ミュージカル「聲の形」の形

舞台全体について

※作品、舞台のネタバレ全開です。





聲ミュを知ったきっかけ※飛ばしてもOK

夏に見た人生初舞台のぼざろで舞台の面白さにどハマり。そこから出演者さんの情報を見てたらなんと!あの『聲の形』がミュージカル化する!と言う話を聞き付ける。
舞台ぼっちに続き、河内さんと澤田さんが出るのなら見るしかない!

速攻で5日と千穐楽のチケットを取り、その日を待った。
前回後悔してるからちゃんと千穐楽のチケットも取った。

舞台のお話

正直、元の原作を見たのも映画を見たのもかなり前だから記憶が怪しいところもあるけど、話の流れはほぼ映画通りだと思う。勿論、まんまではない。

とは言え、作品を知っているのなら周知の事実。全く明るい話ではない。
耳が聞こえないキャラいじめが起点になっているリアリティ満載なドロドロ作品。アニメや漫画を見てて「辛い……」「心が痛む」なんて感想を持った人も少なくないと思う。見進めるのを断念した人も居そう。

しかし、ミュージカルの形であるおかげか個人的には各所で差し込まれる歌唱が話の重さを和らげてくれた。後は何より後述する永束君の手腕も大きかった。
演出も『聲の形』と言ったらあの橋。そうあの橋を柵2つを使って表現していて、時折ずらして置くことで立体感を出したりと、見てて「おぉ!」ってなったり。

テーマがテーマなので見てて「楽しかった」と言うのも変な話だけど本当に楽しかったし、良かった。
前に見た時からは時間が経って、それから違う形で見ると新たな発見があったり、キャラクターの行動原理に前より深く潜り込めたりして嫌いだと思ってたキャラが少しだけ好きになったり。
知らない人は当然、作品を知っている人にこそ見てほしいと思った。

そう言う意味でも映画が話題になって、時間が経った今、見ることが出来て本当に良かった。良かったんだよ!

各キャラについて

石田将也——島太星さん。

物語序盤、西宮いじめの主犯。やーしょー
橋から飛び込むなどの度胸試しや退屈しない面白いことを好む。所謂陽キャでパリピな雰囲気……ムードの主人公。
耳が聞こえない西宮をからかい始め、補聴器を投げたりしたのが原因で先生に叱られ、その後は逆にいじめられる側になってしまう。

やーしょー視点で話が進む為、主犯であることから1番悪いのでは?と思いがちだが、その後にちゃんと反省してることや西宮のノートに「このままだとウザがられちまうぞ」「音痴なんだから歌ってるフリしとけ」と最初期は助け舟を出してたのを見るに根っこまで全部悪いとは思えなかった。
小学生故に歯止めが効かず、行くところまで行ってしまったのだろう。

そんなやーしょーを演じるのは島さん。凄く足が長い爽やかなイケメン。
声も爽やかで、割れそうな風船に触れるように優しい声色とヤンチャで強気な声色の使い分けが好き。特に前述は成長後の西宮や結絃に対して。
でも基本的に声から優しさが漏れ出てた。
歌唱力も抜群で、どうやらユニット所属で北海道出身。民謡由来の技術で培ってきたらしい。

また全然別の話だけど、北海道の民謡パワー凄くない?俺の知ってる中でそんな経歴を持ってる歌唱力ぶっ飛びマン二人ほど知ってるんですけど?

いじめられてからは愛想笑いのようなものが多くなり、ちゃんと笑ってたのは西宮とはしゃいでる時くらいだった気がする。
1番好きなシーンは「関係あると思いたい!」

終盤、泣いてる西宮を見つけた時に5日公演の時は「にひみや」みたいな感じで口が回ってないように聞こえた。けど千穐楽ではちゃんと「にしみや」と発音出来てたのが気になる。
俺の聞き間違いか、それとも……?

西宮硝子——山﨑玲奈さん

もう1人の主人公。生まれ付き耳が聞こえない。
手話なんて知らない小学校時代は筆談でのやり取りが基本になり、その所為で煩わしさを感じていた植野ややーしょーたちにいじめの標的にされる。
高校進学後はやーしょーの手助けもあり、小学生時代のメンバーたちと仲を深めるが、またもや空中分解してしまう悲劇のヒロイン。

と、ここまで聞けば可哀想だと思うかもしれない。俺も最初はそうだった。だが、そんな今までの印象はクルっとひっくり返った。
作中で西宮はどんなに悪いことをされても愛想笑いで「ごめんなさい」の一点張り。自分が悪いと言うことで済ませるのが楽だと思っているかは分からないが、そう行動してしまっている。
つまり、相手への理解を諦めており、その所為で再会後の植野に何度かキレられているし、結絃も姉に対して植野と同じ評価をしている。
いじめられる方にも原因がある。そう言うこともあると思える描写だった。

だからと言っていじめて良い訳じゃないけどな!

こうやってやーしょーが改心してたり、環境の影響とは言え西宮にも悪いところがあったりするのが作品として良いところだと思える。
勧善懲悪じゃなく、誰にも至らないことがあって考え続けなきゃいけない作品好き。

そんな西宮を演じるのは山﨑さん。ホリプロ所属で当然ながら歌が上手い。
基本は手話で会話するのを周りが翻訳する為、まともに言葉を喋るのは歌唱時や手紙読み上げの時だけ。それ以外は母音だけを発声するような感じ。
そうなるとやっぱり演技で顕著になるのは表情や仕草。
やーしょーに好きって言った後のあのジタバタが可愛かった。
1番印象的だったのは終盤、目を覚ましたやーしょーと会った時に膝を着いて泣きそうな顔で一生懸命手話をするワンシーン
やーしょーが翻訳してくれないから何を言ってるのかは分からないけど、表情とあの動きでどの感情を伝えていたのかは分かった。多分。
後は愛想笑いの表情作り。なんとも言えない笑顔をするのが上手すぎる。
千穐楽では発声時の子音が5日より主張してた気がした。

永束友宏——宮下雄也さん

高校進学後のやーしょーのビックフレンド。う○こ頭
自転車を奪われそうになっているのをやーしょーに助けられたのをきっかけにどんどん近付いていく親友。

恐らく作中屈指の聖人。色々と人間っぽい黒さを抱えている他キャラと違い、最初から最後までずっと良い奴。
仲が良くなってからは情報操作をしたり、うじうじするやーしょーの背中を押したり(にゃんにゃんカフェは自分の為)、やーしょーの為に怒ってくれたりするマジのビックフレンド。
普通に西宮とも接している辺り、本当に良い人感が溢れている。

そして何と言っても宮下さんが完璧だった。

暗いテーマに光差す道となったのが永束君である。

数々のギャグ台詞やアドリブは重苦しくなった会場の雰囲気をたった1人で掻き消し、笑いの渦を巻き起こす最強のムードメーカー
テーマがテーマなのに楽しむことも出来るし、アニメや漫画よりも重さが緩和されているのは宮下さん演じる永束君が居るからと言っても過言じゃない!これをミュージカルだからなぁ……と変に決め付けて見なかった人は絶対損してるぜ!

キレッキレのダンスとかっこいい声から戯けた声まで何から何まで好き。
何なら主役2人を飲み込んでしまいそうなくらい記憶に残ってる。

植野直花——大西桃香さん

小学校時代のやーしょーの同級生。
昔から今の今までずっとやーしょーのことが好きだったが、標的がやーしょーになってからは関係が疎遠になっていた。それでもいじめられるのを友達と見て、早く行こうと促したり心配はしていたが行動に移せなかった様子。

西宮いじめに積極的に加担した悪役……に見えるが実は最も西宮と向き合っていた人物。
しかし、良くも悪くも素直で思ったことを全部口にする性格(しかも言葉遣いが悪い)でやーしょーを助けたいと言う行動含めて空回りしたり、好転しない。もしかすると本来、悲劇のヒロインはこっちかもしれない。

再会後の行動原理は基本やーしょーに好かれたいor小学生時代のやーしょーに戻ってほしい
だからどれだけ突き放されようと遊園地には行くし、旧友と会わせたりもする。西宮とも観覧車で本音で話し合う。
だが、どれもこれも上手くいかず、西宮の性格も受け入れられない。
どこまで行っても粗暴な性格が目立ち、作中で良い印象は抱かない。けれど植野の気持ちはなんとなく分かる気がする。
もしかすると全方位に対する性格の悪さじゃなくて好きな人を色々な意味で奪われたことが許せなかったのかもしれない。
実際、手を出したのは西宮と西宮ママだけで、映画制作に必要なことは一応最後までやった。連絡先を教えただけだが。

そんな植野を演じたのは大西さん。キレッキレの暴言があっちへこっちへ飛び出す様はもうなんか一周回って清々しさを感じた。
見てた中でも声の良さが強く耳に残ってる1人。凄く格好良い植野ボイスだったし、なんだろう声の通りが良かったのかな。


西宮結絃——Wキャスト

いつもカメラを持っている西宮の妹。
男に見間違えられるくらいのショートカットでボーイッシュな見た目。その所為で永束君は男と勘違いした。本人曰く気付いてた上で、らしい。

元々姉をいじめていたやーしょーを毛嫌いしていたが、本心を知ってからは打ち解け始め、何かと厳しい母親よりも祖母ややーしょーの方を信頼しているようだった。
とある一件から死にたいと言った姉を引き止める為、自殺願望を遠ざける目的で動物の死体ばかりを撮るようになる。
姉の好意には気付いており、やーしょーとのお膳立てをする一方で、姉の性格には植野と同じ感想を抱いていた。

やーしょーと西宮の相棒的な存在であり、歌唱もあれば出番も多い。
大西さん同様に声が物凄く通っていた気がする。俺が好きなタイプの声なだけかも。

・德岡明さん

最初に見た赤チームの結絃。
徳岡さんはキャラの見た目通りのクールさと年相応の無邪気さを兼ね備えた雰囲気……ムードを出していた。
だから初期のツンツンしてた時は男勝りな様子で、打ち解けてからは無邪気で元気な結絃を見ることが出来た。

・大川永さん

千穐楽で見た青チームの結絃。
徳岡さんの2面性のある少年っぽい雰囲気とまた違い、大川さんは声が高めで、本来の少女っぽさを感じられる可愛らしい結絃に見えた。
Wキャストではどちらが良いとかはなく、寧ろ同じ演目で2度楽しめる要素になってて好き。

川井みき——河内美里さん

植野同様小学校時代のやーしょーのクラスメイト。高校も同じ。
顔が可愛く、小学も高校も心優しき学級委員長。
西宮のサポートを植野と一緒にして、合唱コンクール終わりの悪質黒板落書きも止めようとしていた永束君と並ぶ聖人……

……ではなく、実際は自分のことしか頭にない模範生のフリをした偽善者
行動原理は一般的な良い人になること。
西宮いじめの時もやーしょーたちを止める声掛けをしつつ、決して全力では止めにいかず、裏で悪口を言っていたり、傍観者に近い立場をとっていた。
自分のした間違いを認識出来ず、しかも別に大声で言わなくて良いことを大声で言い放ち、まるで一方的な口論のようにしたりとその立ち回りから映画、原作を見ている人からはとことん嫌われている。

俺も最初はそうだったが、今回の舞台を見てからはなんとなく気持ちが分かる気がした。
植野と結絃が認識していた西宮の性格上の欠点その上やり過ぎるやーしょーのいじめ
特に後者を間近で見ていればそれを邪魔したら次のターゲットにされるかもしれないと思うのは当然な気がする。
刃物を持っている人間が暴れてる時に何の策もなしに突っ込む一般人が居ないように西宮を助けた後、自分の安全が保証されないのであれば見て見ぬフリをするのも分かる。まあ暴露の立ち回りは嫌いだけども。

対処する責任があるのは学校だと思う。尤も西宮が仮に告発してもあの先生がまともに取り合ってくれたかは不明。

そんな川井を演じたのは河内さん。舞台にハマるきっかけになった作品に出演し、聲ミュを知るきっかけをくれた役者さん。
川井役と知った時、どんな風に演じてくれるのか楽しみだった。実際、顔も声も可愛い川井そのものを演じてくれて、もう嬉しい嬉しい!
橋の上での口論シーン大好き。
そしてカテコのお辞儀がなんだか麗しい。

硝子ママ——Wキャスト

娘の耳が聞こえないことを知り、離婚を切り出された哀しき母。
舞台中に1度足りとも笑顔を見せず、常に怒っているような雰囲気を醸し出す鬼のようなキャラで娘たちにも超絶厳しい。

この性格は娘2人がいじめられない強い人になってほしい。そう言った気持ちから来る厳しさであると思われる。1人でも生きられるように。
しかし、その厳しさの中に隠した優しさは結絃には伝わらず、自分たちの心配なんかしていないと思われている上、硝子にも何かと反抗される。
娘たちの前では自身の涙さえも押し殺すほどなのに祖母以外の血縁に理解されない様子は見ていて複雑な気持ちになる。

そしてお二人の演技がマジで怖い。植野もそうだけどどのキャラも物凄く感情が乗ってて迫力がとんでもなかった。

・澤田美紀さん

赤チームの硝子ママ役で、河内さん同様舞台にハマるきっかけになった作品に出演し、聲ミュを知るきっかけをくれた役者さん。
澤田さんの硝子ママは凄かった。表情は勿論、台詞の端々から漏れ出る怒り怒り怒り。心配してるシーンもあるけど怒りシーンが強過ぎて。
特に植野と喧嘩するシーンは1番記憶に残ってる。怖かったな……。

・田中愛実さん

青チームの硝子ママ。
澤田さんの怒りマシマシな演技と違って、言葉の端々から優しさを感じるような喋り方……でも、だからこそキレた時の怒り一色の声色がより一層際立ってた印象。

後は俺の見る席の関係かと思って調べたら澤田さんの身長がデカかった。
常に怖く見えた、圧があったように見えたのはその影響かも。


全員やると長くなり過ぎるのでこの辺で終わります。

あとがきっぽいもの

全員は書かなかったけど本当に楽曲も役者さんも全てが良くて、良かった。語彙力喪失するくらいには良かった。いや、この世の言語が足りてねぇんだ!そうに違いない!

舞台はナマモノ。前回の反省を活かして千穐楽も見に行って良かった。カテコの島さんの慣れない感じ可愛くて面白かったなって。

これからも機会とお金があればどんどん舞台見たいと思えた。
特にこうやって出会った人たちが出る作品は積極的に!

後は急拵え現地調達ファンレターとか間抜けなことをやったから次こそはしっかり書きたい。その為にも舞台アンテナは張り巡らせるぞー!

皆さんの活躍、期待して、応援してます!


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