレーションの構築がある。衛星コンステレーションは軌道上に配置された複数の人工衛星のことである。これは地球全体もしくは特定の地域を常時カバーできるため情報が途切れることなく効率的に監視することができる。
このように宇宙領域を活用し、様々なプラットフォームからスタンド・オフ・ミサイルを運用することで敵国からすれば脅威が増し従来の自衛隊とは全く異なった抑止力を発揮できることになる。

無人アセット防衛能力

無人アセット防衛能力では、滞空型UAVや艦載型UAV(小型)そして
UAV(中域用)、UAV(狭域用)小型攻撃用UAVの取得が計画されている。
UAVは現代戦でなくてはならない存在になっている。その中でも最も注目すべきは小型攻撃用UAVだ。小型のUAVはレーダーに探知されにくいため低コストで敵の高価な戦闘車両や兵士に大きなダメージを与えることができる。そのためロシア軍はウクライナ軍のUAVに苦しめられている。このようにUAVを上手く活用することで島嶼防衛においてゲームチェンジャーになる可能性があると思う。

陸海空領域における能力

ここでは陸海空自衛隊の装備品調達数などが記載されている。その中で注目すべきところは、共通戦術装輪車とF-35Bの調達だ。
 共通戦術装輪車は16式機動戦闘車をベースとした車両で今回の概算要求では24式装輪装甲車18両、24式機動120mm迫撃砲8両、
共通戦術装輪車(偵察戦闘型)6両となっている。共通戦術装輪車はベース車体をファミリー化することで部品の共通化ができるため整備性の向上や量産することでコスト削減が期待ができる。また迅速に移動できることで戦術的優位性や生存性の向上などに期待ができる。そして従来の履帯式の自走120mm迫撃砲や牽引式の120mm迫撃砲と比べると格段に機動力が向上し、速やかに陣地変換ができるため敵からの攻撃を受けにくい。
 F-35BはSTOVL機能を保有するマルチロールステルス戦闘機となっている。自衛隊がF-35Bを運用することで従来の戦闘機では滑走路の長さが足りなかった離島の空港でも運用することができる。そして改修したいずも型護衛艦でも運用できるため海上での機動力が向上し、効率的に防空や攻撃任務が遂行できる。またF-35は味方のF-35や早期警戒機、防空システム、艦艇などとデータリンクができるため日米での作戦や多国籍作戦での活躍が期待できる。
F-35Bの配備先は宮崎県の新田原基地になっており台湾有事の際に先制攻撃をされる可能性のある沖縄県の那覇基地を配備先から外し、南西諸島から比較的近い宮崎県に配備することで台湾統一を目論む中国に対して大きな抑止力になるだろう。

アメリカ海兵隊F-35B
いずも型護衛艦2番艦かが

新たなるプロジェクト

ここで個人的に注目したいのが処遇面を含む職業としての魅力化だ。

 現在の日本をはじめとする先進国は少子高齢化により様々な分野で後継者不足や労働力不足に直面している。そんな中で自衛隊の人員を確保するには一般企業に負けないほどの福利厚生が必要になってくる。今回の任期制士の処遇改善では任用する際に支払う一時金を今の22万1000円から50万円に引き上げることになった。そしてほかの国の軍隊の制度なども参考に今後の給与体系全体を見直すことになった。
また、サイバー分野での教育の強化・充実はサイバー攻撃や情報戦の脅威が増している国際情勢を見ると防衛力の抜本的強化になくてはならないものとなっている。

まとめ

今回紹介したように令和7年度概算要求には処遇改善やスタンド・オフ・ミサイル、F-35Bそして無人アセット防衛能力などが含まれており、今後数年間で今までの自衛隊とは全く異なる新時代の自衛隊になるだろう。
そして2022年に発生したロシアによる軍事侵攻は現在も行われており、事前に多くの専門家は予測できなかった。これは台湾有事に巻き込まれる可能性のある日本にとって他人事ではない。そのため普段から国民一人ひとりが安全保障に興味関心を持つ必要があると思う。そもそも安全保障とは軍事分野だけでなく外交、経済、情報、技術など多岐にわたる。
この中で我々国民が一番の脅威になるのが情報だ。例えば親中派のデマ情報に騙され続ければ軍事侵攻せずとも内面から侵略されてしまう。
つまり国民一人ひとりが考えることを忘れず、情報リテラシーを持つことが大切だ。



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